虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

遊びが広がらない自閉症の子との遊びを発展させていく方法 4

2013-02-23 17:39:16 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

前回までの記事に次のようなコメントをいただいています。

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「自閉症の受身から遊びが発展しない」からコツをつかみたく続けて読ませていただいています。
物を使ったり、一人遊びもやり取りも苦手です。
お気に入りの本が3冊あり、好きな絵や文を「これなあに」と答えを聞くのが好きで、できるだけ楽しく答えてあげ、あとは好きなハンドタオル(他のタオルや洗濯しようとすると怒る)と一緒に自分のそばへおきます。小学校(支援学級)に行く以外は寝る前も枕元です。

本のキャラクターで手作りのパズルや塗り絵他、遊びを広げようとして色々誘っても難しく「描いて」「作って」とも言われません。
誘いは嫌がります。

「視覚的に気になるのを答えてほしい。せりふを言ってほしい、歌ってほしい、くすぐってほしい」など聴覚?感覚的な要求が多いです。

物や手を使いたがらない、安心感のために置いておくものは、どう対応していけばいいのでしょうか?何が好きなのか、先生のように色々な角度で知ることが出来たらと思って試行錯誤しています。
みなさんのようにおもちゃや物で遊ぶ息子をみてみたいです。

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誘いにのらず、おもちゃを買っては無駄になることが多い自閉っこなので、この記事に何かいいきっかけをと思い有難く読んでいます。
2~3語ですが、とにかく日常でも遊びも甘えや不器用で自信なく要求ばかりです。子供の興味あることの字も絵も工作も手作りし、簡単に少しだけにしてやりとりや達成感を体験させていましたが、反応がよくないので、違うのかなと感じます。あれとってこれ読んでと自分で出来ることも何でも要求し頼ります。わがままなのかと感じてしまうのですが、この記事を読むと、頼りたい、要求の時期はやり取りの前の時期なのでしょうか。上手く出来ない状態ですが、少しでも身につけられるよう続きを楽しみにしています。

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見たり聞いたり感覚を楽しんだりするけれども

能動的に自分の手を使って何かに取り組むことがないという自閉症の子は、

 

その子の好きな「見たり聞いたり感覚を楽しんだりする活動」と

 

「自分で働きかけたり作ったりする活動」との

 

橋渡しになるような

それらの中間に位置するような活動がたくさん必要なのかもしれません。

 

大人が考えるおもちゃや工作に誘うのではなくて、

その子が好んでする行動に注目して、

それを

造形芸術活動の中で楽しめないか、、

目的を持って能動的に行う活動の中に組み込めないかと考えてみるのです。

 

たとえば、指先で何かをこするが好きでしたら、

鏡の上などにベビーパウダーなどを薄くまぶして、

指でそれをなぞりながら絵を描くのを楽しむかもしれないし、

パステル画を楽しめるかもしれないし、

クレパスなどを楊枝等でひっかいたり、消しゴムを使うのを喜ぶかもしれません。

 

また、水などを手ですくうのが好きな子なら、

園芸用の水を含ませるアクアボールなどをプラスチックカップに入れるままごと遊びを

楽しめるかもしれないし、

水車を用意すれば、それに水をかけて遊ぶのを楽しめるかもしれません。

 

ある音を好んで聞きたがるのにしても、

好きな曲を選んで聞くことができるようなシステムを

作ってあげると、遊びが広がるかもしれません。

 

ただそうした外から新しく提案されることに

何ひとつ興味をしめさない子やボーッとしたまま何にも

気持ちを向けようとしないように見える子もいるはずです。

 

そうした関わることがとても困難に思われる子と過ごす場合、

何か働きかけようと焦るよりも

その子が嫌がりそうな刺激を減らし、

その子がアウトプットするものより、

こちらがアウトプットするものの方が大きくなったり強くなったりしないように

努めていく引き算の考えで接する方がいい時もあります。

 

子どもがアウトプットしているものより

自分がアウトプットしているものの方が小さくなるようにして

バランスを取っていくことについて、次の過去記事の 5あたりから

ぐだぐだと長ったらしく説明しています。

興味のある方は読んでくださいね。

 

特に遊びらしい遊びがほとんど成り立たないという子と

どのようにして関わっていったのかという実際のエピソードはリンクの下にコピペして紹介しておきます。

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広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 1

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 2

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 3

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 4

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 5

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 6

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 7

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 8

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 9

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 10

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 11

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 12

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 13

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 14

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 15

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 16

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 17

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 18

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 19

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 20

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 21

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 22

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 23

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 24

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 25

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 26

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 27

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 28

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 29

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 30

広汎性発達障がいと診断されたり、広汎性発達障がいの疑いを指摘されたら 31

 

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<14より>

これまでお話してきた「バランスをとる」という方法は、

わたしがこれまで子どもと接するときに自然に行ってきたことで、

シンプルな方法ながら

いつも期待した以上の良い結果を得てきた方法でもあります。

親御さんがこれを自然に実践できるようになると、どんなに発達に困難を抱えた子でも

成長が加速されていくことを信じています。

 

「子どもから発せられるものと、大人が発するものの量をそろえる」過程は記事にも

してきたのですが、

表現の仕方があいまいだったためか、きちんと伝わっていない感じがしていました。

 

同じ内容を「バランスをとる」という言葉で説明したところ、

「腑に落ちた」とおっしゃる方がたくさんいらっしゃったので

過去記事をもう一度この言葉を使って説明しなおしてみることにしました。

 

わたしは何ヶ月かに1度、神奈川に住んでいる自閉症のトムくんという男の子のもとに通っています。

トムくんとわたしの出会いから何度目かのレッスンの様子を

自閉症のとトムくん と 新しい成長の兆し 1

の記事の終わりにリンクしています。

その最初の

(鎌倉で……)知力、能力、意欲を引き出すってどうするの?

のなかで、ブランコをはじめたトムくんとわたしのやりとりを書いています。

 

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yoshikoさん宅で、学校から帰宅したトムくんは
天井から吊ってあるブランコで遊び始めました。
私はブランコにぶつかるような位置にすわっていて、
トムくんがブランコを前にこぎだすたびに、「こわいこわい」と言いながらうしろにさがり、また前に出ては、ブランコがきたら「こわいこわい」とさがってみせました。
すると、あらぬ方向をみていたトムくんの目が、ブランコが揺れている
最中は私をしっかり見ています。
次に、こぎだしてきたトムくんのつま先を手の平でトンッと受け止めると、
次には、手をめがけて、足を当ててやろうという意志が表情に浮かびました。
そこで、こちらも積極的に、ブランコが後ろにさがるときに、
「まてまて」と足先を手でたたくふりをして追いかけて、ブランコがこちらにきそうになると、サーッと後ろにさがって「こわいこわい」とオーバーにしてみました。
この遊びがとても気にいった様子のトムくんの表情には、
私の次の行動を期待したり、期待通りで面白いという笑顔が浮かびました。
それでふざけっこをやめたとたんに、自分から手をつき出して私の両手をにぎり、
「もっと遊ぼうよ」という目で見上げました。

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この数分間のブランコ遊びの後で、

人を人として意識して見ているように見えないほど

人に対する無関心さが目立っていたトムくんが、わたしに対して積極的な関心を寄せるようになりました。

 

このように書くと、ブランコをしている時に、

「待て待てと追いかけてあげるといいんだな」「向こうがこぎ出した時に

こわいこわいと逃げたらいいんだな」と表面的な何をしていたかの事実だけを

受け取られてしまうかもしれません。

でもそうした目に見える形を真似てもおそらく

対人交流が困難な子の気持ちを惹きつけるのは難しいかもしれません。

 

それなら、何をどう気をつけて遊べばいいのか

というと、ここでも重要なカギを握っていたのが

「バランスをとる」ということなのです。

 

トムくんと会ったばかりの頃、わたしはたびたび

自分が完全に「物」になったかのように振舞っていました。

身体の力を抜いていっさい何もしないだけでなく

心のなかからも全ての雑念を排除するのです。

 

 

トムくんとわたしの間には

透き通るような静かな時間が流れていくのを味わっていました。

 

わざわざ心のなかの雑念まで消し去っていた理由は、

ただ黙って「物」になったような演技をするのでは、

かえって緊張感や人の感情や考えが外に向かって放出されることにもなりかねないからです。

人が考えていることや感じていることは

表情や手足の筋力の張り方や微細な身体の動きなどで

自分で思っている以上に伝わっているものです。

 

どうして「物」のように振舞う必要があったのかといえば、

トムくんの「人への無関心さ」は、「人に対する過剰な敏感さ」と表裏一体であることが

直観的に感じとれたからなのです。

そうしたトムくんの敏感な感性と自分の関わり方のバランスをとろうと思ったら、

まずリラックスして自然でありながら何もせずに何も考えない状態を

保つことが大事だったのです。

時折、人としての意志を失って

物のように力が抜けるわたしの腕を

引っぱってみたり、自分の思うように扱ってみたりしながら、

トムくんのなかで次第にこちらに向ける関心が高まっているのがわかりました。

ブランコで遊ぶ時も、トムくんがねらいを定める思いの強さより、少し控えていながら

次の遊びを誘うほどの強さで返していましたし、

相互のやりとりがお互いのワクワクする気持ちを刺激して、トムくんの「楽しい」という

感情が高ぶるにつれて、わたしもそれより少し控えつつ大胆に振舞い、

トムくんが次に起こることを期待するような表情を何度も浮かべるようになったところで、

期待を裏切って、意外性にちょっと驚くような体験を加えたのです。

 

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1 コメント

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中間の活動と言葉ののせ方 (希望・・☆)
2013-02-24 01:09:19
以前から読ませていただき、色々なもので実践するものの未だに子供の独特の世界から遊びに広げられませんでいました。今回「中間に位置する活動」が奈緒美先生ならではで強く心に響きました。うちの子も何故かハンドクリームや入れ物の角でチラシの文字を消したりします。
先生の例えを見て流石だな~と感動しました。

納豆や梅など食べのを私に差し出し匂いを嗅がせ「くさいよ~」「すっぱいよ~」とリアクションを私がするのを喜んで無言でニコニコ何度も差し出します。反対に差し出すと嫌がったり、要求を言葉に出すのと出さないのがあるので、言葉をのせていこうかなと思います。
言葉に乗せていくことでこういうことも広がりになるでしょうか?
言葉がけが少ないのも多いのも嫌がるのでバランスに気をつけたいです。

「芸術活動、目的を持って能動的に行う活動」などこの記事は新しい発見でとても前向きになれました。

また自閉症の子の喜ぶ中間に位置する活動の例や広がる言葉ののせ方を知ることが出来たら嬉しいです。お忙しい中記事をありがとうございます。
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