虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

『地頭力』が育つ幼児期 7

2010-06-25 19:06:31 | 教育論 読者の方からのQ&A
小学生の女の子グループの子の保育所に通っている妹さんが、
「お姉ちゃんだけ勉強に通っていてずるい!」と言って毎回泣いて困るとお聞きしていたので、この妹さんもいっしょにグループに参加させることになりました。
すると、参加そうそう姉妹げんか。
それぞれの言い分を聞くと、
「通るとき、お姉ちゃんが蹴った」と妹。
「そりゃ、私は蹴ったけど、この子は、家では私の倍は蹴るんだもの。
それに、ピアノの練習なんて、2週間に1回しかしないのよ」と姉。
(家では好き放題な妹が、私の前でやたら要領が良いのがしゃくにさわるらしい)

「わかったわ。みんなは、ここの教室で今1回蹴るのと、
家でその2倍蹴るのと、どっちが悪いと思う?」
とたずねると、賛否両論が飛び交って大盛り上がり。
主流は、「家で蹴ったのは、過去のことだから、今この教室で蹴った方が悪いけど、でも、過去でも蹴る数が2倍だから、その分悪いから、どっちもいっしょ」と言った意見。
「そう、なら、教室で、4回蹴るとすると、お家でその2倍蹴る人は何回蹴ることになるの?」とたずねると、
「8回~!」と小学生組が声をそろえました。

「じゃ、今日の5月16日に★ちゃん(妹)がピアノの練習をしたとして、
2週間に1回練習するわけだから、その前に練習した日はいつ?」
「16から、7かける2の14を引いて、5月12日?いや13日かな?」

「カレンダーで確かめてみてね。
それから、これから聞くことにきちんと集中してちょうだい。
★ちゃんは2週間に1回しかピアノの練習をしないとして、
1年間にだいたい何回練習するでしょう?
だいたいの数で答えてみて」と言うと、
「1年は12ヶ月だから、だいたい2週間に1回だと月1回?ううん、2回だから……」と1年間という部分に注目して、それを言い換えて
考えていった小3の○ちゃんと小4の●ちゃん。
「わかった、24回」となかなかうまいこと考えていました。

企業で出される地頭力を測るフェルミ推定の例題では、

「日本全国に電柱は何本あるか?」
(制限時間3分、電卓・PC使用不可、情報の参照不可)

なんて、問題がでるそうです。
こういう問題、「情報が少ないから算出は難しいと考えたらその瞬間にゲームオーバー。
こうした例題で試されるのは、最終的に出てきた結果の正確性よりも
どういう考え方で解答に至ったかのプロセスなのだそうです。

私も虹色教室で、少し凝った文章題や
この記事の最初の会話のように、日常の出来事の中に潜む数をクイズ調にして
子どもたちに出すとき、
正解するか、速く解けるかより、
取り掛かり方や、解くプロセスや、
考える上での粘り強さに着目しています。

小学校低学年頃の算数では、丸暗記して解いていくことも確かに大事なのです。
九九なども、この時期覚えるから一生もので使えますよね。
でも、子どもの日常から「考える」という機会が奪われた状態で、
教えたことを、そのままコピーするように繰り返させる学習ばかりしていると、
ちょっと問い方の切り口が変わっただけで、
1分ほど考えてみることもせずに「わからない~」「わからない~」と大騒ぎするようになってしまいます。

教室では、
そのようにすぐすぐ思考をストップさせる習慣をつけないように、
遊びのなかで、「考え方」の基本が身につくように工夫しています。
具体的には、
「このおもちゃで遊びたい」とか「こんなことしたい」と言ってきたときは、子どもが2,3歳児でも、
やりたい~という気持ちが高ぶっている間に、
「どういう風に遊びたいの?」とたずねて、これから自分がしようとしていることのイメージを言葉にさせるといったことです。

すると、「電車を出して、線路をね、あっちとこっちにつないでって、それから駅とトンネルをおきたいの。それから、エレベーターを駅のところで作って、
降りた人が、ここに来て、電車に乗れるようにするの~」といった説明をするようになるし、その表現力は回を重ねるごとにしっかりしてきます。

また、遊び中、思うようにいかないことが起こった場合、
「どうすればいいと思う?」と子どもにたずねて、
問題を解決するのを支援しています。
解決するための仮説をたてさせ、実際やってみて
うまくいったか考えていきます。

遊び終わった後、作品なら、「お母さんやお父さんに見せてきてね。どこを工夫したのか、どこが難しかったのかきちんと説明してあげてね」と自分のしたことを振り返らせています。
おままごとのような遊びでも、どのように工夫して遊んだのか、
どこが面白かったのか、大事な部分を振り返って報告させるようにしています。

あまり堅苦しくせずに、
普段の暮らしのなかで、お母さんやお父さんやお友だちに自分のしたことを伝えたり、自分がどのようなことがしたいのか説明したり、
問題にぶつかったとき、いろんな仮説をたてて
解決法を模索することを取り入れていると、
子どもは常によく考えるようになってきますよ。

ひらがなとか計算とか、勉強っぽいことをさせては「考えさせない」習慣をつけるよりも、
子どもが夢中になる遊びのなかで、表現力、思考力、集中力、問題解決能力をきちんと育てていくことが、地頭力につながっていくと考えています。

写真はオーストラリアから来てくれた3歳、2歳の兄弟です。
理科実験が大好きな子たちです♪

--------------------------------------------------------------

姉妹げんか……と言えば、10年近く前の日記にこんなものが……

     <ケンカタイム>

知人の娘さんふたりの勉強を見るアルバイトをしているのですが、
この姉妹、寄ると触るとケンカしています。
冬場、こたつに頭を寄せて勉強させていると、見えない部分は常に修羅場。

姉の☆ちゃんの英語のワークの進みが遅いのを注意すると、
「○(妹)がこたつの中で蹴ってくるんで、勉強にならないもん~。なんとかして」と文句を言います。
即座に、こたつの中で、悪さばかりをしている二人分の足を交互に軽く蹴ってやりました。
それから、おごそかに、
「蹴りあったりせずに、まじめに、静かに、集中して勉強するのと、
蹴りあったりしながら、中断しいしいのんべんだらりと勉強するのと
どっちがすきなの?」と
「妹が蹴ってくる」と文句をいう☆ちゃんに詰め寄りました。
すると、☆ちゃんは、
「そりゃぁ、どっちかと言われたら……蹴りあってやる方がいいけど……」と白状しました。

実はこの姉妹が勉強する間、ついでにわが家の姉弟ペアも勉強させているので、
当然の成り行きとして、4人がからかいあったり、互いに邪魔したり、ケンカしたり、ふざけたりして収拾がつきません。

そこで、勉強はなるべくシンプルにして集中できる配慮をし、途中でルールつきで
ケンカタイムを取ることにしました。
ルールは、その都度、私のお天気(気分)で決めます。

「今日のケンカはことわざか、四字熟語しか使っちゃ駄目よ。制限時間は5分。
ルール違反者は勉強時間延長。OK?」
「へい」
「ふんふんふん」
「○(妹)がさ、私のことバカやとか言ってくるのさ……あれ、えーと、目くそ鼻くそを笑う、やろ」と☆ちゃん。
「五十歩百歩や」と息子。
「どんぐりの背比べ」と娘。
「そーや、人のふり見てわがふりなおせ。」と再び☆ちゃん。ついでにこう付け加えました。
「でも、言わぬが花やったな。私までみんなにバカにされているみたい。
これって、キジも鳴かずば撃たれまい?」
そこで、私が、「チリンチリーン、ラスト」とつげました。
「えーもう終わり?」と全員。
「そう、立つ鳥後を濁さず(ぐだぐだ言わず、きれいに終わりましょう~という意味で使っています)」

数日後。
「今日は、いやにまじめのがんばっているね。そろそろケンカタイム取ろうか?」
「いいよ。もう今日は」と☆ちゃん。「これはやくやっちゃいたいし」
○ちゃん(妹)が横合いから、
「そ、めんどくさい。おばちゃん、黙っててーや」
(関西っ子たち、口が悪いですね~
……子どもの成長、恐るべし……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
↑の姉妹とうちの子たちで、当時、毎日いろんな遊びが生まれていました。
遊びが育むやる気と 問題を乗り越える力 1
遊びが育むやる気と 問題を乗り越える力 2



にほんブログ村 教育ブログ 幼児教育へ



web拍手を送る

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。