(1)来春の消費増税をめぐる議論が白熱してきた。
だが、消費税をどうするか、と同時に議論すべきもっと重要な問題がある。
(2)アベノミクスのおかげで日本経済に急に活気が出てきた・・・・ように一見見受けられる。
しかし、異次元の金融緩和の効果はマクロの世界の、しかも名目でのこと。これで国民生活が豊かになるわけではない。
財政バラマキも持続可能な政策ではない。
実質の世界で景気を本当によくするには、第三の矢(成長戦略)が放たれなければならない。
経済音痴の日本のマスメディアは、金融緩和による円安と株高に熱狂し、構造改革に無関心だった。
他方、欧米メディアは、当初から、アベノミクスを高く評価していた・・・・ただし、構造改革をセットで実施することを前提として。
(3)財務省は、消費税を上げなければ日本への信頼が失われる、という。
しかし、これは正しくない。
消費増税だけなら、ギリシアもイタリアもスペインもやった。けれども、彼らは財政危機に陥っている。借金の額もGDP比率も、問題の本質ではない。市場に見放された原因は、彼らが経済成長のための構造改革を怠り、借金を返す能力を失ったからだ。
(4)自民党の消費増税派の大半(麻生財務相がその筆頭)は、構造改革反対派だ。彼らにとって増税の目的は、財政再建ではなく、バラマキ原資の確保だ。
官僚も同じだ。
自民党の構造改革反対派と官僚は、増税による景気の腰折れ防止という名目で、さらなるバラマキをするから財政赤字は縮小しない。
再来年の消費増税もあるから、バラマキ継続になって、結局財政再建はできない。
この結果、さらなる増税に向かう。かくて、市場の信頼は失われる。
(5)消費増税を先延ばしにする代わりに、無駄な歳出のカットと大胆な構造改革路線(農協・医師会・電事連の利権を剥ぎ取る)を打ち出すと、どうなるか。
市場は、政府の強固な意志を好感し、そういう政府ならばいくらでも増税できるだろう、と予想する。稼ぐ力ができるから、増税の力もできる、と見られる。日本への信認は失われない。
(6)増税実施の是非は本質ではない。重要なのは、既得権と闘って、痛みを伴う成長政策を実行できるか、だ。ねじれ解消後3年間選挙をしなくてすむ安部政権にはその期待がかかる。
しかし、期待は満たされないだろう。2012年の総裁選で、石破茂に次ぐ二番手だった安倍晋三が、決選投票で逆転して総裁になれたのは、自民党の長老や派閥領袖たちが、「安倍なら無茶苦茶なことはしないだろう」と支持に回ったからだ。
今、世界が期待しているのは、無茶苦茶なこと(これまでの自民党をとりまく既得権益層の岩盤を突き崩して痛みを伴う改革をすること)だ。
自民党守旧派長老たちが安倍支持に回ったのは、それはできない、と読んだからだ。
しかも、参院選比例区では、農協、郵便局、医師会、歯科医師会などの候補が軒並み上位当選した。今後は団体へのご恩返しの政治が始まる。
その結果、成長戦略は不発に終わる。
(7)安部政権は、この秋、投資減税で時間稼ぎを図り、「これからが本番」と称して、「守旧派と闘う総理」を演出するだろう。
しかし、最近本気で日本ウォッチを始めた海外メディアは、日本のメディアと違い、政権のポチではない。演技は早晩見抜かれる。
その先に待ち受けるのは、消費増税実施の如何を問わず、市場の信認を失う日本だ。
□古賀茂明「安部政権の「演技」が見抜かれる日 ~官々愕々第74回~」(「週刊現代」2013年8月17・24日号)
【参考】
「【官僚】公務員宿舎の「守護神」 ~霞ヶ関文学~」
「【原発】新潟県知事を攻撃する官僚の手口 ~問題点を隠蔽して再稼働~ 」
「【原発】電力会社を救済する経産省の幹部たち ~利権~」
「【原発】電力、経産省、メディア・・・・の嘘、今も」
「【官僚】マイナンバーで焼け太る官僚とITゼネコン」
「【沖縄】 「普天間基地返還の時期明示」の欺」
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だが、消費税をどうするか、と同時に議論すべきもっと重要な問題がある。
(2)アベノミクスのおかげで日本経済に急に活気が出てきた・・・・ように一見見受けられる。
しかし、異次元の金融緩和の効果はマクロの世界の、しかも名目でのこと。これで国民生活が豊かになるわけではない。
財政バラマキも持続可能な政策ではない。
実質の世界で景気を本当によくするには、第三の矢(成長戦略)が放たれなければならない。
経済音痴の日本のマスメディアは、金融緩和による円安と株高に熱狂し、構造改革に無関心だった。
他方、欧米メディアは、当初から、アベノミクスを高く評価していた・・・・ただし、構造改革をセットで実施することを前提として。
(3)財務省は、消費税を上げなければ日本への信頼が失われる、という。
しかし、これは正しくない。
消費増税だけなら、ギリシアもイタリアもスペインもやった。けれども、彼らは財政危機に陥っている。借金の額もGDP比率も、問題の本質ではない。市場に見放された原因は、彼らが経済成長のための構造改革を怠り、借金を返す能力を失ったからだ。
(4)自民党の消費増税派の大半(麻生財務相がその筆頭)は、構造改革反対派だ。彼らにとって増税の目的は、財政再建ではなく、バラマキ原資の確保だ。
官僚も同じだ。
自民党の構造改革反対派と官僚は、増税による景気の腰折れ防止という名目で、さらなるバラマキをするから財政赤字は縮小しない。
再来年の消費増税もあるから、バラマキ継続になって、結局財政再建はできない。
この結果、さらなる増税に向かう。かくて、市場の信頼は失われる。
(5)消費増税を先延ばしにする代わりに、無駄な歳出のカットと大胆な構造改革路線(農協・医師会・電事連の利権を剥ぎ取る)を打ち出すと、どうなるか。
市場は、政府の強固な意志を好感し、そういう政府ならばいくらでも増税できるだろう、と予想する。稼ぐ力ができるから、増税の力もできる、と見られる。日本への信認は失われない。
(6)増税実施の是非は本質ではない。重要なのは、既得権と闘って、痛みを伴う成長政策を実行できるか、だ。ねじれ解消後3年間選挙をしなくてすむ安部政権にはその期待がかかる。
しかし、期待は満たされないだろう。2012年の総裁選で、石破茂に次ぐ二番手だった安倍晋三が、決選投票で逆転して総裁になれたのは、自民党の長老や派閥領袖たちが、「安倍なら無茶苦茶なことはしないだろう」と支持に回ったからだ。
今、世界が期待しているのは、無茶苦茶なこと(これまでの自民党をとりまく既得権益層の岩盤を突き崩して痛みを伴う改革をすること)だ。
自民党守旧派長老たちが安倍支持に回ったのは、それはできない、と読んだからだ。
しかも、参院選比例区では、農協、郵便局、医師会、歯科医師会などの候補が軒並み上位当選した。今後は団体へのご恩返しの政治が始まる。
その結果、成長戦略は不発に終わる。
(7)安部政権は、この秋、投資減税で時間稼ぎを図り、「これからが本番」と称して、「守旧派と闘う総理」を演出するだろう。
しかし、最近本気で日本ウォッチを始めた海外メディアは、日本のメディアと違い、政権のポチではない。演技は早晩見抜かれる。
その先に待ち受けるのは、消費増税実施の如何を問わず、市場の信認を失う日本だ。
□古賀茂明「安部政権の「演技」が見抜かれる日 ~官々愕々第74回~」(「週刊現代」2013年8月17・24日号)
【参考】
「【官僚】公務員宿舎の「守護神」 ~霞ヶ関文学~」
「【原発】新潟県知事を攻撃する官僚の手口 ~問題点を隠蔽して再稼働~ 」
「【原発】電力会社を救済する経産省の幹部たち ~利権~」
「【原発】電力、経産省、メディア・・・・の嘘、今も」
「【官僚】マイナンバーで焼け太る官僚とITゼネコン」
「【沖縄】 「普天間基地返還の時期明示」の欺」
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