濃さ日記

娘もすなる日記(ブログ)といふものを父もしてみんとて・・・

祝婚歌(民謡)

2016-10-08 01:18:06 | Weblog
残暑やら台風やらで騒がしかった九月も過ぎ、はや十月となった。
この間、ブログもすっかり滞っていたことをお詫びする。
近況を少しご報告すれば、その後、我が娘の結婚の段取りはのんびりしたペースで、いまだ具体的なスケジュールなど決まっていない。
もっとも、私などはすっかり蚊帳の外に置かれ、何の相談もされないので、気楽である反面、やや物足りない気もするのだが。
そんな折り、古くからの友人Kのご子息が一歩先に結婚式を挙げることになった。
新郎新婦両家を代表してKが謝辞を述べることになるが、その際、吉野弘の詩「祝婚歌」を朗読したいという。

さて、話は三十年以上も昔にさかのぼる。
じつは、Kの結婚披露宴の席で、私は友人代表として祝辞を頼まれたのだが、口下手な人間が、めでたい席で場をしらけさせるわけにもいかないと思い、当時、新刊まもない詩集から吉野弘の「祝婚歌」を取り上げて読み、詩集をそのまま結婚祝いとして新郎新婦に差し上げたのである。
Kの話によれば、今も年に一度ぐらいは、奥さんともども、この詩を思い出し、感慨にふけっているという。
一方、贈った側の私の方はといえば、その後、教え子の結婚祝いにも贈った記憶があるものの、詩句を振り返ることもないまま、時の流れの中で風化するに任せていた。
だから、Kから今回のことを告げられ、改めて詩の言葉のもつ力を思い知らされた。
そしてウェブを調べると、詩人の吉野弘は逝去したものの、詩は近年再び話題になっているようだ。ここにその詩を引用しておこう。

二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派過ぎないほうがいい
立派過ぎることは
長持ちしないことだと
気づいているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうち どちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気づいているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には色目を使わず
ゆったりゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そしてなぜ 胸が熱くなるのか
黙っていてもふたりには
わかるのであってほしい


ちなみに、この詩は、詩人の姪の結婚式に出席できなかった償いに書かれたものらしい。
生前、詩人は「祝婚歌」が多くの人々に引用されることについて、「詠み人知らずのまま、口伝えで受け継がれていく民謡のような詩だから、著作権など気にしなくていい」といっていたという。
Kの場合も二世代にわたって、晴れの舞台で読み継がれることになるわけで、詩人はなんとも含蓄の深い言葉を残してくれたものだと思う。
だから、我が友Kよ! 若い二人が新しく旅たつ祝いの日、どうか胸に迫る万感をかみしめつつ、ほのぼのと、しみじみと、この詩を、いやこの民謡を渋く唄って二人を送り出してほしいものである。
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2 コメント

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祝婚歌。 (on)
2017-03-11 22:56:45
あぁ今、私は路頭に迷っている!!!
と、思うと、「そうだそろそろ濃さ日記」という位置付けになっている先生のブログ、これからものんびりと続けていただければ嬉しいな、と思っております。
夜のサプリメントです。

先生からいただいた祝婚歌、結婚して14年が経ちますが、今でも読みます。読み返します。時には何回も何回も同じところを読みます。
いつでも手に取れるように、今、我が家の大半を陣取っている絵本の棚に、一緒に並んでいるという代物。
そして、音読です。こればっかりは音読に限る!と思っております。

娘さんのご結婚の際も、この本を先生は送るのかなぁ。
いや、送ってあげてください。ぜひ。
先生がここに書かれている生命のことや、その連続性、幸や不幸、種々諸々・・・その大半が、結婚後に起きているように、私は感じております。
そんな時、ちょっと助けてくれる本です。

先生の濃さ日記も、同じく。
読むたびに、当たり前のことを真面目に、そしてちゃんと、と思います。
今預かっている命を、きちんとお返しできるように、ちゃんと、です。

頑張ります。



Unknown (Unknown)
2017-03-12 00:41:47
いやはや、何とも思い出深いものです。我がブログも最近サボりぎみですが、何とかがんばりましょう。

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