虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

子どもとの関わりのあり方はボードゲームやカードゲームの展開と似ている 2

2016-10-14 14:48:27 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

前回の記事で、非常に困った態度を身につけてしまった子の親御さんによくある間違った対応について、ゲームの話にたとえてこんなことを書きました。

① 子ども同様、その子自身が今手のなかに持っているカードは何かな?と見ることを知らない。

② どれがよりよいカードなのかわからない。

③ ひとつだけの答えカードへの決めつけをしてしまう。

 ④ 子どもの手中にないよその子が持っているカードを出すように子どもをプッシュする。

⑤ 今出せるもののなかでよりよいものが出ていても気づかない。

⑥ ひとつだけの正しさへの決めつけのせいで状況が読めなくなっている。

 

これについて、もう少し具体的に説明をすることにしますね。

「集団行動が取れない」とか、「わがままがすぎる」とか、「物分かりが悪い」とか、「勉強を嫌がる」といった子どものことで気になることがあるとき、親御さんがとりがちなまちがった対応のひとつに、

「① 子ども同様、その子自身が今 手のなかに持っているカードは何かな? と見ることを知らない。」

というものがあります。

 

ゲームでは、配られたカードのなかで勝負していくルールがあります。

他の人がいい手をだしているのを見て、「自分もそのカードを出したいな」と思っても、そのカードを持っていなければ出すことができません。

子どもにしても、同じ月齢の子同士でも、持って生まれた能力も環境も発達の順序もそれまで積み上げてきたことも異なるのですから、「この状況で、今、自分ができること」という手中のカードはそれぞれちがいます。

持っているカードが異なるのに、今その子がどんなカードを持っているのかを知ろうとしなければ、

 ⑤ 今出せるもののなかでよりよいものが出ていても気づかない。

という状況、つまり、子どもは今できることのなかで最善の方法をとっているのに、見過ごしたり、邪魔したりして、また元の困った態度に戻らせてしまうということが起こりがちです。

たとえば、こんなことがあります。

「新しいことをするが不安で、他の子らとする活動時間になると、ふらふらと立ち歩いていて、呼んでも聞こえないふりをする」という態度をいつも取っていた子が、

急に、「やりたい!ぼくもやりたい!がんばる!」と調子がよすぎるほどの意欲をみせるときがあります。

大人に褒めてもらったり、周囲に認められたりすることに無関心な子が、ちょっとしたきっかけで、「いっぱいいっぱい褒められたい」「認めてほしい、注目されたい、自分自身を肯定的にとらえたい」という気持ちを抱くときがあるのです。

心がちょっとずつ成長しているのです。

 

でも数日前まで、ふらふら立ち歩いていて呼んでもしらんぷりだった子が、「やりたい!ぼくも(わたしも)やりたい!がんばる!」と意欲いっぱいに宣言する場合、

たいがい、数分もしない間に「もう終わりにしていい?」たずねてくるのがオチだったりします。

また、懸命にやっているようでも、たびたび深いため息をついて、「もう終わっていいよ」と助け舟を出してもらうのを待っていたりするのです。

 

そうした態度は、それだけ見ていると感心できるものではありませんが、新しいことをするのが不安で、活動から逃げることしか頭になかった子にすると、より良い手でもあるはずです。

まずそうした「前よりちゃんとしているのか、ちゃんとしていないのかわからないけど、こちらのいい反応ばかり期待しているな」という過渡期を経て、少しずつ力をためて、

本当に褒められたり、認められたりするような態度を身に着けていくのです。

 

でも親御さんのなかには、呼んでも聞こえなかいようにみえた時期より以上に、「やりたい!」と言って、すぐにやめたがる態度に対して、

「自分でやるって言ったでしょ!」と責めたり、「すぐに飽きて放り出してしまう」と心配したりする方がいらっしゃいます。

すると、子どもは、すぐに元の無関心さへ戻ってしまいます。

わたしが子どもと接するときは、こうした『過渡期』と思われる時期をとても大事にしています。

 

次回に続きます。

 

 

 


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