prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ラスト、コーション」

2008年03月20日 | 映画
上海や香港が日本の支配下にあった時代の話だが、支配者としての日本人が直接描かれることはほとんどなく(エンドタイトルを見ると、スタッフに日本人の名前がずいぶん混ざっているのだが)、活動家たちの不安と恐怖も、協力者のそれも漠とした存在そのものの不安のよう。
前半の若い活動家たちのお気楽な感じは、日本の60年代の反体制運動を思わせたりする。
「夫人」と名乗っているのでいざ関係した時に怪しまれないように仲間うちでセックスの練習をしておく、感情と行為とがバラバラの感じや、突然人を殺さなくてはいけなくなる恐怖感の描出が秀逸。

ヒロインと「漢奸」が最初に関係する時、女をうつぶせにして縛り動けなくしてから背後から行為に及ぶわけだが、これSM趣味というのではなくて、具体的な敵に対するというよりもっと漠とした内面からの不安からではないか。描写はすこぶる具体的だけれど、存在そのものの価値が危うくなっている形而上的不安がくっきり出ている。

トニー・レオンの執務室の壁に「自由 平等 博愛」と、いかにも日本経由らしいフランス革命のスローガンが漢字で書かれて貼ってあるのが皮肉。
(☆☆☆★★)


本ホームページ


goo 映画 - ラスト、コーション


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。