(1)消費増税について8月26~31日に開かれた「集中点検会合」では、出席者60人のうち約7割の44人が、来年4月に予定どおり3%引き上げるべし、と主張した。経済は着実に回復している、先送りした場合には国際的信認が失われ、企業活動・金融システム・財政に与える打撃が大きい、うんぬん。なお、社会保障分野の実務者からは財源確保のための容認論が大勢を占め、産業界からは増税による景気下押しへの対策を求める声が相次いだ。【注】
(2)「集中点検会合」は、一見、政府が一方的に消費税を決めるのではなくて広く国民の理解を得ようとしているかのように見える。
しかし、実際のところは「政権内部の争いの延長」だ。
(a)財政健全派・・・・現政権を支えている財務省、麻生太郎・副総理/財務省を中心とし、予定どおり消費増税したい。
(b)リフレ派/新自由主義派・・・・当の安倍晋三・首相、そのブレーンたる浜田宏一・エール大学名誉教授、竹中平蔵・慶應大学教授ら。消費増税は先送りしたい。
(c)財政膨張派・・・・「国土強靱化」を主張する藤井聡・京都大学教授を中心とする。
これらの中でも、(a)と(b)との確執は根深い。(a)のある人物が安部首相に、「消費税が引き上げられないなら切腹する」と詰め寄り、憤った安倍首相が、「じゃあ、この場で切腹しろ!」と怒鳴ったとか。
「集中点検会合」は、表面上は多くの人の意見を聞き、両者を折り合わせるように見せかけているが、水面下では必死の攻防が繰り広げられている。それは、呼ばれている人の顔ぶれを見れば、一目瞭然だ。
庶民の立場からもの申す人はごく一部だ。大部分は、現政権を二分している(a)と(b)の人で、話の中身は庶民の生活からほど遠い。
(3)(2)-(a)は、「日本は1,000兆円の借金があるので、財政を健全化しないと金利が上がって庶民生活に大打撃を与える」と言っている。
しかし、つい半年ほど前、アベノミクスで日本銀行にジャンジャンお金を刷らせて国債を引き受けさせ、ジャブジャブに公共投資にお金をつぎ込んでデフレからの脱却を図るという政策を「黙認」したのは、この「財政健全派」だった。
もし本気で財政の健全化を図るならば、あのような金融政策には異を唱えるべきだった。
ところが、それどころか、当時は消費増税の条件となる今年4~6月期のGDPを底上げしたいがため、財務省などはむしろ後押ししていた。
(4)他方、(2)-(b)は、「金融緩和と財政出動で景気が回復する」と主張してきた。
たしかに一時的には景気回復した。しかし、その後の成長戦略があまりにショボくて、ここにきて景気の先行きに懸念が出てきた。
この上、確たる成長戦略を打ち出せないまま消費税を上げたら、景気が腰折れすることは、ほぼ間違いない。
(5)庶民は、円安で食料品やガソリンの値上がり、電気料金や社会保険料も値上がり、給料が増える兆しはなく、それどころか年金は支給額が10月から減る。まさに踏んだり蹴ったりだ。
消費増税の分でサービスを充実させるはずだった「税と社会保障の一体改革」は、ほとんど話題にもならなくなった。
(6)その一方、「国庫にカネがないから」と導入された復興増税は、増税分を無駄遣いされても、なおまだ4割も残っている。
こんなドンブリ勘定だと、大切なお金を役人には渡したくない。
だが、そんな庶民の思いは政府にちっとも届いていない。
【注】記事「「消費増税の集中点検会合、有識者の7割が増税賛成?誰が賛成?(参加者の賛否一覧)【争点:アベノミクス】 」(朝日デジタル2013年9月5日)
□荻原博子「官邸に有識者や専門家を集めたものの庶民かの生活から遠ざかる消費増税の議論」(「サンデー毎日」2013年9月15日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【経済】安部政権下、賃金が下がりつつある理由 ~スタグフレーション~」
「【消費税】第三の矢が折れる日 ~成長戦略破綻の構図~」
「【社会保障】医療、介護、年金・・・・怒濤の負担増 ~「後出し公約」~」
「【経済】円安による費用増はすでに政治的問題」
「【経済】ビジョン計画はあっても実行計画のないアベノミクス ~マネーゲームの誘発~」
「【経済】投機に翻弄される日本経済と金融市場」
「【経済】アベノミクスの金融緩和はデフレを脱却させない ~雇用が重要~」
「【経済】円安を止められなくなるリスク」
「【税】富裕層への増税を支持する富裕層」
「【選挙】小泉「改革」の悪夢は甦るのか ~「失われた20年」の元凶~」
「【選挙】負担に口をつぐむ各党 ~世代間移転~」
「【税】実質税負担率はトヨタ社長より庶民のほうが高い ~金持ち優遇~」
「【経済】金持ちに1%の富裕税を課せ ~消費税の2倍の税収~」
「【経済】年々減る給与、年々増える会社の貯金 ~企業の内部留保金300兆円~」
「【経済】税制が作った“富裕老人”400万人」
「【経済】消費税は失業者を増やす」
「【経済】「億万長者激増」の原因 ~税制~」
「【経済】「億万長者激増=景気低迷原因」説 ~日本に5万人の億万長者~」
(2)「集中点検会合」は、一見、政府が一方的に消費税を決めるのではなくて広く国民の理解を得ようとしているかのように見える。
しかし、実際のところは「政権内部の争いの延長」だ。
(a)財政健全派・・・・現政権を支えている財務省、麻生太郎・副総理/財務省を中心とし、予定どおり消費増税したい。
(b)リフレ派/新自由主義派・・・・当の安倍晋三・首相、そのブレーンたる浜田宏一・エール大学名誉教授、竹中平蔵・慶應大学教授ら。消費増税は先送りしたい。
(c)財政膨張派・・・・「国土強靱化」を主張する藤井聡・京都大学教授を中心とする。
これらの中でも、(a)と(b)との確執は根深い。(a)のある人物が安部首相に、「消費税が引き上げられないなら切腹する」と詰め寄り、憤った安倍首相が、「じゃあ、この場で切腹しろ!」と怒鳴ったとか。
「集中点検会合」は、表面上は多くの人の意見を聞き、両者を折り合わせるように見せかけているが、水面下では必死の攻防が繰り広げられている。それは、呼ばれている人の顔ぶれを見れば、一目瞭然だ。
庶民の立場からもの申す人はごく一部だ。大部分は、現政権を二分している(a)と(b)の人で、話の中身は庶民の生活からほど遠い。
(3)(2)-(a)は、「日本は1,000兆円の借金があるので、財政を健全化しないと金利が上がって庶民生活に大打撃を与える」と言っている。
しかし、つい半年ほど前、アベノミクスで日本銀行にジャンジャンお金を刷らせて国債を引き受けさせ、ジャブジャブに公共投資にお金をつぎ込んでデフレからの脱却を図るという政策を「黙認」したのは、この「財政健全派」だった。
もし本気で財政の健全化を図るならば、あのような金融政策には異を唱えるべきだった。
ところが、それどころか、当時は消費増税の条件となる今年4~6月期のGDPを底上げしたいがため、財務省などはむしろ後押ししていた。
(4)他方、(2)-(b)は、「金融緩和と財政出動で景気が回復する」と主張してきた。
たしかに一時的には景気回復した。しかし、その後の成長戦略があまりにショボくて、ここにきて景気の先行きに懸念が出てきた。
この上、確たる成長戦略を打ち出せないまま消費税を上げたら、景気が腰折れすることは、ほぼ間違いない。
(5)庶民は、円安で食料品やガソリンの値上がり、電気料金や社会保険料も値上がり、給料が増える兆しはなく、それどころか年金は支給額が10月から減る。まさに踏んだり蹴ったりだ。
消費増税の分でサービスを充実させるはずだった「税と社会保障の一体改革」は、ほとんど話題にもならなくなった。
(6)その一方、「国庫にカネがないから」と導入された復興増税は、増税分を無駄遣いされても、なおまだ4割も残っている。
こんなドンブリ勘定だと、大切なお金を役人には渡したくない。
だが、そんな庶民の思いは政府にちっとも届いていない。
【注】記事「「消費増税の集中点検会合、有識者の7割が増税賛成?誰が賛成?(参加者の賛否一覧)【争点:アベノミクス】 」(朝日デジタル2013年9月5日)
□荻原博子「官邸に有識者や専門家を集めたものの庶民かの生活から遠ざかる消費増税の議論」(「サンデー毎日」2013年9月15日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【経済】安部政権下、賃金が下がりつつある理由 ~スタグフレーション~」
「【消費税】第三の矢が折れる日 ~成長戦略破綻の構図~」
「【社会保障】医療、介護、年金・・・・怒濤の負担増 ~「後出し公約」~」
「【経済】円安による費用増はすでに政治的問題」
「【経済】ビジョン計画はあっても実行計画のないアベノミクス ~マネーゲームの誘発~」
「【経済】投機に翻弄される日本経済と金融市場」
「【経済】アベノミクスの金融緩和はデフレを脱却させない ~雇用が重要~」
「【経済】円安を止められなくなるリスク」
「【税】富裕層への増税を支持する富裕層」
「【選挙】小泉「改革」の悪夢は甦るのか ~「失われた20年」の元凶~」
「【選挙】負担に口をつぐむ各党 ~世代間移転~」
「【税】実質税負担率はトヨタ社長より庶民のほうが高い ~金持ち優遇~」
「【経済】金持ちに1%の富裕税を課せ ~消費税の2倍の税収~」
「【経済】年々減る給与、年々増える会社の貯金 ~企業の内部留保金300兆円~」
「【経済】税制が作った“富裕老人”400万人」
「【経済】消費税は失業者を増やす」
「【経済】「億万長者激増」の原因 ~税制~」
「【経済】「億万長者激増=景気低迷原因」説 ~日本に5万人の億万長者~」