ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

『朝長』について(その27=舞台の実際その9)

2006-05-27 01:11:53 | 能楽
今日は師匠に『朝長』の2度目のお稽古をつけて頂きました。一曲の能で2度もお稽古を受けたのは『道成寺』の披キ以来です。師匠もご多忙なのに、ぬえの2度の稽古の申し出を快く引き受けてくださり、今日もたくさんご注意を頂きました。

ことに「後シテがよくないなあ。。」とのご注意があって、ええっ? 後シテ。。? それでも後シテの床几の型「鐙を越して下り立たんと」のところの型(ここ。。どうも ぬえの師家だけがここに思い切った型が伝えられているように思います。。真偽のほどはわからないけれど、ほかのおシテで拝見していて、見た事がない型。。)について、そんで、ついでに「切腹のしかた」もよ~~~く教えて頂きました。(^^;)

前は。。前回の稽古と違って今日はあまりこっぴどく直される事はなかったのですけれども「謡」についてご指摘を頂きました。ネタバレになってしまうのであまり詳しくは申しませんが、要するにここのところ話題になっている「前シテの年齢(すくなくとも精神的加齢)」について ぬえが考えすぎてしまったようです。師匠からは「謡の調子の高低」とか、ましてや「年齢」についてなどというご注意はなく、その代わりに「コトバの抑揚をハッキリ謡え」というような、もっと基本的な点を直されました。。あ。。ぬえって本末転倒だったんね。。(T.T) あと1週間しかないのだけれど、でもなんだか師匠にこのお言葉を頂いて、吹っ切れた。やはり最初に ぬえが信じた方向に従おう。

さて、このブログなんですが、なんだか最近アクセス数がかなり多くなっていてビックリしています。。一昨日は150、昨日は180アクセス。。ええええぇぇぇ?
なんだかコメントもつけにくい内容の、言ってみれば独りよがりのブログなのにみなさんに見て頂いて。。恐縮しております。もうちょっと面白い事でも書いた方がよいのだろうけれど。。すみません『朝長』が終わるまでしばらくご辛抱ください~~ (;_:)

最後に、今日アップしたこの画像は『朝長』の後シテに使用する面「十六」です。これは ぬえが数年前に購入したもので、『敦盛』か何かで使う機会があろうと思って手に入れたのですが、まさか『朝長』で使う事になろうとは。この面を当日も使用します。

この面、女流の能面師の方が打ったものなのですよ。この人は面白い人で、「写し」すなわち言葉は悪いけれど本面を「コピー」するのが常識であって基本的に創作は許されない能面打ちの世界の中で、ある程度までは本面を写していながら、割と意図的に、途中から本面を離れてご自分の個性を主張して、それを面に込める、という事をする方です。この「十六」も、能楽師の誰が見ても「十六」である事には異議はないのですが、これまた誰しもが「ちょっと見たことのない顔だね。。」と思うような面です。こういう作者の意図的な主張というのは少なくとも能面を打つ、という世界の中では昔は考えられない事なのでしょうが、この方とお話をする機会があって、そのへんの事を伺ってみたところ「写すべきなのは形じゃなくて心でしょ?」と明解にお返事されました。

この面、美しいけれど、ちょっと艶めかしいでしょう? なんだか『敦盛』よりもかえって一途な思いで死を選んだ朝長の「生々しさ」に迫るものがあるのではないかしら。この面はまた、遠くで見るとずいぶん印象が違う面で、鉢巻きを着けた姿を見所から見ると、ずっと凛々しく、すこしキツく見えるかも。頼りにしてるよ、キミ。(^ヘ^)v

以前の記事の「深井」の画像も更新しておきました。

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