ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

改めまして…3度目の石巻市訪問(その9)

2011-11-27 02:07:41 | 能楽の心と癒しプロジェクト
昨日深夜に学校公演の第3弾! 京都府・福知山より帰って参りました。ここでの2日間の公演では ぬえは珍しく後見と地頭の大役を頂き、ありがたいことでした。そこからバスや新幹線を乗り継いで東京に帰宅するまで6時間…やはり遠いですね~。ところが帰宅したら伊豆の子ども能の出演者の小学生から、その翌日に開かれる学芸会の招待状が届いていました~(^◇^;) ああ、そうです、翌日…つまり今日は伊豆の子ども能の稽古! 早朝に出発して、子ども能の稽古の前にしっかり学芸会も見て参りました。そういえば市内のこの学校…子ども能の参加者はたった二人しかいないのに、その二人が、この2月に行われる公演では主役と準主役なのであった。担任の先生にも子ども能の宣伝をして参りました~

さて、今さらではありますが、9月末に参りました石巻への訪問のこぼれ話など。…といいますのも、この年末に ぬえにとっては4度目となる被災地訪問を計画しておりまして、それもほぼスケジュールが固まりつつありまして…。そこで今回はこれまでにご紹介し損なった石巻で出会ったお話などをお伝えしようと思います。

で、タイトル画像は「舞う その子ども」。…「その子ども」って何でしょう?

じつはこおブログでも一度ご紹介したことがあるのですが、ぬえたちが大変お世話になり、9月の滞在では宿泊もさせて頂いた石巻市立湊小学校避難所(現在は避難所は解消して、学校施設としての再開に向けて準備中である模様)では、いつも目に入るものがあります。それはポップな感じの絵の数々。

こんなのや、



こんなのや、



こんなの。



もう体育館にとどまらず学校を埋め尽くすごとくで、これらの絵の中心になっている男の子?が、「その子ども」です。

ぬえがこれらの絵を最初に見たときは…どうも20代らしい若いボランティアばかりが大勢で忙しく立ち働いているこの避難所であってあれば、これぐらいのイラストを描く漫画家志望の女の子でもいるのは当たり前か…、避難所を明るい雰囲気にしようとイラストを描いているんだろうなあ、ぐらいにしか考えなかったのですが。

8月になって事実を知りました。これを描いたのはこの人!



ををっ!? ちょっと意外でした。この方、瓦ちゅんさん・通称ちゅんさんといいますが、ぬえが湊小学校で出会った 神戸チームはじめ各地のボランティア団体…鳥取や横浜に属しているわけでもなければ、もう少し大きな団体…ピースボートなどのメンバーでもありません。この写真を撮ったのは6月ですが、その時も、そのあと8月にも9月にも、ぬえが湊小学校を訪問したときは常に自転車の修理に精を出していました。…自転車にとても詳しい特技を活かすべく、なんと4月に個人ボランティアとして京都から一人で被災地に来た人なのです。修理用の道具や工具を両手で抱えて。

それ以来、ちゅんさんはずっと湊小学校避難所で自転車の修理を続けています。被災地では車をなくした方も多く、また当初は道も荒れていたので現実的には自転車がもっとも便利な乗り物でした。ところが今でも道が荒れた状態には変わりがなく、パンクなどのトラブルもしょっちゅうなのだそう。そこで ちゅんさんは、きちんと手入れされている自転車や子ども自転車の修理は無料、それ以外の、手入れをしていない自転車の修理は有償、と区別しているようです。こちらがその工房。しっかり「その子ども」がいますし、ここは「その子どもサイクルぅ一号店(湊小店)」という名前らしいです。



9月に ちゅんさんに直接聞いたところでは、石巻に、宮城県に、とどまらず、東北地方に私設の(要するに勝手に作った)サイクリングロードを作るのが夢であるらしいです。なんにせよ すごいバイタリティですね~。さて、「一号店」がある以上「二号店」もあるわけで。それは湊小学校からほど近い、焼き鳥屋さんの中に置かれています。こちらがその焼き鳥屋さんの「東助」(とうすけ)。



どうやら「東助」も津波被害に遭って営業停止に追い込まれたところ、店主さん(とおさん、と ちゅんさんに呼ばれているらしい)と ちゅんが仲良くなり、これをキッカケに、ちゅんさんら有志が「東助」の営業再開をめざして改装工事をはじめました。その間には、荷台に焼き鳥を焼くための炭火コンロを積んだ改造自転車を造って移動営業してみたり、店先に看板やベンチを置いたり、いろいろな試みをしているようですが、そのどれもが ちゅんさんの手にかかると その子どもが登場、カラフルでポップな色彩を帯びたイラストに埋め尽くされるのでありました。





現在、湊小学校避難所は閉鎖になりましたから、すべてのボランティア団体は湊小を引き払いました。個人ボランティアのちゅんさんも湊小学校を出て(一号店は閉店となりました)、「東助」に住んでいます。そして「東助」の中に「その子どもサイクルぅ二号店」をオープンさせ…そしてついに今月には「東助」の営業も再開したそうです。ぬえの次回の石巻訪問ではこの「東助」に飲みに行くのを楽しみにしています。(*^。^*)

まあ、要するに「その子ども」のイラストはちゅんさんのもうひとつの隠れた才能であるのでしょう。もちろんそのイラストの腕前は評価されて、そうして湊小学校避難所のイベントや「一号店」はイラストで飾られることになり、さらに湊小学校から仮設住宅に移られた住人さん方の依頼によって、仮設住宅の入口の看板なども手がけているようです。

ちゅんさんのブログ。面白いので読んでみてください。

こういうわけで面白い人なので、9月の訪問では滞在中に ぬえ宛に「その子ども」のイラストを描いて頂くようお願いしておきました。それがタイトル画像の「その子ども」。ちゃあんと扇を持って、よく見ると下の方に小さく湊小学校が。これを守っているんですね。「その子ども」はいつも湊小を守っているようです。

でもね、「その子ども」は、どうやら ちゅんさんの分身のようですよ。ぬえが湊小学校で見つけたこれらの言葉。これは ちゅんさん本人のものでしょう。


湊小学校の「その子ども」


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