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かぐや姫の物語 ★★★★

2013年11月27日 | か行の映画
数々の傑作を生み出してきたスタジオジブリの巨匠、高畑勲監督が手掛けた劇場アニメ。日本で最も古い物語といわれる「竹取物語」を題材に、かぐや姫はどうして地球に生まれやがて月へ帰っていったのか、知られざるかぐや姫の心情と謎めいた運命の物語を水彩画のようなタッチで描く。声優陣には、ヒロインかぐや姫にテレビドラマ「とめはねっ! 鈴里高校書道部」などの朝倉あき、その幼なじみを高良健吾が務めるほか、地井武男、宮本信子など多彩な面々がそろう。
あらすじ:今は昔、竹取の翁が見つけた光り輝く竹の中からかわいらしい女の子が現れ、翁は媼と共に大切に育てることに。女の子は瞬く間に美しい娘に成長しかぐや姫と名付けられ、うわさを聞き付けた男たちが求婚してくるようになる。彼らに無理難題を突き付け次々と振ったかぐや姫は、やがて月を見ては物思いにふけるようになり……。
<感想>日本人の誰もが知る「竹取物語」しかし、かぐや姫がなぜ地球に来て、なぜ月に帰ることになったのか、その理由は知られていない。その謎を解き明かしたのが、78歳の巨匠・高畑勲監督の14年ぶりとなる新作アニメ。製作期間が8年、総制作費50億円を要したが、その期待に十分答える渾身の大作に仕上がっている。
予告編で見た“姫の犯した罪と罰”十二単を脱ぎ捨ててひたすら走るかぐや姫。今まで観たことのない、躍動感あふれる線画の衝撃。

幼い日のかぐや姫が翁たちと暮らす山での、愉快な生活は「アルプスの少女ハイジ」を彷彿とさせるなど、これまでの高畑監督作品の集大成的な映画となっているようだ。高畑監督が作りだしたかぐや姫は、生まれながら自由奔放で、自主独立の精神を体得している現代人である。
ところで、かぐや姫のキャラクターが、あまり古風ではなく、どちらかというと奔放な現代女性に近いのは何故なんだろう。つまり、この映画は平安時代の女性ではなく、平安時代のモチーフや風俗を借りて、そこに現代の女の子がポンと放りこまれたらどんな反応をするのか、といった考え方を一方では描いているようですね。
これでは極楽浄土らしい月の世界にいても、そこでの強制された快楽か何かにあきあきして、反抗したのかもしれない。そこで、彼女は地球という未開の地に島流しのように追放されたのではないか。しかし、地球の人間という、愚かで滑稽な、だが、それぞれになにか純なる愛すべき生き物たちに、何とも言えない可能性を感じたのだろう。

月から来たかぐや姫は、この地球に対して何の常識も持っていない。そんな子が山里から都に行ったときの、一瞬一瞬の反応は、現代人から見たら当たり前のもの。かぐや姫だけが自然に振る舞っている普通の人間で、その彼女を取り巻く当時の大人たちの常識が彼女をどんどん追い詰めていく構造になっていて、だから現代の人が、女性だけでなく男性も、かぐや姫の感情に寄り添って、彼女のことを思いやって見る事ができるんですよね。
それでは、何故月に帰るのか。人間よりはるかに高い文明らしい月の天女たちは、地球など一撃のもとに滅ぼす武器だって持っているのかもしれない。だから、彼女は愛した地球の人間たちのために、嫌な月へ帰るのか。月からの使者たちの長として雲の上に立つお釈迦様が。かぐや姫は、月世界の極楽浄土になかった生命の喜びを見つけたのであろう。
まず見惚れたのが、普段の見慣れた商業アニメチックな絵とは異なり、墨絵のような和風絵巻ものの世界。日本アニメの原点とも言われる鳥獣劇画を思わせている。淡く滲む水彩画の背景がスクリーンに映えて美しく、2時間の長編を透明水彩で描くという前例にないことをやってのける。何だか懐かしい気持ちにさせてくれます。
かぐや姫が一人の女性として描かれているほか、登場キャラクターは物語を動かすための駒ではなく、生きた人間としてそれぞれ描かれていて、みんな人間味が感じられます。中でも捨て丸の存在感がこの作品には欠かせないですね。翁の家の近くに住む炭焼き職人の息子。幼いころのかぐや姫と毎日のように森や川を駆け回り遊んだ楽しい思い出。
くどくどと描き込まなくても、どんどん省略していく。でも見たこともない不思議なものは克明に描かねばならないはず。都に引っ越して大きな館に住み、美貌を聞きつけた大勢の貴族に求婚され、結婚を望まない姫だったが、翁に論されて仕方なく5人の公達と対面する。

そこで彼女は、結婚の条件として入手困難な宝を要求するわけです。かぐや姫の求婚の場面で、それがたとえば、阿部の右大臣の火鼠の皮衣の場面。絹糸で織り上げてそれは見事にキラキラと輝いてました。でもその皮衣を火で燃やしてしまう姫様。驚き慌てる右大臣。大金をかけて作らせまだ代金を支払ってないというのだ。中には、ツバメの巣を取るために崖に登って命を落とす人もいる。貴公子の一人が死んだことを聞いたあと、感情に駆られて鎌で草をなぎ倒し、立ち尽くしている顔がすごくいい。
でも、一番のお気に入りはやはり竹林の中で翁が光る竹を見つけて驚いて切るところですね。竹の中から小さな可愛い十二単の人形のような子供が、翁の手の平の中で産声をあげて、赤ん坊になりすくすくと育っていくところですかね。
まるで魔法でもかけられたような、人間じゃないのに人間の赤ん坊に見えてしまう。不思議なことに、媼は高齢なのに乳が出て赤子に飲ませる。それに、育つのが速いということ。
そして、映像に台詞を当てるアフレコに対し、先に収録したセリフに合わせて映像を作るというプレスコを使用。だから人物の声、役者さんの声の実感が全面的に映像と相まってスクリーンに映えるわけですね。中でもこの映画の公開を待たずに亡くなった故・地井武男さんの翁の声が素晴らしかった。そして、物語の語り手と媼の声を演じた宮本信子の巧さに感服し、もちろんかぐや姫の朝倉あきの台詞回しもよかったし、この声優さんたちの巧さがこの作品を一段と盛り上げているのだと確信しました。
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