文革の再来 警鐘「温家宝首相」/ 一枚岩とはほど遠い中国共産党 薄熙来氏の解任劇で露呈した権力闘争

2012-03-22 | 国際/中国/アジア

政治改革 進まず焦り 文化大革命の再来 警鐘
中日新聞核心2012/3/15Thu.
 中国の温家宝首相は14日の全人代終了後の記者会見で、政治改革が進展しないことへの焦りをにじませた。かつて民主化を進めて失脚した胡耀邦元総書記(故人)に抜擢された温首相。政治改革を訴え続けることを自らの責任と受け止めているようだ。会見では、毛沢東が権力闘争のため半世紀近く前に発動した「文化大革命(文革)」を引き合いに、保守派が賛同する大衆動員型の政治運動を厳しく批判した。(北京・安藤淳)
■怒り
 来年3月に退任する温首相にとっては、全人代後の最後の記者会見。3時間に及んだ会見の終了間際、右手に持った鉛筆を机にたたきつけた。公開の場では極めて異例な最高指導部による党幹部非難の場面だった。
 「現在の重慶市共産党委員会と市政府は必ず反省し、真剣に事件の教訓をくみ取らなければならない」
 副市長が先月、米総領事館に駆け込んだ重慶市の事件。捜査中で詳細は不明だが、首相は同市トップの薄熙来共産党市委員会書記(62)=政治局員=の進めた大衆運動と法を無視するような強引な政治手法を暗に批判した。
■運動
 薄氏は2007年に重慶市トップに就任後、暴力団一掃キャンペーンを展開し、5,700人以上を摘発。一方で、共産党への忠誠心を高めるため、職場や学校、公園などで毛沢東時代の革命歌を歌う「唱紅」運動を全市で展開した。
 政治運動で大衆を盛り上げる薄氏の手法は「重慶モデル」と呼ばれ、保守派が称賛。薄氏は今秋の共産党大会で政治局常務委員(現在は9人)への昇格を狙ったとされる。
 しかし、捜査の過程で目障りな暴力団関係者の弁護士を偽証などの微罪で逮捕し、官製メディアで大々的に報じさせるなど「法を無視した政治キャンペーン」との指摘も強かった。温首相は「実事求是(事実に基づき真理を追究する)」と繰り返し、中国にはびこる「人治主義」を排して法治主義を徹底する姿勢を鮮明にした。
 会見でも「文革の誤った封建的な影響がまだ完全に取り除かれていない」と保守派を牽制。「政治体制改革が成功しなければ経済体制改革で得た成果も失われ、新たな問題も解決できずに『文革』の歴史的悲劇を繰り返しかねない」と強く警告した。
■遺訓
 だが、党内には「中国の政治制度は国情に合い、多党制や三権分立など欧米式の政治モデルのまねはしない」との主張も影響力を持つ。温首相は「順序立ててゆっくりと社会主義民主政治を構築する」と述べ、政治改革に対する保守派や既得権益層の反対が根強い現状を浮き彫りにした。
 「国家のためになるなら死んでも構わない」と清代にアヘンを取り締まった官僚、林則徐の言葉を引用した温首相。秋の党大会で次期総書記への就任が確実な習近平国家副主席に、さらなる改革を促す「遺訓」とも受け止められる。
 しかし「党内で孤独な改革旗振り役」ともささやかれる。中国の政治改革の行方は、一党独裁の変革につながる議論が盛り上がるかどうかにかかっている。
 <文化大革命> 1966~76年に大衆を動員した政治運動。封建的な文化や資本主義打倒が名目とされたが、実際は故毛沢東主席が大衆を利用し、最高権力を握る権力闘争だった。青少年らで組織された紅衛兵が大量動員され、大勢の知識人や市民らが投獄、殺害された。犠牲者は数百万から1000万人ともいわれる。文革は81年に全面的に否定され、毛主席の誤りを認める「歴史決議」が採択された。
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一枚岩とはほど遠い中国共産党 薄熙来氏の解任劇で露呈した権力闘争
JBpress 2012.03.19(月)Financial Times
 気が強く、カリスマ的な重慶市共産党委員会書記だった薄熙来氏の解任の皮肉は、同氏が中国で最も人気の高い政治家だったかもしれないことだ。
  中国中部・重慶市の住宅地に住む中年女性のグループは昨年、薄氏をどう思うかと聞かれると、一斉に親指を立ててみせた。「薄熙来は素晴らしいですよ」と彼女たちは言った。「みんな薄熙来が大好きです」
  共産党という城の小塔を飛び越え、市民に直接訴えかける薄氏の習慣は、ほぼ間違いなく失脚の一因となった。重慶市の党委書記として、薄氏は地元暴力団に対する激しい取り締まりを率いた。暴力団はお決まりの売春、賭博業を手がけており、ほぼ間違いなく一部の共産党関係者とつながりがあった。
  薄氏の「犯罪撲滅」運動の超法規的な性質(迅速な裁判で13人が処刑された)を考えると、その過程で政敵を追放することも難しくなかったはずだ。
■最高指導部入りを目指してきた薄熙来氏
  薄氏は、複数の評論家が中国版の選挙出馬(9人から成る政治局常務委員会入りを目指す運動)となぞらえる動きの中で、ほかにも人気の高い政策を実行してきた。重慶の都市部住民と田舎に住む住民の区別を緩和し、都市部住民以外にはほとんど認められてこなかった健康保険などの各種手当を農村部住民が得やすいようにした。
  また、薄氏は公営住宅建設と巨大なインフラ計画を推し進め、おかげで人口1000万人の重慶市は、全国で最も急成長を遂げる都市に数えられるようになった。
  薄氏は、ポピュリスト的な発言を駆使する達人でもあった。自らを正当な権力の唯一の源泉と見なす単一政党が率いる国では、必ずしも賢明なことではなかった。
  薄氏は毛沢東主義の神話を利用しようとし、毛沢東主義後の中国で生じた大きな格差に対する反対運動と銘打ち、「赤い」スローガンや革命歌を復活させた。ある意味では、文化大革命そのものを彷彿させるような政治的な粛正で薄氏が失脚したのは、相応しい出来事だった。
 薄氏の解任は、中国の政治体制が、時に言われるような円滑な組織ではないことを思い出させてくれる。
  法律の策定やソーセージの生産と同じように、中国という一党支配国家の中身は見られたものではない。通常、内部は見えないところに隠れている。だが、ちょうど今秋起きるように、常務委員会が次の世代に権限を委譲する世代交代の時期には、党内の激しい派閥争いがはっきり見えるようになる。
■指導部交代が順調だったのは1度だけ
  実際、1949年の共産主義革命以降、円滑に進んだ指導部交代と呼べそうなものは、たった1度しかなかった。2002年に江沢民氏が現国家主席の胡錦濤氏に権限を委譲した時のことだ。
  江氏は最高指導者の地位に就く予定ではなかった。小平氏の後を継ぐはずだった趙紫陽氏が、1989年の天安門広場での危機時に弱腰の姿勢を見せたという理由から、今回の薄氏のような政治的粛清で解任されたことで、初めて江氏が後を継ぐことになったのだ。
  氏自身、トップに就いたのは、四人組が逮捕され、毛沢東氏が選んだ後継者の華国鋒氏と長い権力闘争を繰り広げた末のことだった。
  今年の胡氏の後継者選びでは、完璧に演出されたかに見えた習近平氏の任命により、多くの人はこうした権力闘争が過去のものになったと錯覚した。
  薄氏と異なり、習氏は共産党支配の別の見解を打ち出して波風を立てることはなかった。個人の意見を極めてうまく隠してきたため、プロの中国ウォッチャーでさえ、習氏がどのような指導者になるか見当もつかないと打ち明ける。
  薄氏を取り巻く劇的な展開は、共産党が一枚岩とはほど遠いことを露呈している。極めて原始的な類の派閥闘争もあれば、党の精神を巡る観念的な闘争もある。温家宝首相が繰り返し訴えてきた民主主義の拡大は、一度として政策に反映されることはなかった。
  しかし明らかに、共産党のイデオロギーの中核では、まだ戦いが繰り広げられる余地がある。今年最も重要な選挙は、米国ではなく、中国で行われるのだ。
 By David Pilling in Hong Kong
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中国国盗り物語~9つの椅子の行方/呉儀「裸退するので、その代わりに薄熙来を私の後釜にしてはならない」2012-03-21 | 国際/防衛/(中国・・・) 
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中国:尖閣巡視「日本の実効支配打破が目的」
 【北京・成沢健一】中国当局が尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権を主張する行動を活発化させている。21日の中国共産党機関紙「人民日報」によると、16日に日本の領海に一時侵入した海洋調査船の巡視活動について国家海洋局幹部は日本の実効支配打破を目的に挙げた。巡視には中国メディアの記者を複数同行させ、国内外に主権をアピールする狙いを鮮明にしている。
 16日は最新鋭の海洋調査船「海監50」と「海監66」の2隻で巡視し、「海監50」が一時、日本の領海内に侵入した。巡視については「中国国防報」や「法制晩報」などが同行記者によるルポを大きく掲載した。
 中国外務省は16日の定例会見で「釣魚島は中国固有の領土で、巡視は法に基づいて海洋権益を守るものだ」と従来の主張を繰り返すにとどめた。これに対し、人民日報のインタビューに応じた海洋局幹部は巡視の目的として「日本の実効支配と有効管理で釣魚島を窃取する企てを打破するためだ」と説明した。
 中国の当局者が日本の実効支配打破の意図を明言するのは異例だ。
 尖閣諸島が沖縄本島などとともに米国から日本に返還されてから2022年5月で50年となる。国際法では実効支配が50年間続くと領土として認めることが一般的であるため、中国としては領有権の争いがあることを国際社会に訴える必要に迫られている。
毎日新聞 2012年3月22日 22時38分
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