ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

動画コンテンツ配信・映像ダウンロードの課題総括【①動作環境・ネットワーク環境】

2009年06月25日 | コンテンツビジネス
動画コンテンツ配信・映像ダウンロードの課題総括【①動作環境・ネットワーク環境】

かれこれADSL普及期から映像配信ビジネスに携わってきたのだけれど、いよいよ卒業ということもあって、1度、このビジネスについての課題などを総括しておきたいと思う。映像配信・コンテンツ配信などというと何かにつれ、「魅力的なコンテンツがあれば成功するはずだ」あるいは「うまくいっていないのはコンテンツが不足しているからだ」といった言い方がされる。しかしこれまでの経験を踏まえて言わせてもらうなら、「コンテンツ」に全ての原因を帰せられるほど単純ではない。それは「成功のための要件」かもしれないが、「失敗を回避するための要件」も必要なのだ。

「成功は偶然だが失敗は必然である」

どんなに計算されたとしてもコンテンツが面白いか、またうまく受け入れられるかは時の運だ。だから僕らは努力し、いい結果がもたらされることを信じるしかない。しかし成功への確率を高めるためにも、失敗に繋がりそうな要件に対して、問題発覚の前に回避策を講じることはできる。

そういった観点から、動画配信・コンテンツ配信ビジネスの(解決が必要な)課題を以下の6つのブロックにわけて整理しておきたい。これを見て、今後、このビジネスに携わる人の一助となれば、と思う。

図 コンテンツ配信における課題ブロック


【①動作環境・ネットワーク環境】

これはモバイル公式サービスと比べてもらうと非常によく分かるのだけれど、PC、インターネットを利用したサービスというのは、水平統合モデルがベースとなっていることもあって、ユーザーの利用環境がバラバラになることが多い。そしてそうしたことが、特に映像配信の分野においては、トラブルになることが多い。

ここでは「①-1 ネットワーク環境」、「①-2 PC環境」の2つについて整理したい。

「①-1 ネットワーク環境」の課題というのは、ブロードバンド環境として安定した品質をサーバ~PC間で実現できるか、という問題だ。僕がこのビジネスに関わった当時は、NTTの局舎からちょっと離れるとADSLでも300k~500Kといった具合で、まともにストリーミング映像を楽しめる環境ではなかった。それがADSLの高度化やフレッツ光の普及にともなってネットワーク帯域による問題というのは少なくなってきているのではないかと思う。

とはいえ、宅内に入れば無線LANが導入されており、最大速度はストリーミング映像を受信するためには十分だけれども、瞬間的には非常に不安定になりかねないという状況は少なくない。FLVやダウンロード再生のような形式であれば多少の不安定さにも対応できるものの、WMVなどのストリーミング配信ではこうしたネットワークの不安定さは映像再生に直結する。

ありていに言えば、金を払ってまで見たいとは思わないのだ。

ましてルータやセキュリティソフトなどで、映像が遮断されるということも少なくない。そうなると一般のユーザー自身が何をしたらいいのかわからないし、手間が多ければ当然「別に利用しなくてもいいや」となってしまう。ユーザーの心理的負担にならないように、PCからサーバまでの間のネットワーク環境をどのように安定化させるのか、そうした対策が問われることになる。

また今後、想定される問題としては、IPV6への移行に伴う問題、設定変更、ルータの対応の有無、またIPv6アプリケーションである、QOSやマルチキャストへの対応というものがある。これらが可能になれば映像配信ビジネスとしての可能性は広がるものの、ユーザー側の導入コストという点では簡単にいかないだろう。

同じことはPC環境にも言える。

MAC/WindowsというOSの違いはまだその違いが分かりやすい分、「Winでしかこのサービスは利用できない」といっても、ユーザーも納得しやすいだろうが、CPUのスペックの違い、HD容量、WMPのバージョン、プラグインの有無など、PCではサービスを利用できる人と利用できない人の区分が非常につきずらい。更にいえば、CPU、OSのバージョン、WMPのバージョンが同じでHDの空容量も十分にあるといった場合でも、そのユーザーがインストールしている他のアプリケーションの関係やセキュリティソフトの設定の関係で利用できる/利用できないが分かれる場合がある。

こうなると実際にサービスを試してみるまで利用できるかどうかはわからなくなるし、そのサポートをするにも確認する項目が多すぎて手間隙がかかることが多い。こうなると誰もが簡単に利用できるということではなくなってしまう。心理的な負荷が高くなる。

これらの問題、コンテンツを利用する際のプラットフォーム的な要素をモバイル公式サービスであれば、キャリアが保証している。そこにはPCインターネットのような自由度が少ない分、「標準化」「共通化」が徹底されており、安定したサービスやコンテンツの提供ができるような土壌があるのだ。

本来であれば、こうしたプラットフォームの整備をマイクロソフトなり、ソフトウェアベンダーなり、NTTのようなキャリアなり、ISPなりが保障できればよかったのだろうが、残念ながら現状はそれぞれがそれぞれの取り組みの中で行っているというのが現実だ。

ユーザーへの心理的負荷を与えずにサービスを提供するための環境・プラットフォームを整備すること、このことは映像配信ビジネスを成立させるための条件の一つだろう。


(参考)
モバイル分野の日本型ビジネスモデルは何故、再評価を受けているのか - ビールを飲みながら考えてみた…


■動画コンテンツ配信・映像ダウンロードの課題総括■
【①動作環境・ネットワーク環境】
【②配信コスト】
【③コンテンツ】
【④集客・顧客とのリレーションシップ】
【⑤課金手段】
【⑥サイト】
【⑦最後に-何故、われわれは成功していないのか-】



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