語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【選挙】小泉「改革」の悪夢は甦るのか ~「失われた20年」の元凶~

2012年12月09日 | 社会
 (1)日本の衰退は、1990年代にバブル破裂の処理を橋本龍太郎の自民党政権が誤り、「失われた10年」を作ったのに端を発する。

 (2)2001年4月に首相に就いた小泉純一郎が率いる自民党政権が、日本の衰退にダメを押した。
 「改悪トリオ」は、小泉に加えて、竹中平蔵・経済財政担当大臣/金融担当大臣(当時)、奥田碩・日本経団連会長(当時)だ。ブッシュ大統領(当時)の言いつけどおり、「貪欲は美徳」とする株主至上主義を強行したのだ。その結果、
 日米そろって所得と富の格差が開いた。
  → 社会不安を招いた。
  → 国家統治の中枢が崩れた。
  → 情実・談合型資本主義となった。
  → 2008年9月に米国ウォール街から始まった「ブッシュ恐慌」が日本を直撃した。

 (3)小泉「改悪トリオ」が強行したのは、政治、行政、司法、社会、教育、そして企業経営の相乗的な複合腐敗だ。それは公正な市場競争ではなく、情実と談合、そして政官産の癒着による国民収奪の制度化だった。経営者の多くは、独占、不正会計、社員切り捨てのマネーゲームを追っている。
 小泉「改悪トリオ」が、政権発足から8年間でいかに日本の国力を落としたかは、次の数字を見れば一目瞭然だ(その後も急落が続いている)。
  (a)一人当たりGDP・・・・ 世界第4位 → 世界20位
  (b)長期経済成長の源泉の国民科学力・・・・ 世界2位 → 世界6位
  (c)国民数学力・・・・ 世界1位 → 世界10位
  (d)国語読解力・・・・ 世界8位 → 世界15位
  (e)経済の国際競争力・・・・ 世界2位 → 世界33位

 (4)小泉「改革」の5大欺瞞は、
  (a)金融改悪・・・・不良債権処理を口実として行われたが、その実態は、経営責任の追及がないままの、銀行と保険会社の対米売却促進と銀行同士のもたれ合い合併にすぎなかった。この結果、中小企業や個人への貸し渋りや貸金のやみくもな剥ぎ取りが横行した。日本経済は弱った。
  (b)財政改悪・・・・①「郵政改革という名の郵貯、簡易保険、郵便の3事業の解体民営化」へのすり替えが行われた。ブッシュ大統領の指示どおりに、庶民のカネでブッシュ帝国主義の膨張を支えるために米国債を買い続けた。他方、②財政改革に欠かせない税制改革については、勤労者減税ではなく、株式交換での企業乗っ取りと解体に係る税負担を軽くした。
  (c)司法「改革」・・・・国民が政府や地方自治体、そして大企業の不正と横暴を牽制する「市民意識と行動」を押さえ続けたから、憲法違反の司法腐敗が横行している。日本に必要な司法改革は、裁判官の官僚統制を止め、判検癒着と判政癒着を牽制することだ。刑事裁判では、検事や官僚による被疑者の冤罪防止だ。このためには、警察や検察の取り調べ可視化と弁護人立ち会いが欠かせない。これが確立していないから、被疑者の米兵の日本側への引き渡しを米軍が拒んでいる。司法「改革」の目玉とされた裁判員制度は、裁判員が公判以前の肝要な証拠処理から締め出されていて、改革の名に値しない。
  (d)「企業ガバナンス」・・・・奥田経団連は、労働基準法を改悪し、企業内での正規と派遣社員の賃金・身分格差を拡大した。パートのワーキング・プアが増え、日本における所得と富の格差が拡大し、日本経済を支えてきた設備投資と国民消費増大が消滅してしまった。
  (e)教育改悪・・・・日本再生に必要な教育改革は、お上に忠実な「引きこもりの化石人間」ではない。少子化を好機とし、小・中・高校の学級定員を半減し、ワーキング・プアの臨時教員を正規教員として、世界でも高水準だった19500年代のカリキュラムを復活させることだ。しかるに、いまや、「日の丸」と「君が代」の国権主義の押しつけなどで、分数計算ができない大学生、思いやり、けじめ、思考力と読書力のない社会人が人口の過半数を占めるに至った。日本人留学生は、質量とも低下している。

 (5)11月6日の大統領選挙で、米国の有権者は、オバマ大統領を大差で再選し、加えて連邦上院の第一党の民主党を3議席増やし、上院での立法権を固めさせた。下院では、第一党の共和党の勢力を削るにとどまったものの、オバマ大統領と民主党による米国経済回復策と社会保障改革を徹底的にサボタージュしたティー・パーティ狂信派の議員を続々と落選させた。
 共和党は、超富裕層の献金を得て、大統領府と上院の奪回のために巨額のカネをテレビでの民主党攻撃に注いだ。この選挙は、こうした共和党の決定的な敗北だった。

 (6)日本では、米国の動きとは逆の方向へ進みつつあるかのように見える。
 日本をここまでダメにしたブッシュ政権言いなりの小泉「改革」が、「ゾンビ」のように復活しようとしている。
 安部“ゾンビ”晋三や、石原“ヒトラー”慎太郎らが、商業大メディアに煽られて、「失われた20年」の元凶、小泉「改革」を今度は倍加して実行しようとしている。

 以上、霍見芳浩(ニューヨーク市立大学教授)「再び甦るのか小泉「改革」の悪夢 ~国会前の怒りを聞け!~」(「週刊金曜日」2012年12月7日号)に拠る。

 【参考】
【選挙】自民党の公約を整理すると浮き上がる矛盾
【選挙】安倍自民党総裁が財界に支持される理由 ~官僚的体質~
【選挙】安倍晋三の軽佻浮薄と無定見 ~経済政策~
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