虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

現代っ子 と 広汎性発達障がいの子 と 論理的に考える力 6

2011-09-22 15:35:03 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

言葉についての説明を加えるうちに、書き始めた当初のタイトルと内容がずれてきていることを

許してくださいね。

現代っ子 と 広汎性発達障がいの子 と 論理的に考える力 2

で力動感という言葉を使っています。

それについて、私が理解している範囲で説明させていただきますね。

力動感とはダニエル・N・スターンの概念で、

小林隆児先生の著書のなかでは、

形態、強度、動き、数、リズムなどといった人や物体の特徴が

包括的で無様相な知覚という特性で直接体験されるもの」という言葉で

説明されています。

力動感というのは、原初的知覚の代表的なもののひとつです。

次々、小難しげな名前を出してきて悪いのですが、

原初的知覚とは簡単にいうと、赤ちゃんの頃の知覚のあり方です。

 

機能分化が生じる前の赤ちゃんの知覚というのは、情動も運動も知覚も共時的に働いていて、

つまり、「気持ちいい」とか「悲しい」といった感情も、

身体を動かすことも、

「あれは固いな」「あれは小さいな」といった何かを感じとる知覚も

どれもこれもがいっしょくたにつながって体験されるのだそうです。

 

ですから、身体を動かしていると、自然に感情も揺さぶられて、目に見える世界も

動く前とは別のもののように変化しているのです。

 

わたしが原初的知覚について、「こういうことか」と深く納得がいったのは、

自閉症のトムくんと過ごしていた時です。

↓の記事にその様子がリンクしてあります。

自分の世界に没頭している自閉症スペクトラムの子とDIRプログラム

トムくんの動きは、どこで何をしているときも原初的知覚で世界と関わっているのが

感じられました。

 

『自閉症とことばの成り立ち』(小林隆児 ミネルウ゛ァ書房)に原初的知覚行動について次のような記述があります。

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自閉症の知覚行動としてよく知られているものとして、独特な視知覚行動がある。

対象を斜めから眺め、まるで銃で撃つ対象の照準を定める際に

われわれが行う独特な目の使い方とよく似ていることから

照準現象と称されているものである。

このような視知覚行動も彼らの原初的知覚行動として捉えることができると思われるが、

そこでは対象を単に静的に知覚するのではなく、自分の方に近づけたり、遠ざけたりしていることがわかる。

それはおそらく対象の動くさまを知覚することによって彼らの情動が揺さぶられているからではないかと推測される。

ここにも力動感といわれる原初的知覚様態の特徴を見て取ることが

必要であろう。

        『自閉症とことばの成り立ち』(小林隆児 ミネルウ゛ァ書房)

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広汎性発達障がいの子たちと遊ぶとき、

ひもで上げ下げするエレベーターや、

長い筒の中をミニカーやボールを転がす遊びなどをとても喜びます。

身体を動かすことと、物が動くさまと、わくわくする楽しい気持ちが、同時に

いっしょに遊んでいる人といっしょに体感することができますから。

さまざまな場面で、その子も気持ちが高揚し、何度もやりたがるような活動を見つけるように

していくと、遊びの幅が広がっていきます。

その時、原初的知覚について少し頭に入れておくことで、

遊びの環境を整えやすくなります。

原因や結果が目で見てわかるようにしたり、

推理がしやすいしかけにしておくと、論理的に考えていく会話の

きっかけを作ることもできます。

 

大人の私も、絵を描いているときには、力動感のようなものを

体験しているような気持ちがします。

色や線のなかに動きや感情を感じとっています。↓

 

 

 

 


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