えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

・絶妙に受け入れ難い

2021年11月27日 | コラム
 リモートワークが当たり前となり、かつて通勤に使っていた時間にぼんやりとテレビをつけていながら見出した番組が『ミラキュラス・レディバグ&シャノワール』だ。時間帯的には子供向けの変身ヒーローものでフランスと韓国の共同制作で、日本語版の吹き替えを東映アニメーションが担当している。当初は東映アニメーションが2Dアニメの制作を担当しており、インターネットには東映アニメーションの担当したらしいプロモーションムービーが残っているが諸事情で3Dアニメへの制作となり、韓国の制作会社が請け負って2015年にフランスなどで放映されながら日本ではファンの直接嘆願により2017年に放映されるという結構な大人の事情持ちの作品だ。本国では大ヒットしているらしい。

 大人の事情のほうにどうしても目を向けてしまうものの、話自体は少しずつ展開しながらシンプルな構成にほっとさせられる。一応裏事情はあるものの悪の親玉は堂々と開き直って人を操るという割と卑怯な手口で悪事を働くし、主人公のレディバグことマリエットと相棒のシャノワールことアドリアンは容赦なく悪事を働く悪党を成敗する。30分アニメを制作側がよく見ているのか、日曜朝のアニメに慣れていればお馴染みのテンポで話が進むので時間に応じて見たい場面だけを見るという芸当も可能だ。ちなみに主人公が女の子なのに相方が「てんとう虫」の妖精なのは、フランスのジンクスではてんとう虫が「幸運」の象徴という理由だ。対象的に相方のアドリアンの「黒猫」は「不幸」の象徴とされ、二人の力が物語の鍵ともなっている。

 大人が物語を見る時、どうしても物語に没入するよりも物語の形を見てしまいがちだが、本作は物語の形がそこそこ面白いと思う。同じくヒーローとして戦う味方が増えてもすぐ敵に回ったり、場合によっては何度も敵に回るので、誰が今週のヴィランとなるかが見どころでもある。ヴィランになる原因はお年頃の少年少女らしい悩みや挫折や失望なので、マリエットが期せずしてヴィランを増やしてしまうこともままある。それでも話のテンポが良いので次の週まで揉め事が引きずられることはほとんど無く、割り切って気ままに一話完結の話として見られる気軽さがありがたい。ただ、本国の視聴層らしいティーンや子供に対して、日本の同年代には少々ウケが難しそうだという気配はひしひし感じる。
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・緑の手にはなれない

2021年11月13日 | コラム
 植物と噛み合わない。水の加減が元々難しかったのだ、と慰められても小さな杉林のような苔玉が徐々に茶色く枯れて土色に崩れるまでを毎日眺めるのは心苦しかったし、花束が日に日に色褪せて床に乾いた葉を散らす様子も痛々しい。今世話を頼まれている名前の知らない青い葉っぱだけの植木と、肉厚の黄緑色の葉とピンク色のラッパのような小粒の花を咲かせる鉢植えをおっかなびっくりと世話している。

 葉と葉の間から渦を巻いて若い葉が顔を覗かせる。その間にも下の方では枯れた葉が取り忘れたズボンのタグのようにくっついたまま干からびて、強い風が吹いても上の広い葉に守られちっとも靡かない。噴水のように葉は茂る。元は花束の飾りだったそうだが、水に入れているうちに根が出てきたので土に植え替えた、と前の育て主は言っていた。その人は何事も育てるのがうまい。水から土に植え替えても植物はおとなしく従い、その人の手の赴くままに従って育っている。私は堂々と枯れそうな葉や芽を摘むことも怖くてできず、くちばしのついた計量カップで土に水が沁み込むまで水をやることしかできない。

 もう一つの鉢植えは既に枯れた花が摘み取られてほとんどが枝だけになっているものの、土に近いところからじみじみと茶色くなっているようで、それでも太陽に当てている間は気持ちよさそうに見えるが実のところはわからない。枯れるか青々と春を迎えるか、冬のさじ加減を抱えて途方にくれている。
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