えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

ときには忍者に

2016-08-31 09:35:55 | 歌う

            ・・・ ときには忍者に ・・・

 ♠ 川沿いの柳の道はわたくしを忍者にしていたコンビニに来るまで

 東京・お台場の日本科学未来館でいま「忍者展」を開催している。館長の毛利衛は宇宙飛行士。スペースシャトルでは打ち上げ後8分ほどで無重力状態になる。地上では重力がかかっていたことを実感する。忍者は重力を意識して効率的に使っていたのだと毛利衛さんは思うそうである。

 江戸時代にまとめられた「万川集海」などの忍術書や口伝で今に伝わる忍者の知恵や技が紹介されている。外出の前日など天気が気になる。「明日は曇りのち晴れ所により雨」などという曖昧な予報より忍者の知恵のほうが頼れるかもしれない。

 ♦ 朝焼けは3日以内に雨                                               春や秋は移動性高気圧と低気圧が交互に来る。朝焼けの後は西から雨になることが多い。

 ♦ 夕焼けの翌日は天気が良い
天気は西から東へ変化する。西の空は 「未来の空」

 ♦ 太陽に輪がかかれば雨
輪になる雲は巻雲や巻層雲と呼ばれ低気圧が来る前兆。

 ♦ 星がいつもよりまたたいている時は3日以内に大風
上空に吹く風が強いと大気が揺らぎ、星がまたたいて見える。上空の大気は、太陽エネルギーであたためられた地表との温度差で起こる対流によって降りてくるので、やがて地上も大風となる。、 

 「忍者展」の入場者は10万人を超えた。夏休みの子供たちが多かったらしい。開催は10月10日まで。10月25日~2017年1月9日まで三重県総合博物館

 

      ☀ 猛暑にも慣れてきしとき8月と別れる恋を失うように 

                   8月尽日  松井多絵子                      

 


池田はるみ歌集の『正座』

2016-08-30 09:29:08 | 歌う

            池田はるみ歌集の『正座』

 『しろい街の、その骨の体温の』 これは芥川賞を受賞した村田沙耶香の小説の題名である。長い題名の本が多いが池田はるみ第6歌集は 『正座』の二字。帯文に <正座することの少なくなったわたしたち日本人に、そっと手渡される原風景のような歌の数々>

 ♥ くらやみにぬつと寄られしここちなる六十代も半ばをすぎぬ

 池田はるみも還暦をすぎてしまったのかと、あらためて驚く。はじめて彼女に会ったのは20年以上前である。すでに短歌研究新人賞を受賞していた。白いスーツの似合う素敵な女性。都会的で洗練された彼女が関西弁を駆使して詠む。「相撲」も詠む。そのミスマッチぶりも魅力だった。還暦は定年退職など人生の終末への入り口だ。「くらやみにぬっと寄られる」などと、おもろい表現だが、齢を重ねる怖さの潜む歌である。

 ♥ これの世に分け入つて来た午前二時をとこの赤子あなたようこそ

 あとがきで 「昔ひとりの息子を産みました。ひとりの息子から三人のあたらしい命をさすかりました。わたしはそれを「まるもうけ」と呼んで、わたしの人生のいちばんありがたいものとしていただきました」。「まるもうけ」とは商売で使われる言葉だが作者の喜びや感謝が私にストレーとに伝わってくる。

 ♥ 原発はメルトダウンしていると遠き木霊のやうにぞ聞ける

 ♥ つきたての宮城の米を食べてゐる二十二年度産平和な頃の

 歌集『正座』には2010年から5年間の作品が収められている。3・11の作品も多い。宮城米を食べながら大地震を詠む。生活に密着した歌に共感する。この秋のはじめての梨を剥きながら 池田はるみの剥く梨を私はのほおんと見ていた。

 ♥ すがたよき梨は剥かれるまろまろと肩脱ぐやうな白さを見せて

 

池田はるみ様

 梨の次は柿ですか。貴女のおいしい歌を食べて私は更に肥ってしまいますよ。

                           8月30日  松井多絵子

    


イルカ&にんげん

2016-08-29 09:27:55 | 歌う

              イルカ&にんげん

♥ 調教師がイルカを抱き放つまでラブシーンのごと見つめていたり  松井多絵子

 イルカの祖先は4本足で陸上生活していたらしいという記事を読んでから、私はイルカのことが気になるようになった。漢字で「海豚」と辞書に書かれているが、体長2・5メートル、すらりとしている。ヒレと胸ビレだけ骨があり呼吸は肺でする。体温は高い、子供は胎児で生まれる。脳は大きい。観光地のプールで、若い女調教師がイルカに餌を見せてをジャンプさせ、抱きしめる様はまるでラブシーンだ。3度見たことがあり私もイルカを抱きしめてみたくなったが、まだ叶わないままである。

 ハワイではイルカと泳ぐ体験ツアーが日本人観光客にも人気だが、今後はできなくなる可能性もある。ハワイ諸島の周囲約3・7キロの海域などで、イルカのほうから人や船に寄ってきたりする場合など一部の例外を除き、接近を禁止するらしい。

 イルカは夜間に沖に出て小魚などを取り、昼間は沿岸に戻って休む習性がある。ハワイでは、日中にイルカに近づく観光客が増えており。イルカが健康を害する怖れが高まったいたらしい。イルカと泳ぐツアーは昔から続く観光の目玉の一つ。地元には複数の案内業があり、観光客をボートでイルカのいる海域に連れて行き、シュノーケンリングなどでそばを泳ぐことができる。(8月27日朝日夕刊より)

 地上には人間を襲うコワイ動物が多い。もしイルカが陸上で暮していたら、人間と仲良くなれるかもしれない。海の生きものになってしまったのは残念だ。夜に活躍するとは夜型人間の私には相性がいい。知能も発達しているらしいからイルカと暮らしたら何かと助けてもらえる。でも共に暮らすにはイルカの部屋は6畳の水槽?しかも海水の?食糧は何十キロもの小魚?無理ですね。晩夏の昼の夢より覚めて空は海のように広がっている。

                  8月29日  松井多絵子

          

 


残暑に「おでん」を

2016-08-26 09:26:25 | 歌う

               残暑に「おでん」を

♠ 電子レンジ5分で大根煮えている母の味とは異なる「おでん」  松井多絵子

 冬のご馳走のおでんがコンビニでは夏も売れているらしい。冷やして食べるのか。冷房の部屋で熱々の「おでん」がおいしいのか。猛暑で疲れた胃が洋食よりもさっぱりした「おでん」を求めているのか、おでんの歴史は古く、室町時代に、といわれている。豆腐やこんにゃくを串にさして焼いた田楽がおでんの始まり、魚好きな日本人が練り物のちくわなどを作り、鍋物の「おでん」になったらしい。今では、朝から大根の厚切りを弱火で長時間煮なくてもレンジですぐ柔らかくなるが、、。

 昨日の☀新聞に 「残暑が続いているのにコンビニ各社が「おでん」販売に本腰を入れはじめた。ファミリーマートは今シーズンはつゆと具を刷新。シューマイをすり身で包んで揚げた「シュウマイ巻」など、ローソンは「炭火焼き鳥ささみ串」など セブンイレブンは「味しみ大根」など。

 コンビニにとり、おでんは利益率が高く、客も呼びこめる秋冬の主力商品。例年、夜に気温が下がり始める8月下旬から売れ、9~10月にピークとなる。食卓の「おかず」になるほどあらたな需要も出ている。昨シーズンに比べ5割増売上高を目指すコンビニもあるらしい。

 女性の活躍が盛んになるほどコンビニは混むかもしれない。料理にかける時間が少なくなる、しかしコンビニ弁当では味気ない。袋詰めの「おでん」は大根、こんにゃく、昆布、厚揚げ、ゆで卵、がんもどき など素朴な食材、いかにも家庭料理である。酒のおつまみにもなる。「コンビニ・おでん」を食卓には、土鍋に入れて。熱々の「おでん」を。

    ♠ いつよりか厨のなかに見当たらぬ共に嫁ぎてきしあの土鍋

                       8月26日  松井多絵子 

 

 俳句情報・新刊句集

✿ 大牧広句集 『地平』 「港」主宰の第9句集 KADOKAWA・本体2700円 

       無学なれどもきっぱりと花仰ぐ

✿ 松下カロ句集 『白鳥句集』 深夜草書社・本体2000円

       男死に白鳥となる嘘を愛す               

 


俳人・井出野浩貴の森

2016-08-25 09:37:30 | 歌う

              俳人・井出野浩貴の森

 昨日☀あるきだす言葉たち 「森へ」 

 あらためて「森」と「林」の違いをおもう。岩波現代短歌辞典によれば、陽射しが地表に届くのが「林」であり、樹木が茂り陽光が遮られる場所を深みに抱くのが「森」。神社や祠を内に含むことが多く、奥深く豊かなイメージ、林はどこか荒涼とした空間をおもわせる。私は森のほうが好き。木々が物語を聞かせてくれるような気がする。

 井出野浩貴は1965年埼玉県生まれ。「知音」同人。2014年句集『驢馬つれて』(ふらんす堂)により、俳人協会新人賞受賞。川口市芸術奨励賞受賞。

       電車待つことも愉しき夏休み

 あるきだす言葉たち 連作「森へ」の第1句である。夏休みの外出で電車を待っている時はイライラすることもない。仕事がらも時間の呪縛からも解放された愉しさ。

       球場の階段狭き雷雨かな

 野外の球場で観戦している時に雷雨、球場の階段は雨から逃れる人びとでラッシュ。球場は広大だ。それに比べて階段の狭さに不意に気づく作者は。

       昼寝せり翼も鰭も失ひて

 夏の午後は疲れる。読むのも詠むのもやめて昼寝をする俳人・井出野浩貴。翼を失った鳥のように、鰭を失った魚のように。夢をみることもなかったのか。 

       夏蝶にかどはかさるるごと森へ

 「かどはかさるる」を「拐はかさるる」と表記を漢字にすると不穏な句になる。黒揚羽ではなく夏蝶が句を明るくしている。微睡みのなかの森だろうか。12句のなかから私の好きな4句をとりあげた。私も蝶と共に森へ行きたい。

                8月25日   松井多絵子