前回のブログでも少し取り上げたが、このたび、めでたく花婿となった甥のJ也の話をしてみることにする。
私の姪(兄の娘)のR香は、叔父の口から言うのもはばかられるが、子どもの頃から早熟で利発、おまけに美貌にも恵まれていた。
惜しむらくは、その生育環境が彼女の才能を守ることをしなかったことで、両親の離婚という事情も手伝って、感受性の赴くまま、奔放な生活に浸り、すでに十代にして男性と同棲生活を始めた。
男性は恋人の妊娠を知ると雲隠れして、R香の元に戻ることはなかった。
やがて、R香は一人の子を産んだ。それがJ也である。
R香親子は兄夫婦の元でしばらく暮らしていたらしいが、母が継母であるため、やはり居心地が悪かったのだろう。
余裕が出てきたなら、引き取ろうとしたのか、二歳にも満たぬJ也を置いて、離れて暮らすようになった。
(もっとも、このあたりは、兄夫婦も多くを語らぬタブーの領域で、推測の域を出ない)
そのうち、R香はK氏と結婚するが、幸せな日々は長く続かなかった。
若くして乳がんに冒され、入退院を繰り返しはじめる。
一方、そうしたR香の苦境を知り、兄夫婦はJ也を養子として引き取ることにした。
J也が成長し、野球少年として活躍し始めた頃である。
さて、ここからはJ也夫婦の披露宴当日、控え室にて初対面のK氏から聞いた話である。
ーーある日、J也の所属するリトルリーグの大会があり、テレビ中継されることになった。
闘病中のR香はそれを知り、病院のベッドで観戦していたが、そのとき、テレビに映し出された一人の少年が、その耳のかたちから、自分の産んだ子に間違いないと言い出したのだという。
ーーはてさて、それがはたして本当にJ也であったかどうか、R香の亡くなった今となっては確認のしようがない。
普通であれば顔つき、目つきや所作などで判断するのだろうが、目鼻立ちのまだ整わぬ乳児であれば、いつも添い寝しているときに見える小さな耳が、R香にとっては最もいとおしく、最も深く脳裏に刻まれた部分だったのかもしれない。
最近の政治の世界に目を向ければ、耳を疑うような半信半疑の発言が取りざたされ、そのたびに裏付けや物的証拠が求められるが、この話を聞いた私は、何の迷いもなく、いかにもそうだったのだろうと納得し、母と子の結びつきの強さに改めて感動し、それを信じた。
こればかりは「真」がそのまま「信」となったわけである。
それとともに、決して褒めることなどできない波乱万丈の短い人生を終えたR香にも、最愛の息子とのひと時の憩いがあったことに、わずかばかりの慰安を見出した。
天国にいるR香よ! 心配することはない。 J也は私などよりもよほどしっかり生きていくだろうから。
私の姪(兄の娘)のR香は、叔父の口から言うのもはばかられるが、子どもの頃から早熟で利発、おまけに美貌にも恵まれていた。
惜しむらくは、その生育環境が彼女の才能を守ることをしなかったことで、両親の離婚という事情も手伝って、感受性の赴くまま、奔放な生活に浸り、すでに十代にして男性と同棲生活を始めた。
男性は恋人の妊娠を知ると雲隠れして、R香の元に戻ることはなかった。
やがて、R香は一人の子を産んだ。それがJ也である。
R香親子は兄夫婦の元でしばらく暮らしていたらしいが、母が継母であるため、やはり居心地が悪かったのだろう。
余裕が出てきたなら、引き取ろうとしたのか、二歳にも満たぬJ也を置いて、離れて暮らすようになった。
(もっとも、このあたりは、兄夫婦も多くを語らぬタブーの領域で、推測の域を出ない)
そのうち、R香はK氏と結婚するが、幸せな日々は長く続かなかった。
若くして乳がんに冒され、入退院を繰り返しはじめる。
一方、そうしたR香の苦境を知り、兄夫婦はJ也を養子として引き取ることにした。
J也が成長し、野球少年として活躍し始めた頃である。
さて、ここからはJ也夫婦の披露宴当日、控え室にて初対面のK氏から聞いた話である。
ーーある日、J也の所属するリトルリーグの大会があり、テレビ中継されることになった。
闘病中のR香はそれを知り、病院のベッドで観戦していたが、そのとき、テレビに映し出された一人の少年が、その耳のかたちから、自分の産んだ子に間違いないと言い出したのだという。
ーーはてさて、それがはたして本当にJ也であったかどうか、R香の亡くなった今となっては確認のしようがない。
普通であれば顔つき、目つきや所作などで判断するのだろうが、目鼻立ちのまだ整わぬ乳児であれば、いつも添い寝しているときに見える小さな耳が、R香にとっては最もいとおしく、最も深く脳裏に刻まれた部分だったのかもしれない。
最近の政治の世界に目を向ければ、耳を疑うような半信半疑の発言が取りざたされ、そのたびに裏付けや物的証拠が求められるが、この話を聞いた私は、何の迷いもなく、いかにもそうだったのだろうと納得し、母と子の結びつきの強さに改めて感動し、それを信じた。
こればかりは「真」がそのまま「信」となったわけである。
それとともに、決して褒めることなどできない波乱万丈の短い人生を終えたR香にも、最愛の息子とのひと時の憩いがあったことに、わずかばかりの慰安を見出した。
天国にいるR香よ! 心配することはない。 J也は私などよりもよほどしっかり生きていくだろうから。