日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

異次元金融緩和の泥沼化

2018年05月09日 09時40分18秒 | 日々雑感
 日本銀行は4月27日の金融政策決定会合で、経済・物価の見通しの項から2019年度ごろ達成時期としてきた物価上昇率2%の文言を削除し、異次元緩和はこれまで通り続行するとの方針を決めたそうだ。これで、国債発行に対する危機感覚麻痺は一層強まり、貧富の格差は更に大きくなり、社会の分断は深まると思われる。異次元金融緩和は止めるに止められず、泥沼状態に陥った感である。

 現在日本経済は絶好調とのことで、日銀はこの状態を維持するために、異次元金融緩和を続行するようである。目標達成時期の削除の理由は、これまで何回か達成時期を明示したのに達成できなかったこともあり、再度の未達は日銀信頼の失墜を確定的にするからである。

 この目標達成は現時点では当分困難と見るエコノミストが多いが、万が一目標達成したとなると、異次元緩和の終了を意味し、これはこれで大問題となる。すなわち、日銀総裁が ”2019年度ごろには出口を検討する” とちょっと触れただけでも市場は円高になるなど、緩和縮小の気配は市場を混乱させる。本当に終了ともなれば、緩和に慣れ切った市場は大混乱するであろう。

 政府としてはそれを恐れ、特に今年9月に総裁選を控えた安倍首相は恐れており、これを黒田総裁は忖度したのか、あるいは続行するよう言われたのであろう。

 一方、金融緩和の副作用は色々議論されている。日銀は市場に出回る大半の国債を買い続けることにより景気を下支えしてきた。そのために日銀が購入してきた国債は約450兆円に上り、発行残高の4割超に達し、法律が禁止している財政ファイナンス状態に陥っている。

 上場投資信託(ETF)の保有高も約24兆円と市場に出回る株式の4%弱を占め、日本の主要な企業は国有企業もどきになっている。景気後退は、政府にとっても日銀にとっても悪夢である。

 超低金利政策も企業の設備投資と結びつかず、消費喚起となっていない。また、超低金利の長期化は金融機関の収益を圧迫している。

 日銀が貯め込んだ国債を売り出すと市場が混乱するため、満期まで保有せざるを得ないとのことだ。現在保有国債から得る利益は銀行に払う当座預金金利を上回り、日銀の財政状態は安泰のようであるが、金融緩和の出口では当座預金金利が上がり赤字になるそうで、これも金融緩和を止められない理由であろう。

 このように副作用が現れ始めていると言うのに、金融緩和の一層の強化を主張する日銀金融政策決定委員もいるとのことである。すなわち片岡剛士審議委員は従来通りの続行に生温いと反対しているようだ。

 片岡氏は2018年度中の目標達成を掲げ、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう長期国債の買い入れを行うことが適当と主張しているようだ。この主張の理屈をよく理解できないが、中止の為の反対ではなく、これまで通りの緩和では甘過ぎるとの主張である。

 目標の達成が出来ないのは、従来のトリクルダウン政策が失敗だったことであり、金融緩和の利益が一部にしか及んでいないからであるが、これに対する反省・対策が聞こえてこない。

 兎も角、日銀の異次元金融政策は完全に行き詰っていると感ずるが、中止すれば市場の大混乱を招き、続行すればますます副作用が大きくなる。行くも地獄、戻るも地獄の泥沼状態に陥っていると経済素人は感ずるが、それにしても政治家、エコニミストは余り問題にしていないようだ。経済素人の単なる思い過ごしでなければよいが。2018.05.09(犬賀 大好-440)

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