ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

13/05/27 歌舞伎座新開場五月公演第三部「石切梶原」明るい吉右衛門に感涙

2013-06-06 23:59:21 | 観劇

これまで吉右衛門のインタビュー番組はあまり好きではなかった。ネクラな性格なのをみせつけられる感じだったからだ。謙遜を通り越してあまりにも自分を卑下しすぎる話し方にげんなりした。播磨屋の名をしょっているのだからもう少し堂々としていていいんじゃないかと思った。いいや、初代吉右衛門が大きな存在であり過ぎて自分がそれに及びもしないと思う意識が強すぎるのかなぁとも思えた。秀山祭の座頭をつとめ始め後進の育成に力が入りだしても、その暗さは続いていた。(自伝的エッセイ集『半ズボンをはいた播磨屋』を読むとその性格がどのように形成されたかがよくわかる)

しかしながら、3月の娘の瓔子さんと菊之助の婚約記者会見に「花嫁の父です」と出てきて、そこでも自分は暗いと言っていたが、そのあたりから一変!4月の舞台でも5月の舞台でも堂々の押し出しぶりに、いまの歌舞伎界をしょって立つ気概があふれていた。

さて、「石切梶原」の吉右衛門は?!
<第三部>
【梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり) 鶴ヶ岡八幡社頭の場】
梶原平三景時=吉右衛門 大庭三郎景親=菊五郎
六郎太夫=歌六 梢=芝雀
俣野五郎景久=又五郎 奴萬平=錦之助
山口十郎=歌昇 川島八平=種之助
岡崎将監=米吉 森村兵衛=隼人
剣菱呑助=彌十郎

以下、あらすじとみどころを「歌舞伎美人」の公演情報より引用。
梶原平三景時は、大庭景親と俣野景久の兄弟が居並ぶ鶴ヶ岡八幡宮の社頭に参詣します。そこへ、青貝師の六郎太夫と娘の梢が重宝の刀を売りにやって来ます。大庭に刀の目利きを頼まれた梶原は、名刀であると鑑定しますが、これに納得できない俣野の意見で二人の人間を重ねて斬る「二つ胴」で斬れ味を試すことにします。あいにく斬られる囚人はただ一人で、娘のために、刀を売って金の工面をしたい六郎太夫は、口実を作って梢を家に帰らせると、その役を自ら買って出ます。試し斬りを請け負った梶原は、一気に刀を振り下ろしますが、真っ二つになったのは囚人だけで...。名刀の奇瑞を描いた、義太夫狂言の名作をお楽しみください。

大体、刀の斬れ味を試すために囚人を斬るという話自体が現代の感覚では理解できない。そういうこともあって、いまひとつこの演目には入れ込めず、このブログでも記事アップしたことがなかった。しかしながらこの間、氏家幹人著『大江戸死体考―人斬り浅右衛門の時代』(平凡社新書)などを読んでいたので、当時の社会状況がよくわかったので、物語の展開にはついていけるようになっていた。

梶原を吉右衛門でも仁左衛門でも見ていたが、今一つ世界に入っていけなかったのだが、今回は違った。竹本の葵太夫の語りが聞き取りやすくて物語の世界にすっと入っていけたこと。そして何よりも吉右衛門がこれまでと違ったのだ。
この話の「肝」は名刀にあるというのがよくわかった。六郎太夫が買ってほしいと持ってきて目利きを頼まれた梶原の作法通りの「目利き」の芝居が実によかった。こんな名刀には出会ったことがないという目利きの眼力のある男の昂揚感が実によくわかるのだ。見れば見るほど心が踊ってくる様子が吉右衛門から伝わってきて驚いてしまった。3月の娘の結婚で吉右衛門の心がどうやらひと皮むけたように明るさを加えたことがここまで芸に反映しているのかと嬉しくなってしまった。

この名刀を何か事情があって売りたい、それも父が命をかけてまで娘に金を残してやりたい事情をくんでやる梶原は、その事情を話したがらない六郎太夫が敵方の源氏の所縁の者であることを見破った。そして周囲に誰もいないことを確かめた上で、源頼朝を助けた自分の本心を明かすのだ。
それでも同情心から刀を買いとられるのを嫌がる六郎太夫の誇りに感じ入り、八幡社頭の石の手水鉢を真っ二つにしてみせる。
まさに名刀をめぐっての物語、その名刀ぶりに心を動かされた梶原の物語なのだということがよくわかって実に楽しめた。

さらに、私は吉右衛門が自分の芸を初代に及ばないとぐるぐると自分の中で精進だけ重ねていた時代を打ち破り、その屈託まで娘の慶事が吹き飛ばし、まさに新開場の歌舞伎座で二代目吉右衛門の芸が花開き、その円熟期に立ち会えた気がして、目頭が熱くなったのだった。
最近、更年期のせいなのか、嬉しくては泣き、哀しくなっては泣き、「奥州安達原」で袖萩が目を泣きつぶしたというのがなんとなくわかるような目になってしまっている。伝統芸能の表現が実に人間をよく描いていることを身を持って体験できていて、人生の面白さにもあらためて気がついている。

5/19歌舞伎座新開場杮葺落五月大歌舞伎第一部「三人吉三」菊五郎のお嬢吉三の至芸
5/19歌舞伎座新開場杮葺落五月大歌舞伎第二部「伽羅先代萩」「廓文章」

冒頭は、地下の木挽町広場の「はなみち」で1個ずつGETした歌舞伎座のデザインの紙コップ。3回にして全てのデザインが揃った。こちらはデイリーヤマザキ等の系列のお店らしい。ヤマザキのランチパックの歌舞伎座厨房監修仕様も4月は売り切れていて買えなかったが、5月は第一部の幕間にしっかりGETして食べることができた。粒あんとホイップクリームに求肥の入ってなかなか美味!2個買って娘のお土産にしたら美味しかったと誉められた。


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