こころとからだがかたちんば

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三島由紀夫への回想 2 ~巣鴨学園での生活 1982-1985~

2007-05-17 21:44:44 | 想い出かたちんば


私は、巣鴨高校の出身である。
かなり、20数年の間に、学校としての変容は若干していることだろうが、当時、そこは、まさに軍隊としての、規律と「文武両道」を要求される、極限の世界であった。

当然、男子校であり、女性は1人もおらず、往復の山手線で見るようなちゃらちゃらした「高校生活」などとは、自分は、まったくの無縁であった。
自分が、三島由紀夫が、後期にして、「肉体」を手に入れることに渇望し、それを得て、集団「楯の会」としての「共に見る 精神の淵 肉体の淵」へと向かっていった事へのシンパシーの根源は、ここにあるようにも思う。

***

入学すると、その日に、全員に、学園長が直筆した「文武両道」という色紙をもらう。
制服は、海軍のような制服だった。


日々は、授業の中で柔道・剣道のいずれかを義務付けられ、毎日、10:30ごろには軍隊的な体操の時間が必ず設けられており、絶対参加であった。

そして、四季折々の軍隊的な催事が待っていた。
5月には、連休前に「大菩薩峠越え競歩大会」なるものがある。山梨と奥多摩を繋ぎ、間に大菩薩峠を越える道、42kmを歩いて越えるのでる。
しかも、それは、夜中の2時にバスでスタート地点に下ろされ、昼12時までにゴールすることを要求される。
我々は、真暗な闇の山道を、懐中電灯のあかりを頼りに歩いていく。
道端で、両足が吊ってしまって倒れた同志を見かけることもあった。高校3年の時には、悪天候でどしゃぶりの雨の中、決行された。
私は、そのとき、雨に打たれながらも同志たちと歩きながら、不覚にも寝たのである。
歩きながらでも、人間というのは眠れるのだと初めて知った。

峠の頂上には、甘酒屋が一件あるのみだった。
下り道に入ると、夜は、蒼く明け始める。
自分は、朦朧とした中で、坂本龍一の「The Garden Of Poppies」という美しい曲を、頭の中で鳴らしていた。


当然、連休中は、からだじゅうがボロボロで、どこにもいけずに、寝たきりの生活をすることになる。

***

夏には、千葉の館山での水泳の合宿。
日本古来の古式泳法をするのだ。
しかも、いでたちは白ふんどしである。

秋になると、11月には、多摩湖でのマラソン大会。
マラソンとはコトバだけで、実質は、道無きでこぼこの山道を、樹を掻き分けながら、12km走るのである。

そして、冬、1月の極寒の中、7時ごろから、2週間に渡る「寒稽古」が始まる。
私は、柔道を選択したが、もはや畳は、その畳としてのやわらかさは失い、硬く寒さで凍り付いていた。そこで何時間も打ち込みをやらされた。

これら、四季折々の催事には、当然、それの事前練習もあり、例えば、マラソン大会などでは、学園の周辺を走るのだが、池袋周辺の、やわな世界を走る自分に見える、周りの人間も世界も全ては、別の次元のモノにみえた。

***

こんな戦時中下のような日々を送りながら、なおかつ、自分は、「排球班」に所属していた。
「排球班」とは何か? バレーボール部のことである。

***

これらの「受苦」を、3回繰り返して、終えねば、高校生活は終わらなかった・・・。

そういう自分が垣間見た、極限の世界、肉体の極限、精神の極限・・。
それは、多分、何らかの精神的作用を自分にもたらしたのかもしれない。

20数年たった今、もはや、自分では、わからないのだが・・・・・。

***

そういえば、三島由紀夫の「仮面の告白」に出てくるセント・セバスチャン像へ感じたエレクティオを思い出す。
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2 コメント

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かたちんばさんへ (ウツ子)
2007-05-18 20:11:11
 …すごい高校だったんですね~!
 うちの近くにも、かつて管理教育で悪名高かった高校があります。教師がヤクザみたいに怖かったそうです。
 でも今は普通になりましたが…。

 鎌田慧さんの「教育工場の子供たち」に取り上げられてたそうです。

 http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/6031510/top.html

 
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ウツ子さんへ (かたちんば)
2007-05-18 22:36:31
私は、今はその時代を否定していません。

管理教育ではなくて、軍国主義ですな。
そこで、自分の魂が形成された部分も無いとはいえません。

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