虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

ひとりひとりの子にとって一番大事な働きかけ 3

2011-05-24 11:11:12 | 子どもの個性と学習タイプ
小学校高学年くらいの頃、私は「人生をリセットしなおしたい」という
願望を持っていました。

そうした願望は、深刻な悩みからきていたものではなく、
単純にもう一度、小学1年生くらいからやりなおしたら、
成績バツグンで、スポーツも万能、何をしても「すごいね、すごいね」とみんなから賞賛される自分になれるのに……という
気持ちから生じていました。
思春期を前にして、
「もっと褒められたい、もっと認められたい、もっとすごい自分になりたい」
そんな思いが渦巻いていたのでしょう。

高校生くらいの頃は、
親しい友だちが、
「もし子どもができたら、子どもといっしょに一から勉強しなおしたいわ」
とつぶやくのに、共感してうなずいていました。
その友だちにしても私にしても、まぁ勉強が好きなタイプではあるのです。

でも、本当に勉強することを愛しているのなら、
「子どもが生まれたら……」なんて言わずに、
高校生から本気で努力すれば、そこが学問の世界のスタート地点でも
あるはずなのですが、

「子どもが生まれたら……」なんて言葉の背景には、大学受験をゴールと捉えて、
「もうちょっと早い時期からあれとこれとそれをしておけばよかった」
「全てをリセットしてやりなおしたい」
という後悔の気持ちが混じっていたのです。

私のなかから、
すっかりこのリセット願望が消えてなくなったのは、
ひとり目の娘を育てながら、自分自身のそうした願望を娘にかぶせて
子育てしようとしている自分に気づいて、
違和感や嫌悪感や危機感を感じたからでもあるし、

生活したり、働いたりするうちに、
欠点も含めたあるがままの自分に対する親しみや自信が
蓄えられてきたからでもあります。

前回の記事に、

子どもから発信されるものを「ノイズ」として受信して、
遮断してしまいがちで、
自分の側からは、無意識のうちに、子どもに関することで「ノイズ」を発し続けている親御さん

について書きましたが、こうした態度の陥っている方というのは、
けっして冷淡な心を持っているわけでも、受信する力に特別な問題があるわけでもなく、ごくごく一般的な愛情深くて常識的な親御さんでもあるのです。

でも、それならどうしてかわいいわが子に向って
そうした対応を続けてしまうのかというと、
先ほど書いた「リセット願望」のようなものを
無意識のなかに温存させているからではないかな、と感じるときがあります。

そうした親御さんの心のなかには、
自分自身がずっと、そうなりたいと憧れてきて、
その立場に立つ人が受けている賞賛や注目や表彰を受けたいと焦がれている
「理想の自分像」があって、
常にそれに照らし合わせてわが子を眺めているように見えます。

そうなると、「理想の自分像」と重ならない
わが子の発するものの
全てが「ノイズ」なのです。

もうひとつ、「理想の自分像」はぼんやりとしてつかめないけれど、
「ダメな自分」「足りない自分」は、
しじゅう意識しているという方もいます。

「他人から劣っていると見えないように」
「他人から変な子だと思われないように」
「周囲から浮かないように」
「みんなに遅れないように」
と常に考えているので、
子どものささいな欠点に見えることに関しては、
耳を塞ぎたいノイズとして即座に受信するけれど、
良いところは、受信してもたちまちこのノイズにかき消されて聞き取れなく
なっているのです。

次回に続きます。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ストライクゾーン (pipiko)
2011-05-24 18:34:03
先生!
ストライクゾーンです。
やっと、自分の抱えていたモヤモヤが
言語化になったように感じます。
が、対応策が難関・・・。
返信する
Unknown (ろっきー)
2011-05-24 21:43:27
子どもの目線におりると、ノイズが素敵な曲に変わるんですね♪
でも、いつもこの意識を持つこと、これがなかなか難しいんですよね~
新しい気づきをありがとうございます♪
返信する

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