大川原有重 春夏秋冬

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世界3位の地熱資源大国 「温泉発電」で脱・宝の持ち腐れ  2

2015-07-09 11:30:00 | 学習
世界3位の地熱資源大国 「温泉発電」で脱・宝の持ち腐れ

■既存の源泉活用できるバイナリー発電

 別府や湯布院といった有数の温泉リゾートを抱える大分県では、既に温泉として活用されている源泉を活用した地熱バイナリーサイクル発電、俗称「温泉発電」を普及させようという気運が盛り上がって来ている。

 バイナリーサイクル発電は、ペンタンや代替フロンなど水より低沸点の熱媒体を温泉の熱湯や水蒸気で気化させタービンを回す発電技術である。従来の地熱発電では熱を取り出す源泉の調査や掘削などで投資額がかさむことも問題だった。

 バイナリーによる温泉発電では新しい源泉の調査や掘削が不要で、既存の源泉をそのまま活用できるため、比較的低コストかつ短期間で運転を開始できる。また、既にある源泉の湧出量には何も影響を与えないのも大きなメリットである。現在、源泉の温度が高すぎて入浴用に水で温度を下げているような温泉地では、捨てている熱エネルギーを電気に換えて収益化できる理想的な技術と言える。

 地熱バイナリーサイクル発電の契機となったのは、別府市の瀬戸内自然エナジーによる温泉発電(出力60kW)である(図4)。同社は経済産業省の固定価格買取制度における商用地熱発電事業としては日本で最初の認定事例となった。


図4 瀬戸内自然エナジーの地熱バイナリーサイクル発電所
 今年2月に発電施設の設置を完了し、営業運転を行っている。この5月には安倍首相が別府市を来訪・視察し、ボイラー・タービン主任技術者の常駐が必要という現在の規制を、小規模な温泉発電施設などでは緩和する意向を表明した。
■FIT以外の普及支援策が必要

 こういった一連の動きは、比較的小規模な温泉発電の普及においては、もちろんプラスとなる。ただ、既に「バブル」という表現まで聞かれるようになった太陽光発電と比べると、温泉発電は馴染みが薄いだけでなく、普及に向けてのハードルはまだ高い。

 まず、技術的な課題がある。従来の地熱発電に比べれば低温な源泉で可能とはいえ、現在の技術や設備では「湯温が摂氏100度以上、湧出量が毎分 1000リットルなければ温泉発電は難しい」(瀬戸内自然エナジー社長の森川勇氏)という。

 これについては、より低温で少ない湯量でも発電が可能な高効率バイナリーサイクル発電技術の開発が期待される。現在、バイナリーサイクル発電機ではイスラエルのOrmatが高い市場シェアを持つが、出力が数百kW級と中規模以上で、小規模な温泉発電には不向きである。国内の重電・電機各社、大学などによる技術開発を加速させる施策などが望ましい。

 また、温泉発電に参入する事業者向けの支援策、特に発電施設を設置するための事業資金の投融資などが活発に行われるような仕組みが必要である。小規模で低コストと言っても50kWの発電所を1カ所稼働するには最低でも億単位の資金が必要になる。実際、大分県内の別の地域でも温泉発電の導入を計画していた事業者があったが、資金の手当ができずに導入を見送ったという経緯がある。

 太陽光発電の分野では、FITが制度化されるまで全く導入されることの無かった数十メガワット級のメガソーラー建設がプロジェクトファイナンスの手法を活用することで、全国各地で活発化している。数十~数百kWクラスの温泉発電なら、ずっと小規模な投資額で済む。

 出力が小さい分、リターンも少額になるが、天候に左右されない地熱発電では太陽光や風力より安定した売電収入を期待できる。世界で第3位のポテンシャルを持つ日本が、地熱エネルギーをもっと活用しない手はない。温泉発電は日本が地熱大国を目指す第一歩として最適だろう。

(テクノアソシエーツ 大場淳一)

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