ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

動画コンテンツ配信・映像ダウンロードの課題総括【⑥サイト】

2009年07月01日 | コンテンツビジネス
一口に「サイト」といってもその課題は多様に存在する。ここではあくまで「映像配信」という切り口から、特に注意が必要な問題「商品設計」と「画面設計」についてまとめておきたい。

図 コンテンツ配信における課題ブロック



⑥-1 商品設計の難しさ

レンタルビデオに行くのが面倒だ。見たいときに見たい番組が見れるようにして欲しい。ある意味、映像配信ビジネスに求められる要件は単純だ。では、あなたが見たい映像とはものだろう。映画、「24」のような海外ドラマ、音楽のライブ映像、ビデオクリップ、スポーツの生中継…いろいろなジャンルがあるだろうが、ここでは置いておこう。例えば「映画」はその映画単体で完結したコンテンツだ。もちろん「○○○の続編」という場合もあるが、それでも1本1本で完結している。これに対して海外ドラマは複数の話で1つのストーリーを構成しており、場合によってはそれを1つのシリーズとして扱うこともある。

映画 タイトル:ザ・センチネル/陰謀の星条旗
海外ドラマ シリーズ名:「24」 タイトル:「24」シーズン2 話:第1話

となる。つまりシステム的な面からすると、管理するメタデータの項目数が異なってくる。これはこれだけではない。動画配信サイトを見てもらえば分かると思うが、このほかに以下のような項目を管理する必要がある。

配信レート:500Kbps/1Mbps/3Mbps
配信形式:ストリーミング/ダウンロード
販売形式:レンタル/買取
商品形式:単品/パック/月額サブスクリプション
販売主体:販売主体/課金接続
価格:自由設定
ジャンル:自由設定

仮に映画用の商品設計をするなら、商品情報は以下のようになるだろう。

シリーズ名:なし
タイトル名:ハンコック
商品名:ハンコック (タイトル名と同じ)
話:なし
配信レート:1Mbps/3Mbps
商品形式:ストリーミング
商品形式:レンタル(7日間)
販売形式:単品
販売主体:販売主体
価格:300円
ジャンル:アクション

これがドラマの場合、

シリーズ名:24
タイトル名:「24」シーズン3
商品名:「24」シーズン3 1話から2話パック
話:2話
配信レート:1Mbps/3Mbps
商品形式:パック
配信形式:ストリーミング
販売主体:販売主体
価格:300円
ジャンル:アクション

といった形になる。これらの要素を実際にはサイトのカタログページ上で表現しなくてはならない。これは当たり前のことだが、それが大変なのだ。

例えば同じコンテンツでありながら、ダウンロードのレンタル型とストリーミングのレンタル型が混在するかもしれないし、ストリーミングのレンタル型と買切型ダウンロードというパターンもあるだろう。そうなれば当然、価格もも変わることになる。

商品名:ハンコック
ストリーミング・レンタル型:300円/7日間
ダウンロード・買切型:2,980円

これだけ値段が違うと「間違って購入した」では済まされない。ユーザーに正しく適切に伝えなければならない。

またこういうケースもある。

シリーズ名:北斗の拳
商品名①:北斗の拳 1話
価格①:100円/日

商品名②:北斗の拳 5話パック
価格②:400円/7日間

商品名③:北斗の拳 全話(109話)パック
価格③:5000円/45日間

あるいは

シリーズ:大前研一ライブ
商品名①:大前研一ライブ 6月28日号 ※ 毎週追加となっている
価格①:3,000円/2週間

商品名②:大前研一ライブ 月額パック ※ 月内で配信されているものが全て見れる
価格②:10,000円/月


こうなるとライフスタイルや1話あたりの単価を計算しないとどれが得なのかわからない。行動経済学の法則に従うならば、結論は「購入しない」ということになる。一口に動画配信といっても、コンテンツの種類と商品パターンによって様々な形式が考えられるのだ。

ではどのような表現・画面設計を行えばいいのだろうか。

「⑥-2 画面設計の課題」

サイトデザインを考慮するにあたっては、「テンプレート」化されたページと「(コンテンツに応じて)カスタマイズ」されたページのどちらを採用するのかを考えねばならない。カスタマイズされたページとすることのメリットは、もちろんコンテンツ(商材)の魅力を伝えやすいことだ。ドラマであればその主人公たちの関係図を掲載したり、アニメであれば敵対勢力との「勢力図」などを掲載したり。ただしここには当然稼動がかかることになる。

これに対してテンプレートを利用することのメリットは「省力化」と「わかりやすさ」だ。

省力化については特に説明も要らないだろう。「わかりやすさ」とは何か。

様々な商品に対して、均一の導線を確保することができればお客さんは迷うことがないだろう。これは導線だけの問題ではない。価格表示、表現が統一されていれば、お客さんがその商品の条件などを理解しやすくなる。商品の提供パターンを制約できれば、お客さんも検討しやすくなる。お客さんの理解が深まれば当然、ユーザーからの問い合わせ件数・時間は減るだろう。これが「わかりやすさ」というものだ。

しかしこれらを完全に統一することは難しいだろう。

それは上記で述べたように、コンテンツの種類によって商品設計が異なること、例え商品の提供パターンを減らしたとしても限界があるだろうからだ。またエンタメ系のコンテンツと学習系のコンテンツではお客さんに対して訴求するポイント・項目が異なる。学習系は学習系で全く異なるサイトにならざろうえない。

どのように汎用性が高くかつ魅力的なテンプレートを作成するか、またどの程度のカスタマイズを許容するのか。そのあたりのバランスが難しいのだ。

またウェブ的な技術からいえば、こうした静的な要素で構成されたページは(見みすさは別として)必ずしもユーザーの心をつかむわけではない。時にはデザインセンスを無視したテキストで表示された「キャッチー」に人々は反応し、レビューやTBのようなユーザー自身の「声」を反映させたページやタグなどユーザー自身が自由に整理できることが、ユーザーの心をつかむ場合もあるのだ。

カタログとしての要素とそうしたユーザーとのコミュニケーションをどう実現していくかのバランスもまたこれからの課題だろう。



■動画コンテンツ配信・映像ダウンロードの課題総括■
【①動作環境・ネットワーク環境】
【②配信コスト】
【③コンテンツ】
【④集客・顧客とのリレーションシップ】
【⑤課金手段】
【⑥サイト】
【⑦最後に-何故、われわれは成功していないのか-】




コメントを投稿