Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

SEMIRAMIDE (Fri, Jul 31, 2009) 後編

2009-07-31 | メト以外のオペラ
前編より続く>

オケの演奏はオーケストラ・オブ・セント・ルークス。
NYで行われるガラ系の演奏会などでこれまでにも何度かその演奏を聴いたことがありますが、
もともと、キャラモア音楽祭を起源に生まれたオケだそうです。知りませんでした。
2001年から2007年にはラニクルズが首席指揮者を務めていたオケです。

今日の公演ではオケをやや少人数の編成にしていたように見受けたのですが、
プログラムにもそのあたりの説明はありませんでした。
木管楽器やホルンのソロも結構多いので、へなちょこな演奏になるのを覚悟でいたのですが、とんでもない!
歌手陣の熱気に引き摺られたのか、管楽器は安心して聴いていられました。
意外と荒れていたのは弦楽器の方かもしれません。
このオケはヴァイオリンのセクションに日本人の方が結構いらっしゃって、
今日の演奏もコンサート・マスターが日本人の女性の方だったのですが、
彼女が意図している方向に他の奏者が完全にはついていけていないようなもどかしさを、
特に序曲をはじめとする、前半で感じたのと、
ピチカートにも綺麗に入った音とそうでない音の落差が激しく、
セクション全体で少しテクニックにむらがあるのが気になりました。
かと思えば、後半で、歌手の声と呼応するメロディではものすごく色気のある音を出してきたり、
潜在的な力はあると思うのですが、、。

クラッチフィールドの指揮は、ベル・カントのスペシャリストを自認するだけあって、
”こういう風に演奏したい!”というヴィジョンはしっかり持っているように感じました。
指揮は非常にクリーンなんですが、少し学者的な演奏というか、
味わいにかけるところはあるかもしれません。
感傷的なのは嫌いなのか、割と音楽がさくさく流れていく感じです。
この作品に関しては、私はボニング指揮、サザーランド&ホーンのコンビのCDしか持っていないのですが、
ボニングの指揮のグランドに流れがちなのに比べると(まあ、演奏がロンドン響なので仕方がないのですが)、
ベル・カント的な軽さが出ていた点は好感が持てます。

今日の公演のチケットを手配した時には、ミードとジュノーの名前しか目に入っていなかったのか、
それとも実際に当時は名前が出ていなかったのか、ちょっと定かではないのですが、
ボニング盤のCDで予習をしているうちに、イドレーノの役が、出番がそれほど多くない割には、
超絶技巧連発で大変な役だということに気付き、一体、こんなの、誰が歌うんだろう?
力のないテノールが歌ったら、それこそ、崩壊ものだ、と思っていて、
二週間前の『愛の妙薬』でネモリーノをブラウンリーが歌うので、
彼が居残ってこの役も歌ってくれたらいいんだけど、無理かなあ、、と期待半分だったのですが、
公演前日に音楽祭のサイトで、その通り、ブラウンリーが配役されていることに気付き、小躍りしました。
特にCDのボニング盤での、ジョン・サージの歌唱が全くぴんと来ないので、
この役がきちんと歌われたらどういう風になるんだろう?と期待が高まります。

序曲が終わると、まず、オローエのパートから始まるわけですが、
このオローエ役を歌ったディカーソンというバスは、
シカゴのリリック・オペラの研修プログラムで研鑽を積んで来た人のようで、
無難には歌っているのですが、とにかく個性がなくて、この面子の中では完全に埋もれてしまって、
ほとんど印象らしい印象を残せないで終わってしまったように感じます。
声自体にそれほど魅力がないのが、これからのキャリアで命取りにならなければいいのですが、、。

合唱は各パートを足して男女それぞれ12名程度の編成なんですが(なので、各パート6名ずつくらい)、
おそらく、序編でふれた育成プログラムの歌手たちを連れてきていると思われ、
一人一人がしっかりした美声で、実際の人数以上の編成のような錯覚を覚えます。
例えば、アゼーマ役のヒルは、ついさっきまで合唱のエリアに座っていたのに、
いつの間にか舞台の中央でアゼーマを歌っていたりして、
小さい役は合唱とのかけもちになっていたりします。
ちなみに、前述のボニング盤のCDでは、アゼーマは、全員に混じって一言二言しか
歌わない埋没系の脇役ですが、
ゴセット版では、イドレーノに自分が愛しているのはアルサーチェである、と
宣言する部分もあって、それなりに目立つ脇役です。
少しアンダーリハース気味なのか、全幕で合唱に期待するような、
合唱の基本である、個を消して全体に寄与する、という点で今一歩
(言葉がぴったり揃っていない、とか)の面もありましたが、
非常にスリリングで面白い合唱ではありました。

そして、イドレーノ役のブラウンリー。さすがに登場時の落ち着きが他の歌手とは違います。
彼の歌にはフローレスのような緻密さとか繊細さはないのですが、
声の芯が太強くて、歌唱に独特のスリルがあるというか、
ひょい!と公演の熱気を一気にあげてしまうような個性があります。
今日は普通のタキシードなので、あの『チェネレントラ』の時のようなコスプレ的違和感もなく、
歌にしっかりと集中することが出来ました。



彼はルックスがこうなので、まじめな王子系の役は厳しいのではないか?という声を聴きますが、
今日の『セミラーミデ』を聴いたところでは、ブッフォ的レパートリーの王子より、
セリアの王子系の役の方が適性があるように思います。
アルサーチェに思いを寄せるアーゼマを見て嫉妬してしまう部分の表現なども上手いですし。
そういえば、ラミロ王子の時も真摯さが彼の役作りと歌唱のコアな部分を形成していました。
私はイドレーノ役については、
第二幕の”甘美な希望がこの魂を誘惑して La speranza piu soave"を楽しみにしていたのですが、
やや高音が不安定に入りそうになって、少し慌てたか、
前半でやや落ち着かない感じがありましたが、
後半にきちんと元に戻してくる辺り、精神力の強さを感じます。
むしろ、全体としての出来は、そのきらびやかな高音といい、
一幕でのアリアの方が断然出来が良かった。
ボニング盤のCDではカットが多く、この一幕のイドレーノのアリアも省略されているのですが、
これが、どうして全体の登場場面の少なさの割りに、異常に難しいアリアを与えているんだろう?という、
アンバランスな印象に繋がっていたようです。
ゴセット版では、イドレーノの登場場面がCDよりずっと多く、
彼は間違いなく四角の一角(他の三角はセミラーミデ、アルサーチェ、アッスール)を担う大事な準主役で、
ボニング盤のCDだけを聞いていると、この役のポジションを見失います。
ブラウンリーのしっかりした歌唱もあって、ゴセット版でこの役の良さを確認できたのは、
今日の公演の収穫の一つでした。

いよいよ、セミラーミデを歌うアンジェラ・ミードの登場。
もう私は今日は彼女を聴きにきたようなものですから!
映画『The Audition』をご覧になった方なら、あの『ノルマ』の”清らかな女神 Casta Diva"を歌った
大柄なソプラノ、、といえば思い出されることでしょう。



しかし、CDでサザーランドの軽い、上に上っていくような声に耳が慣れていたせいか、
ミードによる、セミラーミデ役の出だしのフレーズを聴いて思ったのは、
”映画を見て予想していたよりは重い声なんだな”ということでした。
正直に言うと、彼女はロッシーニ作品のソプラノではないな、と思います。
絶対的レベルでは非常に優れた装飾歌唱の技術を持ってはいるのですが、
ロッシーニの作品はその中でも、特別かつ特殊な能力を持った歌手を欲し、
それがガランチャをして”私はロッシーニ作品に向いたメゾではない”と言わしめ、
本当の意味でロッシーニ・テノールと呼べるのはフローレスなど、
実に限られた歌手に限られる事実と呼応しています。
ミードの技術は、こと装飾歌唱の技術に関して言うと、それこそ例えばフレミングなんかよりも全然確かなんですが、
それでもまだロッシーニ、こと、このセミラーミデ役には十分ではない、という感を持ちます。
(と、それをいえば、フレミングはメトの2009-10年シーズンに
ロッシーニの『アルミーダ』なんかを歌ってしまいますが、大丈夫なんだろうか、、?と本当に心配になります。)
特に二つの音の間を素早く行ったり来たりする技巧に、
独特のロッシーニ作品に似つかわしくない、ややねちっこい響きが生じるのは気になります。
上昇していくだけ、下降していくだけの音型は非常にピュアな響きで良いのですが、、。

また、サザーランドと違い、今日の彼女はことごとくアリアや重唱での終わりの音を上げずにいて、
セミラーミデ役の最大の聴かせどころの”麗しい光が Bel raggio lusinghier"もそうだったのですが、
では、高音がないかというとそうではなく、同アリアの途中のパッセージで、
びっくりするような超高音をアドリブで入れて、
観客の度肝を抜いていたのでわけがわかりません。
ただ、全体的にやや高音域でキレを欠いていた感もあったので、
少しコンディションが良くなく、ラストで延々と伸ばすような高音は無理だ、との判断があったのかもしれません。

しかし、私はこのあたりのことは全く気にしてません!
というのは、ロッシーニ作品に手を出さなきゃいいだけの話なんですから。
そんなことを越えて嬉しかったのは、やっぱり彼女は稀有の才能を持った歌手だということを確認できた点で、
上で書いたようなロッシーニ作品に特有の技術的にトリッキーな個所を除けば、
言葉の響きの美しさ、表現力、一音一音を考え抜いて歌っている点、など、どこをとっても申し分ありませんし、
ドラマティックな個所での声量も十分です。
いえ、彼女の場合、声量が十分なところがすごいのではなく、
実にその場面場面に適切な音量を出してくる、そのコントロールの上手さがすごいのです。
中でも歌による表現力、これは、今メトで歌っているメジャーなソプラノと比較しても一歩もひけをとるものではなく、
個人的には、重めのベル・カント・レパートリー(『ノルマ』など)から、
軽めの役をのぞいたヴェルディ・ソプラノの諸役で本領を発揮する人ではないかと思います。
彼女の声も歌唱スタイルもキャラクターも『椿姫』のヴィオレッタには全然向いてませんが、
『ドン・カルロ』のエリザベッタ、『仮面舞踏会』のアメーリア、
『アイーダ』のタイトル・ロールなどは射程距離にあると思います。
また、もしかすると、R.シュトラウスの作品なども良いかもしれないな、と思います。
今日の演奏を聴くに、スタミナとパワーもありそうなので。
彼女は、2007-8年シーズンの『エルナーニ』で突然病気に倒れたラドヴァノフスキーに代わって、
エルヴィーラ役を歌いメト・デビューを果たしています。
当ブログを読んで下さっている方の中にも、その公演をご覧になった幸運な方がいらっしゃいますし、
ローカルのオペラヘッドの方たちかも、彼女のこのメト・デビューが
いきなり大舞台に立ったとはとても信じられないほど素晴らしかった、と言う噂を度々聞いておりますが、
演目からして、納得できるものがあります。

日本の上映ではカットされてしまったようですが、『The Audition』の一般公開版には、
フレミング、グラハム、ハンプソンの対談が最後にくっついていて、
まさにその『エルナーニ』でカルロ役を歌っていたハンプソンが、
「当日にいきなりメトから電話があってね、ソンドラ(・ラドヴァノフスキー)が出演できなくなったから、
アンジェラ・ミードっていうソプラノをぶっつけ本番で投入するっていうんだ。
しかも、彼女、全幕でエルヴィーラ役を本番の舞台の上で歌うのは初めてだ、っていうんだよ。
まじかよ、、って思ったよ。それがあの出来でしょう?もうびっくりしたも何も、、。」と語っていたのを思い出します。
2009-10年シーズンのメトでは、一日だけ『フィガロの結婚』の伯爵夫人を歌うそうです。
12/4の公演で、ルイージの指揮、デ・ニース、レナード、テジエ、ピサローニらとの共演です。
彼女のモーツァルトというのはちょっと想像がつかないのですが、これは観に行かねばなりません。
同じ『The Audition』出身のシュレーダーがこの二年、ほとんど歌に成長の後が観られないのに対し、
彼女は着々と伸びているようで、明暗を分けた感があります。

彼女はAVA(Academy of Vocal Arts)の出身なんですが、そのAVAのプロジェクトで
『ルチア』を歌ったときの映像がYou Tubeにあがっていましたのでご紹介しておきます。
ルチア役も彼女の声に比して軽い役なので、あまり向いた役だとは思わないのですが、
声や歌唱スタイルの雰囲気は伝わるかと思います。
なんと、エドガルド役を歌っているのは『The Audition』の曲者キャラ、ファビアーノ君です。
二人は同級生だったんですね。




私は今日の公演では、ミードの歌が、もっとも音楽性があると感じたのですが、
一般に注目を集めていたのはアルサーチェ役のヴィヴィカ・ジュノーの方かもしれません。




彼女は発声の仕方によるものか、”うにょ~っ”というような独特の音が声に入り、
母音の音が変わるほどに感じられるのが、好き嫌いの分かれ目になるかもしれません。
アルサーチェが手紙を読むシーンでは綺麗な発音でしたので、ディクションの問題ではないと思います。

しかし、彼女の横隔膜と口の使い方はすごくアクロバティックで唖然とさせられます。
というか、ちょっとすごすぎて、オペラを聴いているというよりは、
曲芸師の技を見ているような気がしてくるほどです。
一幕の”やっとバビロニアに着いた Eccomi alfine in Babilonia”の
彼女の歌で公演に本気で火が着いた感もあり、この曲での彼女のワイルドな歌唱は
会場全体が大喝采になりました。
二幕のクライマックスでも、表現力がありますし、悪くはないのですが、
私には歌がアクロバティックな割に、感情への訴えかけ方がややコンパクトに感じるという点で、
もう一つ、突き抜けて欲しい感がなくはありません。
ただ、すごく温かそうな感じの人で、経験不足ゆえに緊張するミードらを
一生懸命盛り立てているのが印象的でした。
アルサーチェという男性に扮するため、身につけた茶のコートのような上着に
前横の髪をひっつめにしたヘア・スタイルも素敵で、歌だけでなく、
全体として役の雰囲気を掴むのが上手い人だと思います。
ホーンみたいな重量級の歌ではありませんが、これはこれで魅力的な(そして多分原作の雰囲気にはより近い)
美少年風の軽めのアルサーチェです。

しかし、今日の聴衆は、ある意味、メトの観客より数段怖い。
ものすごく的確にBravo/a/iの相の手の入れ方や拍手の仕方で、
どのような感想を歌に対して持ったかというのを表現しているのです。
ここには、英語で言うb/s(ブルシット=くだらない、意味のない言葉や行為。)は
一切なく、アラーニャだから、ネトレプコだから、というそれだけで喝采してくれるような
観客は一人もいません。歌がすべて。
しかも、客席にはオペラの関係者なども多いですから、出演する側にとっては、
針のむしろのような舞台に違いありません。
その代わり、本当に素晴らしいと思ったら、それもきちんと伝えてくれる。
(ただし、拍手は割と短く、熱狂的ですが、だらだら打ち続ける、ということはありません。
舞台終了後の拍手の長さも実にあっさりしたものです。)
これは歌手にとってもきっとすごくやりがいのあることでしょう。
ジュノーが観客の喝采に心から嬉しそうにしていたのは、
このあたりをきちんと感じ取っていたからではないかと思います。

最後になりましたが重要なアッスール役のダニエル・モブス。
彼に関しては名前といい、このアンドロイドのような表情や体の動きといい、どこかで見た事があるような、、
と思っていたのですが、思い出しました。OONYのガラでした!
そのガラの時も思ったのですが、彼の歌は悪くはないのです。
(ただし、ロッシーニはやはりちょっと手に負えていない部分もあるのか、
一幕すぐの立ち上がりで、速い下降するパッセージでことごとくラストの音をすっ飛ばしていたのは気になりました。)
だけれども、彼の性格、これは何とかせねばなりません。
自信がなさすぎるんですよね。歌の内容のわりに自信満々過ぎるのも鼻持ちならないですが、
歌の割に自信がなさすぎる、これはオペラの世界では致命傷だと思います。
今日の公演は共演者の力もあって、すごく熱い公演になって、
それにのせられた形で、第二幕の四場以降、なかなかの歌唱を披露していたのですが、
前半の歌唱を聴くに、自分でそのレベルに持っていけないのが、
彼の最大の泣き所だと思います。
歌手として頭一つ抜き出るには、どんな場面でも自分が率先して
歌で公演を熱く出来るようなスピリットを持っていなくてはなりません。
その意味ではジュノーを見習ってほしいものです。

演奏会形式とはいえ、これほど充実した『セミラーミデ』を鑑賞できるとは。
さすがのヘッズたちも、お腹満杯になったか、帰りのバスでは爆睡する人続出でした。
まあ、終了したのが12時過ぎ、8時から、20分のインターミッションを除いて
(トイレの混み具合が尋常でなく、結局時間内に用を済ませられなかった人もいるのではないかと思います。)
ずーっと、テンションの高いロッシーニ節を聴きっぱなしだったので無理もありません。
15分で”ロッシーニは同じに聴こえる”という連れが全幕覚醒したままで、
最後には”すごい歌だったなあ、、”と呟いた位なのですから。

バスからマンハッタンの路上に放り出されたのは深夜の一時半。
(ものすごい車の量で、バスがキャラモアの敷地の外に出るまでにこれまた難儀でしたが、
一旦インターステートにのってしまえば、時間帯が時間帯なので、あっという間に
マンハッタンに着きました。)
オペラヘッドにはたまらない、わくわく感の詰まった玉手箱のような一日でした。大満足!

(冒頭の写真は左からブラウンリー、ジュノー、指揮のクラッチフィールド、ミード、モブス、ディカーソン。)

Angela Meade (Semiramide)
Vivica Genaux (Arsace)
Lawrence Brownlee (Idreno)
Daniel Mobbs (Assur)
Christopher Dickerson (Oroe)
Heather Hill (Azema)
John-Andrew Fernadez (Mitrane)
Djore Nance (The Ghost of Nino)
Conductor: Will Crutchfield
Orchestra of St. Luke's
Caramoor Festival Chorus

Bel Canto at Caramoor: Caramoor 2009 International Music Festival
ROSSINI: SEMIRAMIDE (in concert)
Critical edition by Philip Gossett

Center Orch Row T
Venetian Theater at Caramoor estate
Katonah, NY

** ロッシーニ セミラーミデ Rossini Semiramide **

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18 コメント

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前・後編でたっぷり♪ (みやび)
2009-08-04 01:14:57
ありがとうございます~観に行ってもいない公演なのに、すっかりその気になっている私がいます(笑)

>『ドン・カルロ』のエリザベッタ、『仮面舞踏会』のアメーリア、『アイーダ』のタイトル・ロールなどは射程距離にあると思います。

ですよね~。いや、このあたり私のストライクゾーン(?)ど真ん中です。Madokakipさんがおっしゃるのだから大丈夫、これは将来が楽しみです。

ロッシーニやバロックは近年かなり演奏法、歌唱法など進歩というか変化というかしているので、この辺のレパートリーとヴェルディ以降のレパートリーを両方歌うのは、(特にロッシーニ・マニアを満足させるよう歌うのは)かなり難しくなっていると思います。METのような巨大なオペラ・ハウスでは純正ロッシーニ歌唱とは若干違ったスタイルが必要になると思うので、そういう場合はまた別になるでしょうが。ミードの場合、ロッシーニ以外のレパートリーを主にしてくれれば、私としてはとても嬉しい♪

で、ジュノー。やっぱり凄かったのですね。私はあまりバロック(実は、ロッシーニもそれほどは)好みでないのです。嫌いというわけでもないのですが、プッチーニだのヴェリズモだのコテコテ系(?)に慣れてしまっているせいか、バロック式の感情表現がピンと来ない感じでしょうか。しかし、ジュノーくらいになると、なんかわからないけど、とにかく凄いんだわ!ということはわかりました。

そして、ブラウンリー。すっかり親しみを覚えてしまい、なんだか応援したい気分です。コスプレにならなければ、セリアもOKでしょうか?頑張って欲しいものです。

しかし、「セミラーミデ」って、かなり長いんですよね?終わってみれば、かなりお疲れというのも無理はありません。おまけに、臨場感たっぷりのレポも上げていただいて、ありがとうございました!
肥満 (keyaki)
2009-08-04 10:25:29
上半身の写真は、健康的で可愛い...と思いましたが、YouTubeで見るとおもいっきり肥満体ですね。第二のSusan Nevesかな....
かなりの才能の持ち主のようですが、若い時からこれだけ肥満体だとどうなんでしょう。今は、普通体型より目立っていいかもしれませんが、このままだとどうなんでしょう。今は若さでカバーできるかもしれませんが、健康面からも、体力的にも問題が出てくると思います。
久しぶりに、お相撲さん並の歌手を見たもので....いらんことを言っちゃってごめんなさい....
YouTubeは、卒演みたいなもののようですが、アメリカって、オペラが盛んなんですね。

「オペラ界のトゥーランドット姫」つまり肥満姫について記事を書いたことがありますが、皆さんのコメントが面白いです。シャロ・ストーンじゃない、シャロ・スイートも、肥満の影響で早くに引退してるんですね。
http://keyaki.blog.so-net.ne.jp/2006-03-01
ミード (Madokakip)
2009-08-04 13:19:23
頂いた順です。

 みやびさん、

>観に行ってもいない公演なのに、すっかりその気になっている

いえいえ、そう言っていただけるとすっごく嬉しいです。
今回はミードが出演しているということ、
また、記憶が新しいうちに書けたのと、
久しぶりのオペラ全幕鑑賞(演奏会形式とはいえ)でアドレナリンが噴出しっぱなしだった勢いで突っ走りました!

ミードですが、この『セミラーミデ』だけでも、
ドラマの起伏がある個所こそ、のって歌えているような気がしました。
なので、スタイルが先行する、もしくはドラマの表現の前に守らなければならないスタイルがある個所やレパートリーは
彼女の持ち味が出ず、もったいないと思います。
なので、私個人的にはロッシーニはレパートリーから外してもいいんじゃないかな、と思います。
他のベル・カント作品でも、ドラマティックでないもの、軽すぎるものは、同じ理由であまり彼女には向いていないように思います。
逆にプッチーニまで行ってしまうと、今度は彼女の歌のおっとりした良さ、
フォームの美しさみたいなもの(格調と言ってはいいすぎかもしれませんが、
どこかクラシカルな雰囲気が彼女の歌にはあります。)が犠牲になってしまうようにも思うので、
イタリアものなら、断然ヴェルディが合っていると思うんですね。
歌だけなら、オテロのデズデモーナを入れるのも忘れていました。
彼女は柔らかい音も本当に綺麗に出しますよ。
(舞台の上で、あの役のお嬢的な雰囲気に合うかどうかはまた別問題かもしれませんが。)

今年のシーズンのフィガロの伯爵夫人、これがどう出るか、
これは非常に興味深いです。
モーツァルトもある意味、独特のスタイルの中で表現を行わなければならないレパートリーですし、、。
ただ、私はモーツァルトの作品は超大好きなわけではないので、
そっちに行かれると困るんですけど(笑)!

ジュノーに関しては、あまりに歌唱が独特で、
一番コメントしにくかったのが正直なところです。
すごいな、ってことはわかるんですが、
それと、心に訴えかけてくる部分が切り離されてしまっているというか、、。
ただ、私もバロックにあまり慣れ親しんでいないため、
無意識に抵抗感を持ってしまっているというか、
壁を作ってしまっている部分もあるのかもしれないです。
いかんですね。

ブラウンリーは私は実はセリアの方が合っているんではないか、と思うんですね。
舞台で衣装を着たり、というようなことになってくると、
またパタリロみたいになってしまうのかもしれませんが、
少なくとも歌はそのように感じました。

 keyakiさん、

>久しぶりに、お相撲さん並の歌手を見たもので

いいんですよ。大きいのは事実ですから(笑)。
私もこの演奏会で彼女の立ち姿を見たとき、
なんか、すごく懐かしい感じがしたんですよね。
最近、こういうでかいソプラノ、見てなかったなー、
昔オペラ歌手といえばこういう体型を思い浮かべたものなのになあ、と、、、。
見目麗しい人が増えてきてますからね。

歌手の体格は声に関係ない、という方もいますが、
私は関係がなくはないと思うんですね。
特にソプラノは、大きい(もちろん前横に)人にしか出せないたおやかな声というのがあるように思います。
太っているからといって必ずしも綺麗で柔らかい声である、という公式が成り立たない、と言う意味では、
体格と声は関係ない、といえますが、
しかし、私の経験ではそうなんですが、
痩せた人で、カバリエのような楽々(に聴こえる)と柔らかい声を出せる人は一人もいない、という、先の公式とは逆の観点から見た時、
やはり、体格と声は関係がある、と言えると思うのです。
これはオペラ・ファンの間でもおそらく永遠に全員一致とならない議論だとは思うのですが、、。

というわけで、私は久々に登場したこのお相撲さんのような彼女の声が大好きです。
こういうたおやかなタイプのソプラノを、メトではここ近年聴いていない気がするんですね。
ほっそりとした美しい歌手も、歌が上手であれば、
それはそれで喜ばしいのですが、
彼女のような”声”を聴けるオプションも、
私達オペラファンに残しておいてほしいな、と切に願っているのです。

ただおっしゃるとおり、健康面、体力面、これは心配です。
シャロン・スィート、そういえばいましたよね!!
最近全然名前を見ないと思ったらもう引退とは本当にびっくりしました。
羨ましい! (Boni)
2009-08-04 13:30:09
コンサート形式とはいえ「セミラーミデ」を生で聴けるとは、羨ましい限り!
しかもブラウンリーのイドレーノとは。

ロッシーニのオペラの中でも特に好きな作品です。

私も、サザーランドとホーンの歌ったCDは持っており、気に入ってもいますが、イドレーノを重視されるのでしたら、10年ほど前の録音ですが、グルベローヴァがタイトルロールを歌ったものをお勧めします。
何せ、イドレーノ役がフローレスですから。
因みに、アッスールは、若き日のダルカンジェロが歌っております(現在の彼ほどの存在感はありませんが)。
このまま死ぬまで二度と生で聴けないかも、、 (Madokakip)
2009-08-04 13:58:47
 Boniさん、

そうなんですよ。
この次にこの作品を聴ける時には、私が死んでいるか、生きているか?ってなことになっているかもしれないです。

サザーランドやホーンのような歌手がわらわらと出てくるわけではないことを前提とすると、
演奏会とはいえ、これだけバランスのよいキャストでこの作品を生で聴けたというのは、
本当に幸運でした。

私も、予習で聴きこんでいるうちに、この作品、
どんどん好きになってしまいました。
ロッシーニ作品で私が知っているものの中では私も今一番好きな作品がこれです。

筋書きも音楽も、ドラマチックさと格調の高さのようなものが最高のバランスでとどまっているように感じます。
しかも、歌にほんと詰め物的な部分がないというか、
これだけ長いのに、全部が聴き所なんですよね。
ロッシーニがこんなに合唱をつけるのが上手い人だった、というのも驚きでしたし、
この作品をじっくり聴く機会を与えてくれたこの演奏会に大感謝です。

そして、グルベローヴァの盤に、フローレスとダルカンジェロとは知りませんでした!
早速購入いたします!!
(確かにアッスールは風格や高貴さに隠れた邪悪を表現しなければいけないので、
大変ですよね。メトのDVDも一度見てみたいんです。
アッスールがレイミーなので、、。)
笑ってしまって。 (sora)
2009-08-04 22:40:10
ルチアのyoutubeを見ると、可笑しくて。。。
声は素敵なんですけど、二人を見るとついニヤニヤしてしまいます。
特にファビアーノくん。変な顔~。ぷぷぷ。
ミードさんも、とてもこれから発狂しそうには思えない。。。

私、ジュノーさんを間違えていたことに気付きました。7月にmedici.tvとかいうところで、スターバト・マーテルの演奏が見れていたのですが、なぜかソプラノの女性の方をジュノーさんだとずっと勘違いしてました。こちらのブログかどちらかで、「ジュノー=美人」みたいなのを読んだ気がしていたので、より美人な方に自分の気持ちが傾いてしまったのかも。
これです。http://www.youtube.com/watch?v=TVyhbjTtkYg
スターバト・マーテル。初めて聴いたのですが、素敵ですね。これってバロックってやつなんでしょうか。

今回の「セミラーミデ」のレポ。すごく楽しそうなのが伝わってきました。私も勝手に行った気分です。(でもセミラーミデ、フローレスがテレビで歌ってたのしか知りませんけど

>NYのヘッズの間では知らぬものがいない有名オペラブログの管理人の姿やらも見られ、
とにかくヘッズ率の高さが尋常じゃない。

有名なブログって、いったいどんな事が書いてあるんですか?
こちらのブログみたいに詳細なレポとか?それとも意見交換が主ですか?
チエカさん (Madokakip)
2009-08-05 13:36:13
 soraさん、

>変な顔~

keyakiさんがおっしゃっているように、これは声楽学校の卒演ですので、
衣装とか鬘が垢抜けていない、と言う部分もありますし、
演技とかはまだまだこれから磨いていかないといけないかもしれないですね。

このYou Tubeでは長い黒髪の方がジュノーです。
soraさん的には短髪の女性の方が美人でしたか?

このスターバト・マーテルはペルゴレージ作曲のもので、
(このポスティングと微妙な絡みを見せていますが、
ロッシーニが作曲したスターバト・マーテルもあって、こちらも良い曲です。)、
ペルゴレージは後期バロックから古典派の橋渡しをしたと言われる作曲家の一人ですので、
バロック末期の作品と考えてもいいのではないかと思います。

>有名なブログって、いったいどんな事が書いてあるんですか?

http://parterre.com/

このブログはNYタイムズでも取り上げられたことがあり、
筆者のラ・チエカさんは最新号のOpera Newsでも紹介されている人物です。
ちなみにこのセミラーミデの時は、普通の男性の格好でいらっしゃってました。

もともとはメトの前で手で配っていたファンジンが母体で、
今のようにブログが一般的になる前から、
ウェブなどの媒体でオペラの情報を発し続けてきた方です。
ファンジンの頃は今より過激で、
もっとゲイ・カラーが強く(ご自身がゲイでいらっしゃいます。)、
カラスなどの有名な写真で見につけられている衣装と、
自分の写真をコラージュしたりして(よって女装状態!)、
楽しませてくれたものです。
その頃はご自身で書いたものをたくさん載せられていたのですが、
ブログになってからは、どちらかというとモデレーター的で、
ポスティングで勝負、
(よって一人一人の方に返事は出されません。
というかコメントが多すぎてとても返事が書けないとも思いますが。)
後はヘッズに自由に色々なことを語ってもらう、という体裁をとっていらっしゃいます。
オペラの世界にお知り合いの方が多いようで、
情報も早いです。
ただ、コメントは熱いヘッズが集まっているので、
激しやすく、時にかなり意地の悪い意見の応酬になったりすることもありますので、コメントされる時はご注意を。

ただ、チエカさんご自身は、Opera Newsを読んでもわかる通り、
非常に洞察力に優れた、冷静で知的な方でいらっしゃいます。
セミラーミデのCD (Boni)
2009-08-05 15:46:33
>サザーランドやホーンのような歌手がわらわらと出てくるわけではない

その通りで、この録音でも、強烈な存在感を放つサザーランドとホーン以外は、余り冴えませんね。

やはり全体のバランスでは、グルベローヴァの録音のほうが良いように思われます。
また、グルベローヴァとフローレスが見事なのは言うまでもありませんが、アッスール役にダルカンジェロを起用したことが効果的です。
彼の若々しい声によって、オロエとの違いがはっきりしますし、この人物像に、悪党のおっさんではなく、野望と邪悪さを秘めた若き貴族といったイメージが与えられていますから。

レイミーが出演した「セミラーミデ」の映像は、昔レーザーディスクでも出ていたような記憶がありますが、その頃はロッシーニのオペラに格別の関心を持っていなかったため、残念ながら私も観ておりません。

レイミーといえば、先日購入したばかりの、ヌッチとヴァーレット主演の「マクベス」の映画版DVDを見ていたとき、見覚えのないバンコー役が見事なことに驚き、キャストを確認したところ、歌だけレイミー(演技は別の人)でした。

レイミー・ファンのMadokakipさんに、、、

http://www.youtube.com/watch?v=85ezTttDh0I

既にご存知でしたらご容赦を。
コメントなんて・・・ (sora)
2009-08-05 20:50:45
チエカさんのブログを覗いてみました。
当然の事ながら、私の場合、英語に壁が。。。
ザルツブルクのコシの画像があったので、何が書いてあるのかなぁ~と見てみましたが、クイズになっているのを理解するのに、数十分

ましてやコメントなんて
キャパ無しなので、未だにこちらのブログと娑羅さん、yolさんのところにしかコメントしたことありませんし。怖がりなんで、激した意見の応酬なんて、おそろしや~です。顔が見えなくても、いえだからこそですね。
いつも変な質問にお答え下さり有難うございます。
レイミーのアッスール (Boni)
2009-08-06 09:30:08
You Tubeで見つけたので貼っておきます。

http://www.youtube.com/watch?v=Ph56l7fFpw8

流石です!
スリムで筋肉質のレイミーなので、ヴィジュアル面も決まっております。

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