5000万件もの年金記録が消えてしまった・・などと聞くと穏やかではない。
いったい何が起こったのか?
日本の年金制度は社会保険方式、給付を受けるためには保険料の納付が必要である。
当然ながら、保険料を払わなければもらえないのである。
年金額の計算は、個人個人の保険料納付記録に基づいて行われる。
問題は、この納付記録の不備にある。
原因は大きく分けてふたつある。
ひとつは「オンラインシステム導入」時の不備。
昔はサラリーマンが加入している厚生年金は事業主が徴収し社会保険業務センターが管理、国民年金は市町村が徴収し社会保険事務所が管理した。
コンピュータが普及していない時代のことだから大変な事務作業であったろう。
昭和54年度から電算化を進め、全国の社会保険事務所と社会保険業務センターを結ぶオンラインシステムを順次導入し、平成元年にシステム全体が完成した。
この移管作業の不備がまずひとつ。
つぎは「基礎年金番号導入」時の不備。
従来はサラリーマンの厚生年金、公務員の共済組合、自営業者の国民年金制度に分かれていた。
昭和60年の年金制度改革により、全ての人を対象とした基礎年金を支給する制度に改正される。
これにより全国共通の基礎年金(1階部分)が誕生する。
厚生年金や共済年金は、その上乗せとして報酬比例(2階部分)の年金を支給する制度に再編成される。
しかし、職業の変更などによる複数の年金記録をもつ人の記録確認に手間取るという問題が発生する。
このような問題解消を図るために平成9年1月から、各年金制度共通の基礎年金番号を導入した。
基礎年金番号導入に当たって、平成8年12月以前に加入していた複数の年金手帳を持つ人についてはその記録の統合処理を進めていった。
この統合処理の不備がふたつめの原因である。
「消えた年金」問題に関わるかもしれないのはどんな人たちか。
平成8年12月以前に転職を繰り返していた人、改姓をされた人、心配な人は社会保険事務所に年金手帳を持っていけば親切丁寧に教えてくれるはず。
ほとんどの現役サラリーマンは大丈夫だと思うが、心配な方はぜひチェックを。
払ったはずなのに認められない・・・認めてもらうためには領収書などの証拠を・・・責任回避の対応が事態を複雑にさせたきらいがある。