虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

幼児教育の弊害について

2008-11-19 08:01:54 | 通常レッスン
先日、1歳10ヶ月の★くん、☆ちゃんのふたごちゃんのレッスンの時、
ふたごちゃんのお母さんからこんなお話をうかがいました。
「☆ちゃんは、漢字が大好きで、『猫』といった漢字も喜んで読むようになりました。
先日おばあちゃん家でそれを披露し、とても喜んでもらえました。はじめ、幼い子に漢字を教えたりすることには抵抗があったので、先生に☆ちゃんは漢字を識別したりすることがとても好きですよと指摘していただかなかったら、こうしたうれしい気持ちを味わうこともなかったと思うんですよ…」といった内容でした。

幼い子はパターン認識という認知の仕方でさまざまなことを
素早く喜んで覚えます。また、漢字やドッツカードを見せた結果、
漢字を読んだり計算したりといった効果は出ない子も
たくさんの複雑な情報を的確に処理していく知覚的なIQは高まるようです。

だったら幼児教育の弊害などと気にせず、
何でも教えていったらよいのではないか…?と感じるかもしれませんね。

私は、安易に幼児にさまざまな教育を施すことはとても危険だと感じています。
「台所育児」という言葉を聞いて、
幼いうちから台所仕事をさせると良いらしいから…と
適当に子どもに包丁を持たらとんでもないことになりますよね。

きちんとした注意点を頭に入れずに
幼児教室に通ったり、子どもにいろいろなことを教えたりすることは
それと同じようにとても危険なことなのです。

子どもの成長にとんでもない害をおよぼすかもしれません。

↑のふたごちゃんのお母さんには、
幼児の心身の発達に良い働きかけ方と
悪い働きかけ方をよく理解していただいた上で、漢字やドッツカードなども
家庭での遊びに取り入れてもらっているのです。

それではどんな場合、幼児教育による弊害が出るのでしょう?
いくつか私の考えを書かせていただきます。

脳の発達する順序を無視したために起こる弊害

3歳までの幼児の脳は、運動系脳番地と感覚系脳番地の成長が著しいです。
3歳くらいまでに、そのふたつの基本構造ができるそうです。
そのためモンテッソーリは「子どもは動きながら学ぶ」と
考え、多くの感覚教具や手指や身体の運動を通しての教育環境を整えることを
大切にしたのですね。

脳の発達には順序があるので、この時期に大人が
他の脳番地に働きかける教育にばかり力を入れると、
基礎工事が手抜きのまま建っている建物のような危うさを
子どもに持たせてしまいます。

子どもの好みによって、漢字や数を教える場合には、感覚系と運動系の発達とバランスがとれるよう注意が必要ですね。

ひとつの能力を偏って育てることで、学習障害になるとも言われています

ひとつの能力を育てることに力を入れすぎると、
その分野に関しては無駄なく最速に処理できるけれど、
柔軟に難しい問題や未知の問題にぶつかっていけない
「直線脳」という使い勝手の悪い脳に育ってしまうそうです。
また、乳幼児期にそうした偏った脳の育て方をすることで、
いらない使わないものを刈り取っていかねばならないときにうまくいかず、
それが人為的な学習障害の原因となっていると考えている研究者もいます。

親の気持ちの先取りをすることで、依存的で受動的な性質が育ちます

1歳~3歳という幼児は、
大人の指示で集団行動を取るというのはまだ難しい時期です。
何かするとき、落ち着けるように椅子を用意してあげるのと、お教室でみんなと椅子に座って何かをするのは、まったく別物です。

まだ子どもの心身の発達に準備ができていないことを
大人側の期待によって無理にやらせていると、
一見、良い子になったように見えて、自発性の発達を害してしまうことも
多いように思います。

また、そうした子どもの発達課題を無視した教育の場で、子どもの能力の優劣をはかるのは、百害あって一利なしですね。

子どもの発達は個性的です

↑のふたごちゃんも☆ちゃんは漢字に興味を持ちましたが、
★くんはしらんぷりでした。

そんな時、興味を持っていないこと=発達の遅れ
と捉えることは、幼児教育の弊害につながると思います。

子どもはそれぞれ個性的で、自分の発達の順序や速度を持っています。
★くんは漢字に興味を持たないけれど、感覚が優れている子で、
図形や数を、手指の感覚から学ぶことが好きな子でした。
子どもを表面的な出来不出来で見ずに、
どのような入力方法を好み、どのような発達の個性を持っているのか…
子どもが興味を持たない…ということからも見つけていくような
ていねいさが幼児教育には大切です。

幼児期にどんなに遅れているように見える子も、後から一気に成長することはよくあることです。しかし幼児教育をする中で親子関係が気まずくなったり、出来ない子という目で親が子どもをながめてしまうと、
それが原因で出来ない子になってしまう場合があります。

そういうの…苦手!乱暴に自分の考えで教育を施したい!!
…と感じる方は、
幼児ではなく自我が確立し、自己主張がしっかりできるようになった
子どもに教育する方が良いと思います。

幼児は繊細で、自分自身の成長のプログラムを持っているので、
それに沿いながら
環境を整えてくれる支援者を求めています。

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3 コメント

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Unknown (いけいけ)
2008-11-19 21:46:18
幼児教育をする前に親がしっかり勉強をしなきゃならないですよね。
最近はいろんな本を見てると、教育を考える前に子供が健康で元気に育っているだけで満足モードに入っちゃうこともあります(笑)
でも、子供もいずれ自立して自分で頑張らなければなりませんから、そのために親がしてあげれることはやっておいてあげたいものですね。


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Unknown ()
2008-11-20 08:59:07
いつも先生の記事を読んで色々考えます。
私も漢字を教えたりしてるのですが、
>感覚系と運動系の発達とバランスがとれるよう注意が必要
ほんとに大事だなぁと感じました。
息子はまだ高這いが始まらないのですが、ハイハイを促しながら遊びに学びを楽しく取り入れていくのがよさそうですね。
それと、「出来ない=向かない」「出来る=この分野で優れている」と直結して考えがちですが(私もです)その面ばかり見ずに様々な遊びを通して、まんべんなく脳番地を刺激するのが良いんですね。

あと昨日友人達と話しをしていて、進学校の教師をしている子が逆境に弱い子どもが増えたと言ってました。それも親の過干渉が原因で病んでいる子が多いと。
いくら知性が高くても驕らず慢心しない心を養うのと、親の手を介さなくても問題解決していくよう関わるのって大事ですね。
先生の息子さんのように自己肯定的で逆境に強い心を養われたというのは、非常に良い親子の関わりをしてこられたんだなぁと感じます。
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学習する順番はとても大事です。 (まるやま)
2012-06-18 12:18:41
学習するには順番があります。
まず、好き、嫌いを覚え、次に安心、満足を覚えて学習した内容を吸収、消化することができます。
この学習がきちんと出来ていない状態でも小脳等で反復学習で身につけることができます。
きちんとした順番で幼児教育したほうが子供のためになると思います。
乳児の時の泣くと困った顔をされたり、嫌いなことを嫌いだと言うと注意を受け、親はいつもイライラしていて、お金の心配ばかりして、両親は喧嘩ばかりする。そんな安心できない状態で育てた子供を幼児教育するときっと反復学習でしか身につかない子供にそだってしまうでしょう。素晴らしい右脳教育のつもりが脳全体の協調性を欠いた教育プログラムになってしまうでしょう。
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