熊本熊的日常

日常生活についての雑記

動中の工夫

2010年06月14日 | Weblog
はやぶさが帰ってきた。2003年5月9日に打ち上げられ、2005年9月にイトカワという小惑星に到達して、昨日の夜遅くに地球へ戻ってきたのである。そのニュースをウエッブで読んでいたら、ふと白隠慧鶴の書「動中工夫 勝静中 百千億倍」(動中の工夫、静中に勝ること 百千億倍)が頭に浮かんだ。

2005年11月、はやぶさはイトカワ離陸後に姿勢制御用化学エンジンが燃料漏れを起こす。その反動で姿勢が乱れて通信が途絶。行方不明になってしまう。7週間後にはやぶさが発する信号が受信されたが、これははやぶさが回転運動をしていて偶然にアンテナが地球の方角に向いた所為だった。回転運動なので、20秒間の交信、30秒間の通信途絶、というサイクルでの通信再開だった。この20秒を捉えるべく指令は20秒以内に収まるように工夫したのだという。

また、化学エンジンの燃料漏れにより、搭載していた12基の同エンジンが2005年12月までに全て故障。つまり、姿勢制御用エンジンで姿勢制御ができない状態に陥ってしまう。しかし、これも航行用のイオンエンジンの推進剤を使って代用したのだそうだ。

航行用のエンジンを姿勢制御にも利用するとなると航行に不自由が生じる。そこで、太陽電池パネルを帆船の帆のようにして、風の代わりに太陽光の圧力を利用した。

これらのほかにも数多くあったであろう工夫と努力の甲斐も無く、当初予定した帰還軌道に乗りそこなう。その結果として帰還は3年延期となる。問題となるのは消耗品や衛星そのものの寿命だ。

2009年11月、4基中3基目のイオンエンジンが故障。2基の故障箇所が別だったので、これらをつなぎ合わせて動作させるという文字通りの離れ業を成し遂げた。これにより、はやぶさは動力を失わずに昨日の帰還を実現してみせたのである。

ニュース記事を読んでいて熱いものを感じてしまった。あの手この手の工夫の数々。満身創痍になりながらも飛び続けるはやぶさ。知恵を出し続ければなんとかなる、というようなお気楽なことではないのだが、諦めないということと「動中の工夫」の大切さを認識させられた。何事か考え、それを試してみるということを、数多くやらなければ、事態は変化しないというのは当然なのだが、危機に陥ると様子見モードに入ってしまう。様子見も当然必要なのだが、様子見と無為とは見た目は同じでも全然違うことである。近頃、自分の無為無策が気になって不快な気分に陥ることが多かったので、はやぶさのニュースは妙に心に響くものがあった。

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