●くんも☆くんも写真の電車が気に入っていました。
電車についているボタンを押すと、「電車がまいります。黄色い線まで下がってください~」という
アナウンスが流れます。
「黄色い線、黄色い線」と言いながらわたしがブロックを並べて
ハムスターをその後ろに置くと、●くんも真似てお気に入りのクリーム色のハムスターたちを
並べ始めました。
(写真はそれを見た☆くんがハムスター並べに参加していたところです)
この時、●くんが電子音や録音した声などへの反応がとてもいいことに気づきました。
●くんは「~しよう」と遊びに誘うと、「うん、うん」と上の空で返事をしていて、
遊びの見本をこちらが見せ始めると、背を向けて自分の遊びに没頭しだすことが多いのです。
「~しよう」と誘って、「~しよう」と返ってきても、
身体も頭もその言葉の指すことをする方向にスイッチが切り替わらない様子です。
ですからお家で●くんのお母さんがクーゲルバーンのようなビー玉を転がすおもちゃを用意して
も、まったく遊ばなかったそうなのです。
でも虹色教室のビー玉がぶつかると、「タタタタッタタ~ン♪」とメロディーが流れる装置を
ピタゴラスイッチ遊びに加えると、とても熱心にこの遊びを続けていました。
「何かした後で同じ電子音を聞ける」という状況が
●くんの散漫になりがちな注意をひとつの活動にとどめる助けとなってくれているようです。
電車についているアナウンスの声も、●くんが遊びの誘いにスムーズに参加するための
手助けとなっていたようです。
他の自閉っ子たちとの遊びでも同様のことを実感したことが何度かありました。
自閉っ子が『バランサープラス』というパソコンソフトで通常よりずっと高い能力をしめすことが多く、
認知能力を向上させる取り組みでも成果をあげやすかったということもひとつ。
このソフトは一問ごとに正解不正解がわかりやすい電子音とともに
目で確認できるように作られています。
どこにも「何となく」というあいまいなところがないんです。
すべて同じシンプルなルールで成り立っているこのソフトは、
自閉っ子のやる気を引き出して、達成感を味あわせてくれるようです。
●くんはレッスンへの参加はまだ3回目ですが、わたしといっしょに何かすることに
とても安心感を抱いてくれているようです。
ひとり遊びに興じているときも、常にわたしの手の届く範囲で遊ぶ姿がありました。
一方で☆くんは●くんのお母さんがとても気に入った様子です。絵を描いたり、何か作ったりするたびに、
●くんのお母さんに見せに行っています。
警戒心が強くて他人に対する強い防衛的な態度を取り続けてきた☆くんが
次第に人に対する興味や信頼する気持ちが高まっているようで
うれしい変化でした。
(↑ ☆くんが●くんのお母さんのところの食べ物のおもちゃを持っていって、
「どうぞ?」「どれがいりますか?」とたずねて遊んでいるところに
●くんも参加しはじめたところです。)
☆くんのお母さんからこんな話をうかがいました。
なんでも、☆くんのお母さんが珍しくゲーム機でRPGゲーム(かなり大きい子向けのゲームです)をしていて、
途中で急に用事ができたので、そのままにして席を立ったそうです。
しばらくして戻ってみると、☆くんは自分でコントローラーを操作して
「文字で出てくる選択肢」を選びながら、
さまざまな場所を訪問してアイテムを購入したり、会話を交わしたりする
作業を終えていたそうなのです。
初めての出来事で、そんなことができるとは思ってもみなくて
とてもびっくりしたそうです。
わたしも☆くんの知的な力にびっくりするとともに
☆くんがRPGのなかで、いろいろな人のところを訪問し
コミュニケーションを交わそうとしたという話から
☆くんの心の世界の広がりも感じました。
現実の遊びの世界でも、以前の☆くんは教室でわたしの注意を引き付けることにしか関心が
ありませんでしたが、今は新しいお友だちの●くんのすることがとっても気になったり、
何か作ったら●くんのお母さんに見せて褒めてもらいたがったりするようになっているのです。
今回、子供の善悪の判断がすべて母親の私になっているというご指摘、ものすごくずしりときました。本当にその通りでこのままではいけないと事あるごとに思い返して、口をはさむ前に一呼吸おくように意識しています。
出来事をさらりと終わらせない、くどいくらいに状況や気持ちを説明することも、いざしてみるとなんだか神妙な顔で聞いていたりして 一コマ、一コマ丁寧に接することの大切さを改めて思いました。
今回もありがとうございました。