熊本熊的日常

日常生活についての雑記

読書月記2020年8月

2020年08月31日 | Weblog

梅原真『ニッポンの風景をつくりなおせ』羽鳥書店

亀山郁夫『ドストエフスキー 父殺しの文学』上下 NHKブックス

先月、ほぼ日の学校で受講した亀山先生の講座の底本であったことが読んでみてわかった。ドストエフスキー研究は、亀山先生ご自身の探究でもあるのだろう。私はロシアとかロシア文学に興味はないのだが、隣国に対する当然の関心はある。

下巻を読み終えた日、興福寺から今年の塔影能が中止になったとの葉書を受け取った。

 

『全著作 森繁久彌コレクション2 芸談 人』藤原書店

たまたま本書を読み終えた日、職場の同僚が自殺した。同僚と言っても、面識はなく、作業のログで相手の名前を認識しているだけだ。自宅のアパートの窓から飛び降りたそうだ。以前にも、別の職場で、やはりニューヨーク勤務の同僚が帰宅途上に列車事故で亡くなった。その時は亡くなったことよりも、午後5時過ぎにグランドセントラルを発車する列車に乗って帰宅できることに衝撃を受けた。勤務時間が長ければ良いというものではもちろんないのだが、結構華やかな活躍をしている人だったので、それでもワークライフバランスがしっかりしていることに、素朴にどうやっているのだろう、と思った次第である。いつものように通信回線の向こうで働いていると思っていた同僚が不意に消えてしまうことの実感の無さに今の時代の生のありようを想う。

ところで本書は芸談に関する著述を集めたものだ。芸というのは、多分、特殊な技能のことではなく、生きることも芸のうちだと思う。以下、備忘録。

人生という大きな宝を、出来るだけつまらなく、出来るだけ意味のないものにして、そっと生きてゆこうとする。人間はおおむね、事なかれ主義の勇気のない、愚昧な生き物だと気づくのだ。(153頁)

人の労働を己れの労働と交換する。この原始共産主義というか、直裁な感覚が、いつの間にか貨幣によって失われたのだ。(315頁)