虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

自閉っ子 と 社会性の発達 1

2012-07-17 13:06:15 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

今日は、

自閉っ子が、ファンタジーの世界から出て、お友だちとの遊びに興味を抱きだすとき 1

自閉っ子が、ファンタジーの世界から出て、お友だちとの遊びに興味を抱きだすとき 2

自閉っ子が、ファンタジーの世界から出て、お友だちとの遊びに興味を抱きだすとき 3

自閉っ子が、ファンタジーの世界から出て、お友だちとの遊びに興味を抱きだすとき 4

の記事で、揉めながらも少しずつ相手に対する興味を持ち始めていた●くんと☆くんの

1ヶ月ぶりのレッスンでした。

 

前回のレッスンでは、お互いに関心はあるもののぶつかってばかりいた●くんと☆くんですが、

今回は互いに助けあったり、相手を意識していつも以上のがんばりを見せたり、真似し合ったり、

会話したりと、

親しさが急に増したようでした。

親御さんたちからも、

微笑ましいふたりの姿を見て、

思わず笑顔がこぼれていました。

 

 

ふたりが急接近した最初のきっかけはビー玉でした。

 

教室に先に着いた●くんは、教室にあるのと同じ電車をお家から持ってきて、

連結させてほしいと言いました。

テープでペタッと貼り付けて、機嫌良く遊んでいたところ、

☆くんが到着しました。

前回のレッスンでは『連結』をめぐって

揉めてばかりだったふたり。

でも心配は無用だったようです。

☆くんに、「●くんね、お家に教室と同じ電車があるから

連結させたいなって持ってきてね、ひっつけたの」と説明すると、

☆くんからは、あっさりと「いいね~」という返事が返ってきました。

 

☆くんの頭はもっと別のもので占められていたようです。

次の瞬間、「先生、紙にさ、ピタゴラスイッチって書いてよ」と言うと、

「あのね、積み木をどんどんどんどんつないで、それからビー玉が転がっていくと、

ピタゴラスイッチって書いたやつが上がるんだよ」といった説明を延々とし始めました。

 

「そう、紙に書くのね。色画用紙用意しようか?」とたずねると、

「四角くていいんだよ」と☆くん。

わたしがオレンジ色の色画用紙を四角く切って、「ピタゴラスイッチ」と書いている間に

☆くんは残りの紙を切ったり貼ったりして、「望遠鏡とそれを見るところ」という作品を

こしらえていました。

解説を聞いていると、どうも展望台のようなもののようです。

すると、ひとりで電車で遊んでいた●くんが、「先生、幼稚園を作って」と言いました。

 

●くんが自分からわたしに何か頼んできたのにびっくりしました。

●くんは他人との関わり方がわからないため

殻に閉じこもっていることが多かったからです。

 

☆くんがわたしにあれこれ要望を出す様子を見て、

自分も言ってみたくなったようです。

「●くん、幼稚園ならあの棚の上に幼稚園や学校になるドールハウスがあるけどどう?」とたずねると、

●くんはニコニコしながらうなずきました。

●くんは幼稚園の横に幼稚園バスを置いて遊びだしました。

 

●くんは☆くんの影響を受け始めているな、真似っこはじめているな、と感じたので、

「●くん、☆くんがピタゴラスイッチって書いたみたいに

バスていって紙に書いてあげようか」とたずねると、

これにもうれしそうにうなずいていました。

☆くんも●くんのすることに関心があるようで、

「バスていのバスはカタカナで書かなきゃいけないよ」などとアドバイスしていました。

 

わたしが積み木をドミノのように並べて、☆くんのピタゴラスイッチ作りを手伝っていたときのこと、

☆くんがイライラした口調で、「奈緒美先生、ちがうよ。ビー玉がいるんだから、ビー玉だよ」と

言い、

「☆くん、ビー玉探してきてあげるからちょっと待って」と返事をしました。

するとひとり遊びに興じていた●くんが、「ハイ、ビー玉でしょ」と言いながら、

ビー玉がいっぱい入っている箱を差し出しました。

☆くんとわたしのやりとりを聞いていて、

近くにあったビー玉を渡すことを思いついたようなのです。

☆くんは照れながらも、「あ、り、が、と」とうれしそうでした。

 

☆くんがクレーン車のおもちゃの巻き取り部分で遊んでいたので、

ストローとひもで電車を手動で動かすことができる仕掛けを作って、

駅にすることにしました。

駅名をたずねると、「とよなかえきにして」と☆くん。

すると、●くんが自分も「とよなかえきって書いて」と頼んできました。

●くん、連結した電車が通る立派な駅をこしらえて、

そこに☆くんと同じ「とよなかえき」の札を貼って

上機嫌です。

●くんはこれまでずっと外の世界に全くといっていいほど

無関心だったのですが、

☆くんといっしょに過ごすようになって以来、

自分から他人との関わりやお出かけを望むように

なってきたそうです。

 

そういえば、●くんはこれまでならかなり長い間、独り言を言っていたのに、

今回は独り言がありませんでした。

オウム返しで返事をする癖も消えています。

途中で、静かに電車を動かしながら一人遊びをしている姿がありましたが、

とても自然で、途中で自分から☆くんの遊びに関わっていこうとする姿がありました。

 

次回に続きます。


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