ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

08/04/17 歌舞伎座昼の部幕見①「熊野(ゆや)」

2008-04-24 23:59:36 | 観劇

4月歌舞伎昼の部は13日のチケットをとっていたが見ることができなくなり、ピンチヒッターでくーみんさんが観てくださった。感謝m(_ _)m
しかしながら、どうしても観たいのが「熊野(ゆや)」と「刺青奇偶(いれずみちょうはん)」。月1回のカウンセリングの予定が入っていたので、その前に頑張って幕見することにした。そうでもしないと精神の安定が保てない。
【熊野(ゆや)】(長唄舞踊)
イヤホンガイドによると、この演目も明治の能取物を玉三郎が能に近づける演出で上演するシリーズの1作だろうとのこと。
今回の配役は以下の通り。
熊野:玉三郎 平宗盛:仁左衛門
従者:錦之助 朝顔:七之助         
内容は以下の通り。
熊野(ゆや)は遠江の国の池田宿の遊女時代に平宗盛に見初められ、都で愛妾となっている。遠く離れて住む母の病が重く生きているうちにもう一度会いたいという手紙を朝顔が使者として届けにきた。熊野は母の願いをかなえるために帰国の許しを宗盛に願い出る。ところが熊野を寵愛する宗盛は、美しい熊野を手元に置いておきたい一心でこれを許さず、清水寺への花見に一同で繰り出す。熊野は観音堂で母の快癒を祈るばかり。召し出して舞を所望する宗盛の前での熊野の舞は、母への思いがあふれていた。宗盛もその思いに打たれ、自らの執着を断ち切り、ついに帰国を許す。

これはこれは美形で揃えてきたなぁという配役にまず玉三郎のこだわりを感じた。それに玉三郎の能衣裳の美しさよ。イヤホンガイドによると通常の絹糸よりも細いもので1.5倍の量を使い、織機もこの衣裳のために復元して新しく作ったもので織り上げたのだという。模様は刺繍ではなく全て織りで出しているという。双眼鏡で目を皿にしてよく見るとなるほど、刺繍のように模様が盛り上がっていないので絹の光沢がなおさらに美しい。篠山紀信に撮影してもらった写真をポスターやチラシに組み込んでいるように思うが、それくらいしてもいい衣裳だ。
着付けも変わっているように思えた。「船弁慶」の静御前と違って壺折の着付けの下の着物は裾を引きずるようにしているのが面白いと思った。

玉三郎の熊野が病気の母を思って嘆く場面は今の私にはぐっと来てしまった。仁左衛門の宗盛は、熊野の母への思いを受けとめないで自分の気持ちを優先させてしまう我侭な嫌な男だと思わせない貴公子ぶり。熊野も自分を引きとめる宗盛の気持ちがわかるので強くは言えないという相思相愛ぶりにあてられる(^^ゞ

御前で舞う熊野だが、満開の桜が散る中で母への思いが募り、一首の歌をしたためる。「いかにせん都の春も惜しけれど、馴れし東の花や散るらん」
その短冊を読んだ仁左衛門の宗盛が、とてもつらそうに苦汁の決断をして熊野に帰国を許すその表情を見ていたら、思わず落涙(このお役のお顔は13代目さんを彷彿としてしまってDNAを痛感。ただ、夜の部の弁慶で喉を酷使するせいか、宗盛役の高い音遣いが少し苦しそうだったのがちょっと残念ではあった)。
宗盛の気が変わらぬうちに帰国の途につき、花道で愛する宗盛を振り返る熊野。舞台中央で見送る宗盛。熊野が京に戻らぬうちに平家は凋落してしまい、これが最後の別れになったとイヤホンガイドで聞き、なんというせつない話かとまた涙腺がゆるんでしまったのだ。

舞台装置、長唄お囃子連中も素晴らしく、玉三郎ワールドを見逃さずにすんだことに感謝の気持ちでいっぱいになった。

写真は歌舞伎座幕見のチケット売り場の掲示。「熊野」は立ち見だったが「刺青奇偶」からは席を確保できたので歌舞伎そばを食べに一階までダッシュ。その時に「刺青奇偶」のところに「売切」の貼紙がされていた。歌舞伎そばも現在は休日に営業していないので実に久しぶりに食べることができた。

4/17昼の部幕見②「刺青奇偶」
4/26千穐楽夜の部①黄金三角の「勧進帳」


最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
コメントを有難うございます。 (どら猫)
2008-04-25 02:33:48
お父様のこと、心からお悔やみ申します。
エントリを拝見した時に、お悔やみを書こうかと
迷ったのですが、ご負担になってもと思い、
控えさせていただきました。
観劇にも復帰なさったとのこと、よかったです。
楽日はどら猫も拝見します。
今日の深夜バスで東京へ向かいます。
TBをさせて貰ったのですが、今回はうまく
いかなかったので、URLにエントリの分を
入れさせて貰いました。
お疲れがでていることと思いますが、
無理をなさいませんように。

返信する
Unknown (みゆみゆ)
2008-04-25 10:53:03
こんにちは
私もお父様のこと、お悔やみ申し上げます。
(すみません、遅れてしまって・・・)

さて「熊野」ですが、とてもよかったです。

熊野のお墓のあるところにGW所用で行ってきます。
お母さんのお墓が隣にあるんですよ・・・

では夜の部も楽しんできてくださいね。
返信する
熊野 (hitomi)
2008-04-25 22:06:10
ぴかちゅうさん、お心がやすまったでしょうね。今月は良い配役に演目で惜しいことしました。でも2,3月の散財が恐ろしくて上京できませんでした。
返信する
皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2008-04-27 12:03:48
皆様、お悔やみ・励ましのお言葉も有難うございますm(_ _)m
★どら猫さま
玉三郎×仁左衛門は今が盛りかもしれないと、目を皿のようにして観てしまっています。夜の部は千穐楽で観る予定でしたが、「勧進帳」だけもう一度と幕見に行ったのですが、見事に玉砕しての帰宅。そして千穐楽の一回勝負でしっかり観ました!
★みゆみゆ様
>熊野のお墓のあるところにGW所用で行ってきます......その時のレポもお待ちしていますね。
★hitomiさま
>お心がやすまったでしょうね......ハイ(^^ゞ母からは観劇を減らして自分のところに来て欲しいと言われていますが、自分のバランスをとりながらやっていきたいと思います。
返信する
美しかった♪ (かずりん)
2008-04-27 16:51:49
こんにちは♪
すっかりご無沙汰してしまいましたが、見つけてくださって
嬉しい~~♪
さて、私も楽前に歌舞伎座、行かせていただきました♪
いや~~♪お着物も何もかもが美しかったです。
この後の「刺青奇偶」のヨレヨレ玉三郎さまのギャップが
私にはたまりませんでした♪ふり幅がたまりません♪♪
返信する
★かずりん様 (ぴかちゅう)
2008-04-29 00:27:05
昼の部の玉三郎丈は、美し~い「熊野」からスレスレヨレヨレ女の「お仲」への変身がすごかったですね。昨年10月の天女さまから「牡丹燈籠」のきったないお峰への変身もすごかったので、けっこうこういうのをねらっているのかもとか思ってしまいました。もうホント、すっかりヤラレます(^^ゞ
4月は玉三郎×仁左衛門×勘三郎の演目が昼も夜もあって、贅沢極まる舞台でした。年に一回はこの3人の組む舞台が観たいです!
返信する
TBをうちました (六条亭)
2008-05-01 23:41:19
こん♪♪は。

拙感想記事は五日初見で不完全燃焼のものですが、TBをうちました。玉三郎さんの高貴な熊野から男に騙されてばかりいる底辺の女お仲の演じ分けもすごかったですね。

玉三郎さんは、仁左衛門さんとの共演はもう今年はなさそうですが、七月が海老蔵さんとの共演ですね!
返信する
★六条亭さま (ぴかちゅう)
2008-05-04 00:28:47
昼の部の玉三郎丈は、美し~い「熊野」からスレスレヨレヨレ女の「お仲」への変身は、ホントすごかったですね。昨年10月の天女さまから「牡丹燈籠」のきったないお峰への変身もすごかったので、けっこうこういうのをねらっているのかもとか思ってしまいました。
仁左衛門丈との共演は年に何回もとは高望みしないようにしています。7月に「牡丹亭」くらい入れてくれるかと期待していたのですが、海老蔵や澤潟屋との共演ということで、少しガッカリしています。それでもちゃんと観にいきます(^O^)/

4月歌舞伎座の感想はあと「浮かれ心中」だけになりましたが、GWもバタバタでなかなか手がつけられません。原作まで読んでの観劇でしたから、頑張って書きますね(^O^)/
返信する

コメントを投稿