中川輝光の眼

アトリエから見えてくる情景
paraparaart.com ArtDirector

ダンテの『神曲』には、もうひとつの『聖書物語』が隠されている。

2017-01-09 | 美術を考える

ボッティチェルリの『ビーナス誕生』は、華麗な作品です。

しかしながら、わたしたちはボッティチェルリが晩年に描いた100枚の『神曲』を知らない。

ボッティチェルリは、ダンテの『神曲』に何を見ていたのか・・・。

その謎を解くキーワードは『天使』、移ろいやすくそれでいてイメージしやすい存在・・・。

天使は、生身の人(世俗の人)ではありません。
マリアもキリストも教会に住む聖職者たちも生身の人です。
繰り返し現れて消えていく天使は、彼らをそれとなく導いてはいますが、そう言った生身の人ではありません。
天使やそれらに準ずる者たちは、幻のような人として描かれています。
時には、嘘を焙りだす鏡のような役割を担う存在でもあるのです。

レオナルドは、マグダラのマリアにその役割を担わせたのかも知れません。

ダンテの『神曲』では、亡きベアトリーチェに天国への案内をさせたのです。
ここでは、もうひとつの『聖書物語』が語られているのかも知れません。
100編の詩が、人のあるべき姿を、天使を道案内に明瞭なイメージとして語っています。
これは叙事詩であると同時に、真理への道しるべになっているのかも知れません。