ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

09/08/15 納涼歌舞伎第二部①福助の「豊志賀の死」

2009-09-09 23:57:46 | 観劇

三遊亭圓朝(円朝)原作の「真景累ヶ淵」は、菊之助主演の映画「怪談」(中田秀夫監督)をしっかり観に行った。
その後、亡くなった父の書棚から中公文庫の『圓生人情噺』(上・中・下の3巻、絶版)を持ってきて全部読んだ中にあった。
しっかり予習をして、手ぐすねをひいて今回の舞台を観たのだが・・・・・・。

【真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち) 豊志賀の死】
公式サイトよりあらすじと主な配役を引用の上で修正加筆。
富本節の師匠豊志賀(福助)は、歳の離れた弟子の新吉(勘太郎)と深い仲になりましたが、顔に腫れ物が出来る病にかかってしまう。豊志賀は新吉と若い娘お久(梅枝)の仲を勘ぐって嫉妬に狂い、病は重くなるばかり。新吉はそんな豊志賀を看病している。
ある日、豊志賀を寝つかせた新吉がふと外に出ると、お久が通りかかるので二人は連れ立って下谷の寿司屋へ出かける。看病に疲れた新吉と、継母から逃れたいお久は共に逃げようと決意する。しかしその時、豊志賀の声が聞こえ、新吉はお久を残して池之端に住む伯父の勘蔵(彌十郎)の家へと逃げ込む。新吉は勘蔵に諭されて師匠の家に戻ることを誓う。勘蔵は先に来ていたという豊志賀が家の奥に通してあるから引き合わされる。そこへ同じ長屋に住む噺家のさん蝶(勘三郎)が新吉がいないかとたずねて来て、師匠の死を告げる。
するとそこにいる豊志賀は幽霊なのか?!奥の部屋から師匠のために呼ばれた駕籠に瞬時に移動したように見える幕切れ・・・・・・。

写真は歌舞伎座ロビーにあった納涼歌舞伎の「真景累ヶ淵」の特別ポスターを携帯で撮影したもの。福助の豊志賀はスチール写真で2002年8月の勘太郎の舞台写真の組合せたのではないかと推測。この写真のような顔で登場するのならばよかったのだが、今回は枕屏風をはずして病床から起き上がって登場する時から「四谷怪談」のお岩で使ったような特殊メイクのラバーをつけているから違和感がある。父を殺した男の息子と契ったから父の怨念で腫れ物ができてきているのだろうが、猛毒で崩れた設定のお岩と同様に目玉の位置までずれるようなメイクはやり過ぎだと思う。この登場からザァーっと冷めてしまった。

勘太郎の新吉は真面目な若者そうだし、生活の面倒も見てもらっている師匠に一生懸命尽くしているのに精神的に追い詰められている切迫感があって実にいい。
その新吉に「新さん、新さん」と福助の豊志賀が鼻にかけたベターっとした声で呼ぶのはいかがなものか。第一部の小野小町、第二部の「船弁慶」の義経、第三部の絵師の妻の役と真面目な役をきっちりとつとめるその反動がこの豊志賀に出てしまっているのだろう。思いっきりはじけきってバランスをとっているのだと思うが、少々悪ノリが過ぎるように思える。
身持ちが固かった女が四十近くなって初めての男に執心する姿は、もう少し抑え目にしながらたまに妄執の激しさが覗くというくらいというのが私のイメージなのだ。ちょっと付き合いきれないなぁという感じがする。

梅枝のお久も継母のいじめに耐える商家の娘といういじらしさが滲んでいる。そのいじらしい様子、若くて頼りない様子に新吉がほだされて惚れるのではないかと豊志賀が思ってしまうのも無理がない。
彌十郎の勘蔵は実は新吉の生家の旗本の家臣で両親が相次いで亡くなった新吉を甥と言って育てたのだと打ち明けるが、実直な人物ぶりが実にいい。
勘三郎のさん蝶は前回演じた故源左衛門(当時は助五郎)の供養とのこと。歌舞伎座さよなら公演での供養なら故人にしっかり通じるだろう。

豊志賀の死に方は映画ではどうだったかもう記憶が薄れてはっきりしない。今回は嫉妬による悶死で血を吐いて絶命したが、こういう弱り方ではこの死に方は不自然。落語の方では新吉を怨んでとり殺そうと決意をこめて自分で喉を切って死んでいる。やはりそういう方が恐い。まぁ、舞台化ということで演出上の限界かなと自分を納得させる。
リピートして観たい演目ではないと思った。

8/15お盆に納涼歌舞伎一部・二部を続けて観劇の簡単報告はこちら
8/15第一部①「天保遊侠録」は意外な収穫
8/15第一部②三津五郎の「六歌仙容彩」の5歌人


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2 コメント

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円朝の味 (さちぎく)
2009-09-10 11:29:14
前に全生庵での「すずめ二人会」で聞いた正雀・芝雀の「豊志賀の死」のほうがずっと良かったですね。芝雀さん一人何役も演じわけて、哀れも怖さも勝っていました。円朝の世界をちゃんと表現していました。
円朝の豊志賀ではなく、福助の豊志賀です。
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★さちぎく様 (ぴかちゅう)
2009-09-10 23:37:33
次の年の全生庵での「すずめ二人会」で「牡丹灯篭」でご一緒しましたね。さちぎくさんが「豊志賀の死」がどんな風によかったか、しっかりと聞かせていただいたためにその気になってしまったのです。
落語家さんの芝居噺に役者がコラボするというのは実に面白かったです。
円朝の口演を文字にした方の本も読んでみたいと思っています。
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