有森裕子の銅メダル
有森さん、わたしは金や銀よりも赤がね色の銅が好きです 松井多絵子
アトランタオリンピックで有森裕子は銅メダルだった。しかしさほど祝福されなかった。バルセロナ五輪で銀メダルだった彼女に私たちは金メダルをと願っていた。彼女こそ金メダルをどんなにか欲しかったことだろう。2位の次は1位を、ぜひ1位をと願う。しかし世界各国の選ばれた選手が競うオリンピックで3位になるとはスゴイ。有森裕子は体育系的ではなく、楚々とした女、よく銅メダルを獲得しましたね、という思いで詠んだ私の古い歌である。
1位は金、2位は銀、3位は銅のメダル、何を基準に決められたのか、私は金や銀よりも銅が好きだ。特にペンダントやブローチは銅がいい。銅版に彫られた絵柄には物語がある。金や銀は光り過ぎて騒がしい。服を引き立てない場合が多い。銅の装身具は落ち着いている。古い服にあしらうと骨董品めいて、服も見栄えがするような気がする。
有森裕子は1966年12月17日生まれ、49歳、岡山出身、身長165、体重48k
1999年マラソンは、2時間26分39秒。いま独身らしい。これは検索による情報であり私は彼女を知らない。たぶん観葉植物に囲まれた部屋が似合う。空色のトレーナーを着て赤がね色のソファーに座り、いま珈琲を飲みながら新聞を読んでいる。壁には山あり川ありの銅版画、などと私は勝手に想像する。あの銅メダルは今どこにあるのだろうか。
8月8日 松井多絵子
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「ツナ缶の油のように春の風邪」