ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

08/04/26 歌舞伎座千穐楽夜の部①黄金三角の「勧進帳」

2008-04-26 23:59:41 | 観劇

千穐楽夜の部のチケットをとってあったが、「勧進帳」だけでも幕見しようとしたが玉砕。この一回の観劇にかけた!席は3階東2列なので、上手側がほとんど見えないのが残念だが、その分、花道の芝居はしっかり見えるのが有難い。
【歌舞伎十八番の内 勧進帳】
今回の配役は以下の通り。
武蔵坊弁慶:仁左衛門 源義経:玉三郎
富樫左衛門:勘三郎 太刀持:鶴松
亀井六郎:友右衛門 片岡八郎:権十郎
駿河次郎:高麗蔵 常陸坊海尊:團蔵

勘三郎の富樫が鶴松の太刀持とともに登場し、名乗りを上げ始めると立派なので期待が高まる。ただし花道から登場の玉三郎の義経は凛として美しい。義経の衣裳も玉三郎版は違うと聞いたが、強力の紫の装束がこれまで見たものよりも薄手で光沢があるように思えた。
花道に義経主従が並んでの芝居だが、「いかに弁慶~」と語り出すと、仁左衛門の弁慶は膝をついて下になって聞いている。いつもの席では見えないこういうところが見えるのも嬉しい。玉三郎の立役の声の素敵さにもうっとり。
勘三郎の富樫は地方の侍の頭で熱血漢という雰囲気が漂う。そこに仁左衛門の弁慶は冷静に知恵をめぐらせている感じ。弁慶の台詞や行動は基本的に淡々としている。勧進帳の聴聞要請にも落ち着いて読み上げていくが、富樫が覗き込もうとすると気迫を爆発させて隙を与えない。そこで仁左衛門の気迫と勘三郎の気迫がぶつかる緊迫感で極まるところが素晴らしかった。
その高まりからまた抑えた調子の読み上げ場面に続き、山伏問答の場面へ。たたみかけてくる勘三郎の富樫に対して、落ち着き払ってニヤッと笑う余裕も見せながら見事な返答ぶり。仁左衛門の台詞は上ずらないので聞き取りやすく、言葉の意味もとらえやすいのであせらずに耳を傾けられる。

強力姿の義経が番卒たちに見破られて呼び止められ、四天王たちが騒ぎそうになって金剛杖で押しとどめるところの弁慶の芝居も大きい。ベテラン四天王たちの気迫をひとりで押し戻す力技。その上で弁慶は躊躇も見せずに義経を打ち据える。この主従の姿を見かねた富樫が顔を歪め、腹をくくって関を通すところの勘三郎が熱い。弁慶の辛さを慮って自分の命を捨ててもこの主従を助ける決断をした時にここまで熱い血を感じさせる富樫像を初めて見た。オーバーな泣き上げもちっともおかしくなかった。熱い富樫に落ち着いた弁慶という面白さ。

富樫たちが行ってしまったところで一転しての弁慶の脱力ぶり、義経に対する恐れいりぶりがメリハリが効いていてまたいい。玉三郎の義経は目立たぬようにジッとしていても主君オーラを放っていた。その義経が上手に動き出すと背の高い仁左衛門が身体を低く低くして飛び退って小さく小さく控える。仁左衛門弁慶の忠臣ぶりの対照が効いている。ここまで主従の絆の強さが浮かび上がる「勧進帳」は初めてだった。だからここからの「いかに弁慶~」からの場面がまたせつないのだ。

義経が兄のために戦に出てからの越し方を振り返り、行きかかるところへ富樫一行が非礼を詫びて酒をすすめにやってくる。
瓢箪の酒を注ぐ番卒をあしらいながら大杯の酒を飲み干す場面で落ち着いた中に愛嬌を見せ、長身が生きる延年の舞も目で楽しく追いかける。
その中に義経と四天王に早く行けとジェスチャー。玉三郎の義経が一心に小走りして花道を引っ込むところに哀れを感じた。
義経が背負っていた笈を自らが背負った弁慶が暇乞い。本舞台で見送る富樫たち。幕外になって富樫の決死の決断に深く感謝しての一礼。天を仰いでの一礼はいい具合に客席に広く一礼することになる角度なんだとあらためて気づく。

ツケが入っての六方は身体が止まっているうちは動きも大きく見事、見事。一歩踏み出してからは動きに重量感がなかったのは予想外。幕間にじっと考えて、仁左衛門の痩身を思い出し、そのせいかと一人納得(笑)

仁左衛門弁慶・玉三郎義経・勘三郎富樫の豪華配役をひとり勝手にゴールデントライアングルキャストと名づけて期待していたが、しっかり観ることができた幸せを噛み締めた。これは何かできちんと撮影・収録されているのだろうか?この記録が残らないのは歴史的損失ではないかと気になっているが、どうだろうか?
写真は公式サイトより今回公演のチラシ画像。
4/17昼の部幕見①「熊野(ゆや)」
4/17昼の部幕見②「刺青奇偶」


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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ナイズなネーミングに妄想入りますっ! (かずりん)
2008-04-27 17:05:19
>一歩踏み出してからは動きに重量感がなかったのは予想外。幕間にじっと考えて、仁左衛門の痩身を思い出し、そのせいかと一人納得(笑)
・・・は~・・そうなんですか・・。
26日の観劇で横に座られていた女性の方が(彼女は5回目ということでした。)
3日目ぐらいの仁左衛門弁慶最高でしたよ・・少々お疲れでてらっしゃるかな~~・・と
仰ってましたが、シロウトの私には、なんのことやら・・
あ~~素晴らしい♪素晴らしい♪・・の世界でしたが・・・。

ぴかちゅうさま!「ゴールデントライアングルキャスト」・・・
あまりにもステキなネーミングに拍手ですっ♪
あ~~私の心の中では将来やって欲しい「ゴールデントライアングルキャスト」・・・、着々と妄想中・・(笑)

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弁慶!! (みゆみゆ)
2008-04-27 21:28:42
「安宅」をお稽古中の私・・・・能とは違うけれど、私もがんばろう・・と思いました。

仁左衛門さんの富樫も拝見しているので、これもまた私の中での最高の富樫なんですが(^^;)仁左衛門さんの弁慶も素敵すぎて私の中のナンバーワン弁慶!!!(笑)
熱い熱い弁慶に涙でした(笑)
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皆様TB&コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2008-04-28 01:04:20
★かずりん様
「ゴールデントライアングルキャスト」というネーミングをほめていただきまして有難うございますm(_ _)m
かずりんさんの妄想のキャストはまずは染五郎弁慶でしょうねぇ。幸四郎パパがなかなか譲ってやらせてもらえないのでしょうから、待ち遠しいですね。あとのお二人はどなたかしら(笑)
★みゆみゆ様
主君オーラの玉三郎義経と忠臣オーラの仁左衛門弁慶のこの主従の絆を見たら、熱血漢の勘三郎富樫は自分の命を投げ打つしかないなぁという「勧進帳」でした!
今回の「勧進帳」もシネマ歌舞伎とか何かで記録していてくれているといいなと思ってます。何も記録がされないのは歴史的損失です!
富樫の仁左さまは未見です。是非そのお役も観てみたいですが、東京だと難しいでしょうかね。
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ステキでした~ (スキップ)
2008-04-28 03:58:07
ぴかちゅうさま
千穐楽の熱いレポ、ありがとうございました。
20日に観た感動がよみがえってきました。

>その義経が上手に動き出すと背の高い仁左衛門が
>身体を低く低くして飛び退って小さく小さく控える。
>仁左衛門弁慶の忠臣ぶりの対照が効いている。
ここです、ここです!
私は仁左衛門さんの弁慶に完全にヤラレちゃいましたが、
こうしてぴかちゅうさんのレポを読ませていただいて、
この人のためならばと思わせる玉三郎義経、
男気あふれる勘三郎富樫、まさに三拍子そろっての
「勧進帳」だったのだと改めて感じ入りました。
まさしく、“ゴールデントライアングル”ですね。
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★「地獄ごくらくdiary」のスキップ様 (ぴかちゅう)
2008-04-29 03:08:48
主君オーラの玉三郎義経と忠臣オーラの仁左衛門弁慶のこの主従の絆を見たら、熱血漢の勘三郎富樫は自分の命を投げ打つしかないなぁという「勧進帳」でした!
>「このトリオの『勧進帳』は、もうこれが見納めかもしれませんよ」......私もそんな気がしているので、何かで記録していて欲しいと思っています。「ふるあめりかに~」も突然シネマ歌舞伎で登場させてくれたので、今回の「勧進帳」もシネマ歌舞伎にしてくれているといいなと思うんです。何も記録がされないのは歴史的損失ですよ。
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この三人の顔合わせは… (六条亭)
2008-04-29 23:47:52
こん♪♪は。先日は失礼をいたしました。

『勧進帳』をこんなに熱い気持ちで観たのは久しぶりでした。でも、この三人の顔合わせの『勧進帳』は、仁左衛門さんが筋書で語っているようにもう見納めの可能性が高いですね。何らかの形で映像には残るでしょうが、少しでも多くの方々にご覧いただけるようシネマ歌舞伎にしてくれるといいですね。

ぴかちゅうさまの熱いレポには及びませんが、観想記事をアップしましたので、TBをうちました。
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まさにその通り! (恭穂)
2008-05-04 17:31:14
ぴかちゅうさん、こんばんは。
ゴールデントライアングルキャスト・・・まさにその通りですね!
私はこれが初「勧進帳」だったのですが、3人それぞれの魅力と存在感が拮抗する様子に、息をのんで見入ってしまいました。正直、どなたの動きも見逃したくない気持ちが強くて、でも、歌舞伎座の舞台はとても広くてそれは不可能だったので、ひそかに悔しく思っておりました。映像化されるといいですね~。
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続・皆様TB&コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2008-05-05 18:01:08
★六条亭さま
>ぴかちゅうさまの熱いレポ......いろいろとバタバタにもかかわらず、この舞台については熱いうちに打てではなく熱いうちに書こうと頑張りました(^^ゞ
本当にもう一回観たかったですが、一回でも観ることができたのはラッキーと思うことにします。
なんとか記録されていることを祈っています!
★「瓔珞の音」の恭穂さま
4月歌舞伎座千穐楽夜の部の前後にお話できて楽しかったです。
夜の部はなんといっても「勧進帳」でしたね!今回で6回目くらいの「勧進帳」でしたが、今回のものはこれまでとは別物の舞台でした。これが初「勧進帳」とは、恭穂さんは本当にラッキーでしたね。
私もGWはバタバタしていて、観劇の感想がなかなか書けませんが、「浮かれ心中」も書けたらTBさせていただきますね(^O^)/
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今さらですが・・・ (あいらぶけろちゃん)
2008-05-14 21:29:04
見逃したことが残念です~
見納めのキャストだったんですね・・・
仁左様の弁慶は、TVで部分的にしか拝見していないかも。(記憶があやふや)
富樫の印象が強いためもあるんですが。問答でのたたみかけていく調子の良さ、袖を巻き上げた形の美しさなど富樫の仁左様も ほれぼれしますよ。

今回の舞台がシネマ歌舞伎になりますように。ナムナム
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★あいらぶけろちゃん様 (ぴかちゅう)
2008-05-14 23:10:01
PCも買い直されたようで、久しぶりのコメント有難うございますm(_ _)m
>富樫の印象が強い......海老蔵の弁慶と組んだ時の舞台がよかったそうですね。是非観たいと思っているところです。
>今回の舞台がシネマ歌舞伎になりますように......これまでのシネマ歌舞伎はいずれも勘三郎・玉三郎主演のものなので、そのふたりが入った黄金三角なのでその可能性を信じたいわけです。ともに祈りましょう!
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