南町の独り言

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EUの夢はどこへ向かうか

2012-01-18 22:07:51 | 経済
1988年、フランスのドロール委員長はいわゆるドロール報告書を出して、ヨーロッパ統一通貨の導入を提案しました。
その夢は1999年1月1日に決済用電子通貨として実現し、2002年には現金通貨としてのユーロが誕生しました。
(2010年3月22日のブログ「リーダーたちの世界観」でそのEU統一の夢について語っています)

2002年から2008年頃まで、ユーロは予想以上にスムーズな発展を見せていきます。
米ドルに次ぐ基軸通貨としての国際的な信認も獲得し、世界の外貨準備資産に占めるユーロのウェイトは、1999年の18%から2009年には28%へと上昇し、逆に米ドルは71%(99年)から62%(09年)に低下していきます。

しかしグローバルな金融危機は欧州へも波及し、欧州の金融機関の脆弱性が明らかになってきました。
2009年秋のギリシャの財政赤字問題から、ユーロ各国の信用力格差が問題となりはじめます。
(2011年9月7日ブログ「欧州不安再燃」)
EUはユーロという強力な通貨を手に入れましたが、米ドルと違いその経済圏は民族も異なる多くの国家で構成されていますので、欧州全体を見据えた強いリーダーシップがなくなると分裂の危機を抱えてしまいます。
日本でも地方によってインフレ率も財政力もも違うように、ユーロ圏ではさらに大きな格差が存在しています。
日本でも地方財政が厳しくなると地方債を発行しますが、地方といえども国の機関ですからいざとなれば国が保証してくれます。
しかし国家が違うユーロ圏ではそうはいきません。

当然、EUは金融危機に対する安全網を強化する必要性に迫られます。
ひとつめは欧州中央銀行(ECB)の関与拡大です。
金融機関に対する「最後の貸し手」としての役割をさらに期待されるものです。
ふたつめは2010年5月に創設した欧州金融安定基金(EFSF)のテコ入れです。
ドイツなどが追加保証に同意するかが焦点になっています。
みっつめは昨年12月に決定した欧州安定メカニズム(ESM)の創設前倒しです。
加盟国がそれぞれ資本金を払い込むことが必要ですが、各国に新たな財政負担が求められます。

危機対策が後手に回っているために「共同債」構想が期待されていますが、各国の財政規律順守が整わないと、モラルハザードを起こしかねません。
しかしユーロ圏全体でみるならば、2010年の財政赤字はGDP比6%・債務残高は85%で米国や日本と比較すると良好です。
(米国:11%・94% 日本:7%・200%)
ギリシャなどのユーロ離脱も記事になりますが、そうなったら世界恐慌の始まりです。
欧州全体のリーダーシップを誰が取るのか、この問題と日本のリーダーシップを誰が取るのか、とても他人事とは思えません。

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