虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

機能不全家族について  もう少し 9

2013-11-07 15:08:53 | 日々思うこと 雑感

卒業を間際に控えたある日、わたしの自転車の前かごに紺色の小さなノートのようなものが

入っていました。

手に取ると、それは生徒手帳で、持ち主を確かめようと開くと、なつかしい名前が目に飛び込んできました。

それは幼馴染のAくんのものでした。

キツネにつままれたような思いで、手帳にある連絡先に電話をすると、

身体は大きくなったのに、幼い頃と変わらずクリクリした天然パーマにどんぐり眼のままの

Aくんが家にやってきました。

生徒手帳を受け取って、「すまない、すまない」と照れ笑いをしながら、

「卒業記念に友だちと飲んでたら、飲み過ぎちゃってさ。こんなところに手帳、置いてってたなんてさ。

それで、Sちゃん(妹)とかみんな元気?」と言いました。

飲み過ぎていたという言葉通り、顔に赤みが残っていたし、目も少し充血しているようでした。

お互いの近況報告をして談笑した後で、Aくんは帰って行きました。

 

しばらくして、Aくんから手紙が届きました。

地方の大学へ通うことや、

休暇はこっちで過ごすから、いっしょにニューミュージックの歌手のコンサートに行ったり、

あちこち遊びに出かけたりしよう、といった内容でした。

わたしはあわてて、「今つきあっている人がいるから、いっしょに出かけることはできない」と

手紙に書いて送りました。

 

そんなさばさばした返事を返しておきながら、それからのわたしはAくんのことばかり考えていました。

あと数日とはいえ、まだ高校生なのに、酔いつぶれるほどお酒を呑むなんてどういうことだろう?とか、

このまま行くと、アル中になるんだろうか?とか、

いっしょに近所中を駆け回って遊んだことやら、わたしもAくんもまともな道は決して通らないで、

垣根の隙間をくぐったり、塀の上を渡っていったり、山肌がそのまま残っている場所を選んで横断したりしていたことやら、

いつもわたしの味方になってくれたな、などと考えていました。

 

そんな折り、「家族に紹介したいから」と言われ、1学年上の先輩の家にうかがうことになりました。

そうして家を訪問した日、

本当に素敵な家族で、何ひとつ文句のつけようがなかったのですが、

わたしはその完璧さに対して、すっかり腰が引けてしまいました。

 

お家の門をくぐると、玄関まで飛び石が敷いてあり、玄関口で

着物姿のお母さんに迎えられました。

わたしと先輩は広々として掃除の行き届いた和室を通っていき、

途中でこちらも上品に着物を着こなして囲碁盤に向かっている先輩の祖父に挨拶しました。

 

団地暮らしのわたしにとって、

門から玄関まで飛び石をたどっていき、祝い事でもない日に着物で生活している

家庭なんて、少女マンガの世界でしかお目にかかれないと思っていたものでした。

 

 

次回に続きます。

 

 

 


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