日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

金正恩体制の維持のために核は不必要か

2018年05月05日 09時26分27秒 | 日々雑感
 6月初めまでに開催予定の米朝会談に先立ち、水面下でいろいろな動きがあるようだ。4月始めの報道によると、北朝鮮が米政府に対し、”朝鮮半島の非核化”について協議する意思があると伝えていたようだ。北朝鮮の非核化と言わずに朝鮮半島の非核化と言っているとのことであるが、こんな文言で米政府が喜んでいるとすれば、トランプ大統領の焦りが伺える。先日行われた朝鮮半島における南北首脳会談においても、金正恩委員長は核放棄に言及したようだが、前提には金正恩体制の維持がある。

 しかし、これまで何回か核放棄の言及があったが、結局国際社会が騙され続けてきた経緯から、それを信用しないコメントが主流である。全く同感であり、核開発やICBMの開発を終了したと言っても、小型化、信頼性向上等、開発課題はいくらでもあり、単なる時間稼ぎと思うのが一般世論である。

 しかし、最近の米朝首脳会談の事前協議で、北朝鮮が米国の求める手法により核放棄に応ずる姿勢を示していると米朝関係筋が明らかにしたようだ。しかし、金正恩体制の維持に関しては変化ない様だ。

 万が一、本当に核廃棄をして、北朝鮮が経済封鎖を解かれ、国民が経済的に豊かになってきた時、金独裁体制を今まで通り維持できるかというと極めて困難と思われる。経済的な豊かさは、国民の間に世界の情報が入り、独裁体制の理不尽さに気が付くであろうからである。

 金正恩の核兵器放棄に抵抗する理由の一つにリビアの例がある。リビアは1980年代から核開発を進めていたが、2003年にカダフィ大佐が核放棄を宣言した。しかし、その後国内の民主化運動が盛んになり、西側諸国が支援する反政府軍に追われたカダフィ大佐は2011年に拘束、殺害された。この結果を知った金正恩は核の保持の必要性を確信したであろう。

 しかし、経済封鎖の影響が身に染みたのか、核廃棄しても現体制を維持できると確信できれば、核放棄も選択肢に入って来たと考えることが出来る。

 中国は世界第2の経済大国になったが、習近平独裁体制はほぼ確立されたと思われる。中国にとって北朝鮮は民主主義国家との緩衝地帯であり、金正恩独裁体制は中国においては都合よく、北朝鮮の民主化には反対であり、独裁体制を支持するだろう。

 南北会談に先立って行われた中朝首脳会談において、北朝鮮の対話路線を国際社会に主張してきた中国は、北朝鮮の体制維持を確約したのではないだろうか。習氏は金氏に独裁体制のノウハウを教え、金正恩は独裁体制の維持に自信を持ち、苦労して開発してきた核兵器を放棄しても良いと考え出したのかも知れない。

 経済発展しながら独裁体制を維持している国家は中国の他、核を保有しないベトナムやタイ等、数多い。それらの国における体制維持のための一つの方法は徹底した言論統制である。

 また、最近の報道によれば、中国の国家安全省がインターネット上に市民からの通報サイトを開いたそうだ。通報の対象は、外国人や組織に違法に国家機密を提供、・国家機密を含む文書や資料を所持、・デマを広げ、国家の安全を脅かす、・スパイ行為に必要な機材を違法に所持・使用、・団体や企業、宗教団体を使って国家の安全を脅かす、といった行動を示すそうで、密告体制が一層強化されたようである。

 2011年に始まったアラブの春と称せられる民主化運動は、市民が政治の主役となる新時代の到来を告げるものとして歓迎されたが、民主化運動は挫折し、中東の状況は以前よりも確実に悪くなっており、独裁体制が復活している。

 金正恩は、このような国々の現状を見、独立体制の利点を再認識し、核を有さなくても独裁体制で国家が維持できるとの確信を得たのかも知れない。2018.05.05(犬賀 大好-439)

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