付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「蓬莱学園の冒険!」 遊演体

2017-05-05 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「私は常に多数派である」
 公安委員長、離修竜之介の言葉。

 南洋の孤島に「世界一危険」といわれる学園があった。生徒数10万人。1つの島が学生たちの自治によって運営された1つの都市、国家となった私立蓬莱学園である。
 始業式には反体制の武装集団が乱入し、それに武装生活指導委員(SS)たちが戦車や重火器で応戦する。白昼の校庭では密室殺人が発生し、旧校舎裏の密林には恐竜が出現して原始少女と戦っている。ヨット部はフリゲート艦で海賊と戦い、海洋冒険部は潜水艦で学園の海域を哨戒し、旧図書館は深淵と繋がっていて図書整頓隊は幾度も全滅している……。
 そんな危険な学園に入学・転入してくる者たちの間には、1つの噂が流れていた。
 この島には地球最後の秘宝が隠されていて、左肩に傷痕を持つ8人の少女たちが、どうやら謎を解く手がかりになるらしいのだと……。

 プレイヤーたちの体験談は「PBMプレイヤー列伝」とか『蓬莱学園の復刻!』のような関連書籍など、あちらこちらに。
 でも、美人の演劇部部長の追いかけをしていたら内戦が発生して、部長は義勇軍に志願して戦死。後に彼女の名を得た潜水艦が就役した……って、どこが学園RPGじゃい?と思わないでもありません。

 『ネットゲーム'88』は確かに面白かったけれど、リアルで私財と余暇のすべてを投入しないと最終回になっても何が起きているかも分からないというのは商業作品として問題ではないか。それにゲームの華となるヒロインも(たぶん)1人しかいないというのは男性プレイヤーが多いのにサービス不足だ……という反省を踏まえ、もう少し一般向けに分かりやすいシステムにし、メインヒロインを8人に増やして、その他美少女キャラも大盤振る舞いしたのが、『ネットゲーム'90 蓬莱学園の冒険!』。これ以降はどんどんユーザーフレンドリーになっていき、全体像が大きくなりすぎないようコントロールして、最終的にはどちらかといえば「プレイヤーの設定したキャラクターを主役にした小説を書くサービス」みたいなものになっていきますが、それを人力でやってるとコストが見合わなくなってしまい、パソコンとインターネットの発達によって現在のネットゲームに塗りつぶされていきます。もともとスタッフ/デザイナー側は、当初は郵便と電話しかなかったから、ああいう形を選んだと聞きますから自然な流れではあったのでしょう。
 そういう意味で、当時最先端のテーブルトークRPGやスターウェブ等のコンピュータ処理マルチゲーム、マニア向け雑誌の読者参加企画などが好きなプレイヤーが集まって、ピーキー過ぎた『ネットゲーム'88』を調整し、ぎりぎり商品として合格ラインまで落とし込んだのが『ネットゲーム'90 蓬莱学園の冒険!』だと言えるんじゃないのでしょうか。
 ただ、これでも十分尖っているという声はありましたし、難しすぎる、温すぎるの声が混在してきたあたりが、デザインと運営の難しさを考えさせられます。

 とにかく『ネットゲーム'88』も『ネットゲーム'90 蓬莱学園の冒険!』もオンリーワンだったのです。たとえるなら「球技です!」と人を集めてプレーするのだけれど、それが何なのか始まるまで分からない、ルールもよく分からないままゲームが進行する。で、それが「野球」だった。野球が上手い人もいれば下手な人もいるし、「サッカー」や「ボーリング」をやりたかった人もいる。野球が下手でも楽しかったという人もいれば、野球で活躍はしたけれどサッカーができなかったからつまらなかったという人もいて、そういう人は「システムが悪い」「マスターが不親切」と怒り、怒ったまま消える人もいれば、ルールを変更しろ球技を変えろと叫ぶ人もいるし、あるいはサッカーをやりたい人を集めて自分たちで試合を始めた人もいる……そんなこんながネットゲームだったのです。
 少なくとも、そうやっていろいろなサッカーやボーリングがプレイされるようになりましたし、中には「蹴鞠がやりたい」と懇々と周囲に蹴鞠の面白さを説くような光景も見られたのです。回りくどく比喩的に語るなら。

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