語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【経済】年々減る給与、年々増える会社の貯金 ~企業の内部留保金300兆円~

2012年02月03日 | 社会
 この10年間、億万長者が激増する一方、会社員の年収は下がりっぱなしだ【注1】。
 この10年間、労働者の賃金が下がり続けたのは、先進国では日本だけだ。
 この間に好景気(いざなみ景気)もあったのに。GDPは微増しているのに。

 他方、バブル崩壊以降、大企業は会社員の給料を下げ、リストラし、それでいて、しこたま貯蓄を殖やしてきた。
 企業は300兆円近くを貯金している。
 企業の利益から配当や役員賞与を払った残りの「内部留保金」は、2002年には190兆円だったが、2008年には280兆円に膨れ上がった。たった6
年間で1.5倍だ【注2】。

 これは異常な数値だ。
 米国の企業の手元資金は、162兆円だ(2010年末)。日本企業の内部留保金は、米国の2倍近くあるのだ。米国の経済規模は、日本の2倍だ。つまり、経済社会における割合としては、米国の実質4倍の内部留保金を持っていることになる。
 米国の162兆円の手元資金も少ない額ではない。リーマン・ショック以降、企業が資金を手元に置きたがる傾向があって、膨れ上がったのだ。この巨額の手元資金が米国経済の循環を鈍らせ、雇用環境を悪化させている、などと指摘されている。
 実質その4倍の内部留保金が日本経済に与える悪影響は、推して知るべし。

 この巨額の内部留保金は、日本経済の金の流れをせき止め、景気を悪くしている要因でもある。
 そして、企業は自らのクビを絞めている。経済キャパシーが小さくなれば、競争が激しくなり、必然的に収益も小さくなるのだ。
 企業が金を貯めこむ。→ 世間に金が回らない。→ 景気が冷え込む。→ 企業の収益が先細りしていく。

 企業の貯金=内部留保金は、世間が企業の商品を買ってくれたから生じたものだ。儲けをまったく還元せずに、ひたすら貯めこんでいるのだ。
 内部留保金は資産であって、全部吐き出しても、すぐに会社が動かなくなるというものではない。
 300兆円は、これはじつに巨額で、日本国民全員に250万円ずつ配れる額だ。4人家族なら1,000万円だ。その1割を差し出せば、復興費は賄える。
 消費税を今の倍にしても10兆円の税収にしかならないが、大企業の貯金を1割切り崩せば30兆円。消費税を増税する必要は、ちっともない。

 【注1】国税庁「民間給与実態統計調査」
 【注2】財務省「企業統計調査」

 以上、武田知弘「ピンハネされているあなたの給与! ~数字が見抜く理不尽ニッポン 第6回~」(「週刊金曜日」2012年1月27日号)に拠る。

 【参考】「【経済】税制が作った“富裕老人”400万人
     「【経済】消費税は失業者を増やす
     「【経済】「億万長者激増」の原因 ~税制~
     「【経済】「億万長者激増=景気低迷原因」説 ~日本に5万人の億万長者~
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