付け焼き刃の覚え書き

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「終りなき戦い」 ジョー・ホールドマン

2009-11-14 | ミリタリーSF・未来戦記
「今夜は、音を立てずに人を殺す八つの方法を教授する」
 あまりにインパクトがあったので、著者が聞いた言葉を作品にも取り入れたという教官の言葉。

 宇宙航行法コラプサー・ジャンプによって地球外へ開拓団を送り出すようになった地球人類は、まったく異質の文明を持つ異星人トーランとの全面戦争に突入してしまう。その戦争の主役となるのはエリート徴兵法によって集められた頑強な肉体と高い知能指数の兵士たちであり、彼らは対数フィードバックパワードスーツに身を包むことであらゆる環境に適応できる戦士となる。
 しかし、コラプサー・ジャンプではウラシマ効果の壁を破れない。一度出撃した部隊が帰還すれば、故郷では何十年何百年が経過しているのだ。ほんの数日の戦いで家族も友人も過去の歴史となり、それどころか地球の文化も風習もまったく馴染みのない別のものへと変化していた……。

 パワードスーツを着用して異星人との戦いに投入されるウィリアム・マンデラ二等兵の物語。戦い続けること=守るべきものの喪失につながる状況で、彼らが価値を見出すものは戦友しかいなくなるのだけれど、その戦友すら送り出される戦場が異なれば生死に関わらず再会はまず不可能となります。
 よく比較されるハインラインの『宇宙の戦士』は「大事なものを守り、自分の権利を主張するためには、自らが血と汗を流して戦わないといけない」という、アメリカ的な「無料のランチなどない」という思想を象徴した話ですが、こちらは「汗を流して戦ったところで、自分の守るべきものはもうどこにもない」という嫌戦的な話。無事に退役したところで故郷は既に見知らぬ異世界で戦場以外に行くところがないという悲惨さはベトナム戦争の引き写しであるというのにもうなずけます。
 軍隊というのは汚いところで、約束を反故にはしないけれど空手形は連発して裏の裏をかいてくるし、留守中の家族は社会から見捨てられているし、戦って守る価値があるものって何だ?という話ですが、これも結局、根っこの部分でハインラインと共通している気がします。「実際に戦ったことのない奴等が後方で偉そうに政治や行政を掌握してたら、戦っている兵士は報われないんだよ」ということなのですから。

【終りなき戦い】【ジョー・ホールドマン】【パワードスーツ】【クローン】【同性愛】【ウラシマ効果】【ベトナム戦争】

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