筑摩書房
2011年5月 初版第1刷発行
309頁
阪神大震災前夜
大阪、釜ヶ崎で働く青年、甲坂礼司は小説を書いて欲しいと頼まれる
依頼主はホテルチェーンのオーナー、二宮啓太で、妻の結子を主人公に彼女の半生を描いて欲しいらしい
金持ちの道楽に付き合って適当に書いて謝礼をもらえばよい、と軽い考えで請けたのだが、どうやら背景には政治絡み、金銭絡みの何かがあるらしい
大阪で社会の底辺に暮らす人々を泥臭く描いた作品では西加奈子さんを多く読んでおり、どうしても比較してしまって、森さんの個性を掴み切れませんでした
二宮の後ろにいる人物や政治的背景への踏込がもうひとつ
礼司に小説書きのバイト話を持ち込んだ大学生が、新興宗教にのめり込んでいき家族を捨て出家、その後阪神大震災の体験から一般社会に戻ってきたらしいのですが、彼の人生を無理やり大きな出来事に絡ませてインパクトを与えている割には、内容が貧しい
礼司と結子の関係が深くなっていくのは当然の成り行きだとは思うのですが、礼司の心理描写がもうひとつ把握出来ませんでした
心の奥深くの苦しみ、悩みを吐露し分かち合う礼司と結子の未来は貧しくても明るいものになるはずだったのに大震災が…
このところ数冊、森さんを読みましたが、100%受容れOKな作品には出会えませんでした
残念です
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