濃さ日記

娘もすなる日記(ブログ)といふものを父もしてみんとて・・・

水と意識

2009-11-29 11:05:14 | Weblog
去年に引き続き、教え子の中から医学部推薦合格者が出た。
しかも、昨年と今年の二人は、なんと実の姉妹である。
祖父の代からの医師の家系というから、合格についての私の指導の成果ばかりを誇るわけにはいかないが、まずはめでたいかぎりである。

本人とご両親からは丁重なお礼の言葉をいただいたが、それよりも、私としては特訓のために集めた過去問の中に、中田力「脳のなかの水分子」「脳の方程式+α」を見いだしたのがなによりもありがたかった。
筆者は新潟大学脳研究所統合脳機能研究センター長で、ファンクショナルMRI(機能的磁気共鳴画像)では世界的な権威、ノーベル賞も夢ではないという先生である。
氏は、全身麻酔薬が脳の中の水分子と水分子がくっつきやすくなって(クラスター)作用することを説いたポーリングの考え方をヒントにして、意識の形成に水が大きな役割を果たしていると推論する。そして

高電子密度層と樹状突起との間の空間、シナプス間隙にあたる部分(ELDER間隙)が比較的乾いた状態に保たれている時、その誘電率は低く、電子の移動は起こらない。何らかの理由で水の含有率が上昇すると誘電率が上がり、電子の移動が起こる。これは、シナプスからの伝達と同じように錐体細胞の樹状突起に電気信号を発生させる。言い換えれば、ELDERとは水を神経伝達物質とするシナプスなのである。

という、はっと驚かされるような説を明快に展開している。
しかし、考えてみれば、水の惑星である地球で生物が生存していくためには、空気とともに水は最も重要なものであり、人間の身体も70%程度が水分なのだから、当然といえば当然である。
ただし、水が単に生物学的な生存に必要だというわけではなく、意識という形而上的な存在を成り立たせるうえでもキーとなるものだったとは、まったく考えが及ばなかった。
「意識の流れ」というが、それは同時に「脳の中の水の流れ」でもあるということになる。

ところで、人間は外部からの刺激がなくても、自発的な脳活動をすることができる。「思考」という名の活動である。
これを脳科学では「内因性の賦活」(endogenous activation)と呼ぶそうだ。
なぜそうした賦活が可能になるかは、これまでの「ニューロン絶対主義」では解けなかったのだが、ELDER全体を包む層(LGS)に注目して、筆者は次のように述べる。

ELDERの活動は、錐体細胞を発火させる。これは学習を促す効果があると同時に、発火した錐体細胞につながるニューロン群の連鎖的な活動を惹起することができる。内因性の賦活である。LGSの機能は(中略)、内因性の賦活においては、特定の脳の部分に電気的刺激を与えてその活動を開始させる、いわば、自家発電装置の役目を果たすのである。

こう読んでくれば、吉本隆明の「自己表出」という概念も、「内因性の賦活」に深く関わってくるように思われてくるが、どうだろうか。

なお、中村桂子との対談が次のサイトで紹介されており、参考になる。

http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/55/talk_index.html

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