ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第10次支援活動<松島町・女川町>(その2)

2012-11-28 20:29:19 | 能楽の心と癒しプロジェクト
【10月21日(月)】

朝自宅を出発、新幹線にて仙台を目指しました。いつもならば装束の運搬もあるし車で移動。。それも高速道路の通行料を節約するために深夜に走行するのですけれども、この日は10月ということで東京での舞台も多く、まさにスケジュールの合間を縫っての活動になりました。とくに出発の前日には東京で師家の大きな催しがありましたので、これに出演してから終夜運転して東北地方に向かうのは無謀。。しかも同窓会の実行委員さんとの交渉で、交通費をご負担くださる、ということでしたので、ありがたくお言葉に甘える事に致しました。それでも限られた予算ですので、新幹線も割引キップを利用し、現地でも格安レンタカーを借りることにしていました。

この日の夕方に予定されていた石巻私立女子高の同窓会の会場は、松島のホテル「大観荘」でした。松島に行くためには仙台駅で新幹線を降りて仙石線に乗り換え、「松島海岸駅」を目指すのが普通です。仙石線は仙台と石巻を結ぶJRの路線で、松島付近までは震災後も通常の営業をしています。しかしここから先。。東松島町のあたりでは線路も津波被害に遭って、現在でも復旧の見通しが立っていません。

今回もこの仙石線に乗るつもりだったのですが、この日だけ ぬえらのサポートを引き受けてくださった松島在住のプロジェクトの活動の協力者のFさんのアドバイスもあって、東北本線を利用して「松島駅」を目指すことになりました。というのも、時間節約のため昼食は駅弁を買って移動中の電車内で頂くことにしたのですが、Fさんにそれを伝えると「仙石線はベンチ型のシートで駅弁食べづらいですよ。東北本線ならボックス・シートです」というアドバイスが! こういう、現地の人ならではの情報は貴重ですね~~。感謝して東北本線でお弁当を食べながら松島に向かいました。すでにレジャーの気分じゃね。。

松島町。ぬえはすでに昨年6月からずっと状況を見てきております。言葉の選び方が適切かわかりませんが、この松島町と塩竃市は、震災時にもほかの沿岸地域と比べて津波による被害は比較的軽微だったのです。膨大な量の水が押し寄せて家々がなぎ倒されて流される、というよりは、洪水による浸水の被害があった、という感じでしょうか。人的な被害も比較的少なかったようです。

そういえば昨年4月、静岡市清水の三保の松原に行った際、すでに「松島は無事だったらしい」という情報を得ていました。それは観光地同士のネットワークを通じて関係者が持っていた情報で、テレビ番組のニュースなどで東北の沿岸地域があまりに広範囲に壊滅的な被害を受けた報道を見ていた ぬえには最初それを信じる事ができませんでした。

そうして、ぬえは昨年6月に一人で取る物もとりあえず当地に来ましたが、当時ネットですでに塩竃のホテルは宿泊予約を取ることができました。松島も旅館等の営業は始まっていたように思います。不思議に思いながら松島にやって来ると、五大堂も瑞巌寺も無事、観光船も営業中、海辺の屋台では 焼き牡蛎を売っていて(美味でした!)、そこここに観光客の姿もあったのです。

ぬえはこの時仙台の若林のあたりで高速道路を降りて、そこからずっと下道を走ったのですが、若林や名取市のあたりでは通行止めも多く、一般車は海岸に近づくことはできませんでした。それでも畑や空き地のあちらこちらに車が転がっている有様は異様でした。ところがそこから塩竃~松島と進んでくると、ほとんど被害の跡というものは目に入らず、報道よりも被害は軽微なのかと錯覚したほど。

でも、松島を超えて東松島町に入り、奥松島と呼ばれる宮戸島や野蒜のあたりの惨状を見て絶句。。初日は石巻まで見てから塩竃に戻り、予約してあったホテルに宿泊し、翌日から石巻の避難所のお手伝いを開始しました。

。。考えてみると、人間が造った防波堤は津波によって壊滅的に破壊されたのに、自然の島々が連なる松島は、人の目からは小島が隙間も多くぽつりぽつりと浮かんでいるように見えても、大きく自然の防波堤となって波を押し返し、松島湾を守ったのですね。。気仙沼でも「津波にやられた港の地域はみんな埋め立て地なんです。津波によって元の地形に戻った、ということでしょうかね」という言葉を聞きました。陳腐な表現ですけれども、自然の力の偉大さに今さらながら驚嘆します。もっとも塩竃や松島の被害が比較的軽微だったといっても、この時塩竃で聞いたところでは、浸水の被害は飲食店の設備を直撃し、営業を再開できた店は半数にも満たない、ということではありましたが。
コメント
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