きゃおきゃおの庭

近代建築から現代建築までPHOTOたてもの探訪の記録。大切にしているものなど写真で綴ります。

明日の神話 岡本太郎◇東京都現代美術館

2008-03-02 | 美術展
現代美術館を訪れたもう一つの目的は、岡本太郎の長大な壁画を観ること。
縦5.5メートル、横30メートルの巨大壁画だ。
会期が延長されたのが嬉しい。
常設展「ポップ道1960s-2000s」は、以外にも結構面白い。
ポップじゃないのもあるような・・分類って難しい。

最近見た、大観の「生々流転」は幅は無いけど40mを超えていたっけ。
少しぐらい長くても驚かないわと3階へ。

発見当時、マスメディアに取り上げられた記憶が新しい。
メキシコの新築ホテルのロビーを飾る予定で制作したが、経営者の営業不振のため
ホテルは未完成。その後、人手に渡り、壁画も行方不明になってしまった。
2003年9月、メキシコシティ郊外の資材置き場で、『明日の神話』が発見された。
修復プロジェクトが組まれ、今日に至る。どこに引き取られるのかな。



3階展示室いっぱいに 岡本太郎の壁画が展示されている。
写真撮影許可の表示が嬉しい。
皆、思い思いに撮影していた。
炸裂した光と、燃える骸骨。ものすごい怒りと 凛とした強さ・生命を感じる。
製作されたときから40年あまり過ぎても
テーマは不変なのだ。

当時の岡本太郎記念館館長だった岡本敏子のこの壁画へのメッセージをここに。
総ては、このメッセージの中にあると 私は思う。
よき理解者だった岡本敏子、偉大です。

壁画について」岡本敏子

『明日の神話』は原爆の炸裂する瞬間を描いた、
岡本太郎の最大、最高の傑作である。
猛烈な破壊力を持つ凶悪なきのこ雲はむくむくと増殖し、
その下で骸骨が燃えあがっている。悲惨な残酷な瞬間。
逃げまどう無辜の生きものたち。
虫も魚も動物も、わらわらと画面の外に逃げ出そうと、
健気に力をふりしぼっている。
第五福竜丸は何も知らずに、死の灰を浴びながら鮪を引っ張っている。
中心に燃えあがる骸骨の背後にも、シルエットになって、
亡者の行列が小さな炎を噴きあげながら無限に続いてゆく。
その上に更に襲いかかる凶々しい黒い雲。
悲劇の世界だ。
だがこれはいわゆる原爆図のように、ただ惨めな、
酷い、被害者の絵ではない。
燃えあがる骸骨の、何という美しさ、高貴さ。
巨大画面を圧してひろがる炎の舞の、優美とさえ言いたくなる鮮烈な赤。
にょきにょき増殖してゆくきのこ雲も、
末端の方は生まれたばかりの赤ちゃんだから、無邪気な顔で、
びっくりしたように下界を見つめている。
外に向かって激しく放射する構図。強烈な原色。
画面全体が哄笑している。悲劇に負けていない。
あの凶々しい破壊の力が炸裂した瞬間に、
それと拮抗する激しさ、力強さで人間の誇り、純粋な憤りが燃えあがる。
タイトル『明日の神話』は象徴的だ。
その瞬間は、死と、破壊と、不毛だけをまき散らしたのではない。
残酷な悲劇を内包しながら、その瞬間、
誇らかに『明日の神話』が生まれるのだ。
岡本太郎はそう信じた。この絵は彼の痛切なメッセージだ。
絵でなければ表現できない、伝えられない、純一・透明な叫びだ。
この純粋さ。リリカルと言いたいほど切々と激しい。
二十一世紀は行方の見えない不安定な時代だ。
テロ、報復、果てしない殺戮、核拡散、ウィルスは不気味にひろがり、
地球は回復不能な破滅の道につき進んでいるように見える。
こういう時代に、この絵が発するメッセージは強く、鋭い。
負けないぞ。絵全体が高らかに哄笑し、誇り高く炸裂している。



◇明日の神話 特別公開
会期 2007年4月27日~2008年6月29日
   公開期間が延長になりました!
東京都現代美術館 常設展示室 3F
コメント (2)
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