prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「天狗党」

2014年05月27日 | 映画
山本薩夫は「赤いセシル・B・デミル」と言われた人で、堂々たる商業大作を捌く手腕と共産党員としてのイデオロギーとを両立させてきたわけだが、これもそう。ただしイデオロギー色は割と薄い。

反権力もまた権力のうちで、本来の敵役の筈の幕藩体制がドラマの後景に退き、百姓出身の仲代を慕って百姓たちが大勢集まってきたのを、天狗党の中の侍たちが煙たがってしまいには粛清しようとするあたり、あからさまに20世紀の革命組織内部の路線対立とその挙句の粛清を思わせる。

冒頭の百叩きの場面(イメージとしては完全に特高の拷問だろう)で空をバックに人物が逆光気味で暗く写っていて川原の照り返しで顔の下半分に光が当たっている処理などはおもしろいのだが、セットや画面作りが堂々としている割に画面が暗いのは気になった。大映の普段のスタッフワークからして、スクリーンで見たら黒が締まって見えたのではないかと想像する。

番組についていたインタビューで仲代が語っていたが、昔はこういう反体制的な百姓・庶民=弱者vs幕藩体制といった時代劇がよく作られていた。しかも興行的にも成功していたのがいつしか作られなくなって、反体制的な映画は日本から少なくともメジャーからはすっかり姿を消した。
昔は自分が弱者の側だと自覚している人がマジョリティだったのが、変に日本が経済成長して実態はともかくとして世界の一等国意識にどっぷり漬かって上から目線を持つ者がマジョリティになったからではないか。



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