ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

あん…「れ?」

2011-08-22 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
消せない不安から、彼女の前から隠した。それを…「分かった」と頷き、すっと脇差を取り、横に寝かせて彼女に渡した。
能子「御預かり致します」一礼し、刀を持った。ズシッ…少し重い。
数歩下がって立ち上がり、義兄を見た。そして、私の、刀の使い方をお見せします、と目で伝えて「ちょっと、借りるわね」と、
継「あ…」と、鉢巻をひょい取り上げ、舞台中央に進み座った。刀を置き、鉢巻をかざし、きゅっと縛った。この井出たちは、天岩戸の神楽、舞装束だった。
カタッ、神域と俗界に一線を画するように脇差を手前に置き直し、月見台に座する神々に礼した。顔を上げ、姿勢を正し、大きく息を吸い込み、
ふぅ…と呼気を出して緊張を解し、刀を手に持った。そして、立ち上がり、
すぅ…と吸気と共に神力を入れて抜刀し、立てに構えた。
高らかに掲げた刀は月光で、キラリ、光った。それは、刀が月光を吸い込み、私の手を通して血流と共に力が流れてくるようだった。刀に神気宿るとされるのは、この事かもしれない。
バンッ、足踏み(地鎮)の合図で舞い始めた。それは、東北伝統の鎮魂舞、
池田「剣舞(けんばい)…」東北 奥州平泉の没落した源氏氏族の鎮魂舞で、念仏舞踊ともいう。
継「ほえぇ」刀の型が美しく「やっぱ、血は争えネェな」ツネと同じ、太刀筋がいい。
能子「ハッ」と胎から一声上げて、刀を斜めに振り下ろし、神域と俗界の結界を断ち切った。この宴の場に神と人の境はいらない。我が身に神を降ろし神人一如の神がかり(神楽)舞、これこそが人が神に変わる瞬間で、私の体は無となり、体を神に預けて舞に酔う。
シャンシャン…腰につけた巾着の鈴が激しく鳴り、無という空間の中に住まう鬼(おん)が、目には見えない影が切りつけられ、泣くようで、
シャンシャン…シャンシャン…この泣き声で、人の弱さを深く知る。強く在りたい、乗り越えたい、弱くなった己の影を切って、切って、絶ちきり、生まれ変わり(再生し)たい…その一念で刀を振る。ズシリと重かった刀はいつしか重さが無くなり、軽やかに空を裂いていた。
次第に次第に陶酔し…夢幻と現(うつつ)の中で、私は神に酔いしれた。無の中で神が酔いから醒めるまで、どのくらい舞っただろう、時空の感覚が無くなり、体が自然に動き、回り回って舞となり、刀が風を巻き起こし龍が嘶く。刀が龍に化わり、天地裂く、その割れ目から己の影が消えていく。スッと足を止めた刹那、リン…鈴の音が、小さく泣いた。最後の鬼が消えて、チン…刀が鞘に収まり、神の酔いから覚めた。
「ふぅ」と息を付き、我に返り、初めて、神がかりが終わった、と気付いて…あん「れ?」

平家の御霊鎮魂舞

2011-08-21 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
畳まれた着物とその上に扇を置いて「美しい着物です」と志津さんに返した。
志津「その長身には、ちょいと窮屈だったね」と笑って、受け取った。
池田「…」それには何とも言えず、苦笑で返した。そこに、能子がスッと横に座り、杯を渡して来た。杯を受け、彼女から注がれた感謝の酒を受け、飲み干した。乾いた喉が潤い、酔いが体に浸透して、かぁと熱くなった。能子の目と頬も、赤く染まっていて、
継「ふ…ん」と一気に酒を流し込み、そういう言葉無くとも心通い合う二人に、こんな時代じゃなかったら、なぁ、与一。ついつい余計な事を考えてしまって、富樫に小突かれた。
富樫「月夜は、長ぇんだぞ」と注意され、なみなみと酒を注がれた。
そこへ、志津「ほら」ドンッと背中を押されて「次、アンタね」ビチャと酒の飛沫が上がり、継「ぶッ」吹き出した「はぁ?俺ぇ?」ぶんぶんッ「舞えねぇッ」て顔と手を同時に振った。
スクッと立って、富樫「仕舞い※でいいなら…」と舞台に向かった。※略式舞
乱された心を和やかに、心静かに舞うは幸若(こうわか)舞『敦盛』だった。
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思えばこの世は常の住みかにあらず
草葉に置く白露 水に宿る月よりなほはやし
金谷に花を詠じ 栄花先(さきだ)って無常の風に誘わるる
南楼の月をもてあそぶ輩も 月に先って有為の雲に隠れり
是を菩提の種と思い定めざらんは 口惜しかりし次第ぞと重い定め…
人間五十年 化天(第六天の寿命)の内をくらぶれば 夢幻のごとくなり
一度生を受け滅せぬ者の有るべきか…
死のうは一定 しのび草には何をしょぞ 一定語りおこすのよのう
(生ある者死ぬ定め、人生50限られた生の中で死に囚われる事無く生きる…それが、悟り)
※本能寺の変、織田信長様がよくよく舞っておられた小歌『幸若舞 敦盛』の1節です。
当時、人生50年と言われていました。49で自害なされた織田様です。彼なりに生と死を悟っていたのではないでしょうか。
志津「新旧舞踊対決かい…女の叫びと、男の宿命(さだめ)。どちらも…淋しいね」
能子「お義兄様」源氏方が平家の御霊慰める、その舞に深く深く感謝して酒を注いだ。
富樫「おう」彼女の気持ちと酒を受けて…「で、能子は、何を舞う?」クイッと酒を飲んだ。
コトッ「では、」酒を床に置き、池田さんの外した襷を締めて、能子「刀をお貸し下さい」
富樫「…」さっき、自刃するのではないかと短刀を取り上げた。その刀を…、

月光

2011-08-20 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
富樫「こっからの方が、よく見えるな」酒を持って、
志津「宴らしくなって来たね」と席を移動して来た。二人が着席したのを見計らい、
池田が舞い始めた。それは、能子「月光…」の舞だった。
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I am GOD’CHILD…私は、神の子、なのに…
この腐敗した世界に堕とされた
How do I live on such a field…?こんな場所でどうやって生きろというの?
こんなもののために生まれたんじゃない
「理由」をもっとしゃべり続けて、私が眠れるまで
効かない薬ばかり転がっているけど、ここに声もないのに…、いったい何を信じれば?

I am GOD’CHILD…私は、神の子、なのに…、悲しい音は背中に爪痕を付けて
I can’t hang out this world…?この世に何を捧げろというの?
こんな思いじゃ、どこにも居場所なんて、無い
不愉快に冷たい壁とか、次はどれに弱さを許す?

最後(終わり)になど手を伸ばさないで、貴方なら救い出して、私を静寂から
時間は痛みを加速させて行く---鬼束 ちひろ
能子「あ…」ぽろ…っと涙が出た。昔から、そうだった。池田さんはこうして、私の気持ちを汲んで、慰めてくれる。私の心を受け、代わりに舞って、今も昔も変わらず、あの人らしくて…。ぽろぽろ…っと、さっき散々泣いたのに、止め処なく、溢れ流れる涙に、月にも誰にも見られないようにぬぐったけど、ぬぐい切れずに、ぽッぽッ、地面に落ちた。
今更ながら、自分の涙と心の堪え性がなく、脆く弱くなったな…と痛感した。
それを見て見ないフリした継に「ふ」と酒を差し出し、能子に聞こえないように、富樫が「雅な野郎だな」と酒を注いだ「平家は昔から戦を好まず、温和だと聞いたが…、」
志津「舞には芯がある」富樫に酒を差し出した。だから、
富樫「頑固なだけだ…」ぶっきら棒に(どっかの姫様と同じで)と、くいっ、酒を飲み干した。
トクトク…なみなみと酒を注いで、志津「アンタたち、時代を間違えたね」
富樫「間違っちゃいない。こんな時代だから…」顎で池田を指し「奴みたいなのが生まれる」
舞台から下がって来た池田が「継さん、舞台、ありがとうございます」と頭を下げた。

紅白舞踊合戦 開幕

2011-08-19 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
咳をして「あ?あぁ…なんだ?」目を白黒させて、トントン、胸を叩いた。
池田「特設舞台、作って下さい」すっと、エプロンを外して、
継「ほぇ?」
池田「舞いたい気分なんです」しゅる…と襷を解いて、パサッと置いた。
継「っしゃ、即席 曲水の宴か。ちょっと待ってろ」と席を立ち、志津さんの所に向かった。
すると、二人は一緒に旅館の中に入って行き、しばらくして、継さんは次々に板を運び、舞台を作り始め、志津さんは風呂敷包みを持って、先と同じ富樫の隣に座った。
見る見るうちに出来上がっていく舞台を、池田をじっと見ていた。
曲水の宴…元々貴族の嗜みだった。小川で和歌を詠み、歌を流す。流れ着いた歌を受け、返歌をさらに流す。歌に籠めた思いを夜通し繫ぎ合う…一つの遊びだが、
能子「風流ね」
雪洞に照らされたほとりの舞台では奉納舞が行われ、神に遊ばす。それが、神宴である。
舞台照明は四つ雪洞、それを四隅に置いた。前方二つの照明は高く設置し姿面を照らし、後方二つの照明は月光と共に背と足元を照らすよう低く設置された。舞台に明かりが燈り、志津さんから受け取った風呂敷包みを持って、継が戻って来た。
ヘッと左腕を突き出し、継「どんなモンだ」と力こぶを見せ付けた。
池田「ふ…」肩の傷で、刀を振り上げる事は出来なくなった。その代わりに、金槌を持つようになり、力と、そのセンスが生かされた。その変わり身に…「見事ですね」と讃えた。
継は風呂敷包みを解き、志津さんに借りた着物と扇を池田に「ほれ」と見せた。それを見て、
池田は、しゅる…と結っていた髪を外し、きゅっと高く結い直した。
バサッ、真紅の、その着物を羽織り、クッと軽く力を入れ、扇を開いた。
その扇の柄は、濃紫金箔の風月…まるで今宵の月夜の写し絵に、
池田「悪くないです」パチン、扇の感触を確かめ、舞台に向かった。
彼を目で追いながら、能子「白拍子舞ね」と言った。
白拍子舞とは古代日本神話の日本武尊(やまとたけるのみこと)が女装して舞った事が起源で、そこから男が女に、女が男に変装して舞います。舞い手は男女問わず巫(かんなぎ)と呼ばれる神に使える者たちが奉納し、場の雰囲気、心や音に合わせて、歌を詠み即興で舞います。
(義経の妾 静御前は、白拍子です)
「彼、能も素敵だけど白拍子舞も素敵なの」憧れの花形、女形役者を見るような遠い目に、
継「ほぉ…ん」いいのか?能ちゃん、ほっといて…と、心の中で与一に告げ口した。そこへ、

ありがたい助け舟のはずが…

2011-08-18 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
継「毒薬…」
池田「解毒剤を開発するための…毒薬を」
継「弟が作っていた」
池田「すみません」
継「何でお前が謝るんだよ」
池田「兄…だから。そうでしょ?」
継「…」俺にも弟や、妹がいる。当然「そう…する、な」クイッと、酒を飲んで、
池田「匠は父を知らない。捨てられたと思っている。その上、養子に出した…池田からも見放されたと思っている。それでッ」言葉を途中で切った。
継「わっ!?」と驚いた、後ろに、
チリン…
能子「お酒、注ごうと思って」その、聞いちゃいけない話だった…「ごめんなさい」
継「能ちゃん、足音…させないよな」
池田「抜き足※で」※足を滑らせるように運び、音を消します「舞う時の癖が出るんですよ」能子「そうなの」ス…と継さんの隣に座って、お酒を注ぎ、今度は池田さんの隣に座った。
継「だから、鈴を持ってるのか?」
能子「これは…」池田さんにもお酒を注いで「母が、私たちに持っているように、と…」
池田「…」ゆっくり目を伏せ、同時に軽く礼をした。
継「常盤様がくれたのか。俺はてっきり与一のためか、と…ッ」ハッとして言葉を止めた。
能子「それはそうよ」自然に声のトーンが高くなって「私の居場所“夫に”知らせないと」
自分に言い聞かせてるみてぇだけど、チラッと池田を見たら…、継「…だよな」
池田「…」その動揺の声を聞きながら、注がれた酒を見つめて、笑ってた。
能子「ねぇ。この料理、二人が作ったんだって」指で一つ摘んで、パクッと口に「美味しい」
継「男は見た目じゃ分からねぇ、重ねて味が出るってな」能ちゃんもどう?と進めた杯に、
ゆっくり、首を横に大きく振って、能子「私…その、」躊躇した。すると、
池田「体質的に、飲めないんですよ」と、助け舟を出してくれた。
能子「う…」ありがたい助け舟のはずが…「…ん」うつむいてしまった。
継「ふぅ…ん」それを見て、杯を引っ込め、パクッとつまみを急いで口に運んだら、
池田「…」コトッと杯を置き「継さん、一つ、お願いしてもいいですか?」
継「うぐっ」いきなり、継さん、って名前で呼ばれて、つまみが喉に詰まった「げほっ」

幸福を呼ぶ鈴の音、毒の根

2011-08-17 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
志津「シャッ」と杯を持ち上げ、富樫「おめぇらがおせぇからだ」すでに一杯飲んでいた。
能子「…」という事は、さっきの、やはり見られた。チクッ、なんだか後ろめたい。ビクッ、
池田「さ…」と促された手に、
能子「わ、」驚いた。池田さんから離れて「私、ここね」と志津さんの隣に座った。
継「くっ」と笑って、小さく「上手く逃げられたな」と、杯を出した。
池田「…」彼の、特等席の隣に座って、杯を受け取り「覗き見ですか」ふぅ、酒を催促した。
継「月、見てたら見えちまった」俺のせいじゃねぇぞ、月明かりのせいにして酒を注いだ。
池田「…。先ず、うちのが、ご迷惑お掛けしております」と頭を下げた。
継「迷惑被(こうむ)ったのは、賀茂女だ」
池田「かもめ…あの子、安倍賀茂一族…?」
継「ご名答、陰陽師の卵だ」
池田「陰陽師…、だから」
継「弟…まるで自分が毒盛られたような、悲痛な顔して賀茂女を診てたぞ」
池田「…。その昔、行者たちが滋養強壮のために食べていた植物、ご存知ですか?」
継「行者ニンニク?」
池田「えぇ。あれに酷似した花があります。君影草…」
継「あぁ…確か、白い鈴の鳴る花…」
池田「鈴蘭…美しい外見に惑わされ手を伸ばし口に含むと吐き気、めまい、頭痛…挙句、心臓麻痺に見舞われ、苦しみの後、死に至る。皮肉な事に、その鈴音は幸福の呼ぶといわれる」
継「まさか、蠱毒って、」
池田「その根から毒を採取しています」
継「なんで、毒なんかッ」
池田「なぜ、この世に毒虫が存在するか…考えたことがありますか?」
継「外敵から身を守るため…」
池田「敵を毒殺し、我が身を守る。毒を持つものは、己の毒に殺(や)される事はなく、毒に対して抵抗(免疫)力が備わっている。それを、血清(けっせい)といいます」
継「賀茂女には、その血清があるっての?」
池田「血清が出来たか、どうかは…診てみないと何とも…。ただ、今までそれが出来なかった。それは毒を盛ってみないと血清の存在が確認できないからです。人体実験するわけにも行かず…だから、あれは門外不出の毒薬だった」

惚れたろ?

2011-08-16 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
賀茂女「嫌味ぃ」
匠「出しゃばってくるな」
賀茂女「で、毒なわけ?死にかけたぁ」と、傍に置いてあった小さめの弓を手に持ち、
匠「死なない程度の毒だと、」
賀茂女「ふんッ」と思いっきり弓を引いた。けど「意外と、力…いるんだ、弓道って」
ぐぐうぅと力任せに引いて…、
匠「…危ないよ」弦が切れて、顔や腕に弾く。
賀茂女「私が死のうが、怪我しようが、匠君、平気でしょッ!」さらに力いっぱいに引いて、
匠「危ないってッ」賀茂女から弓を取り上げ、
ごめん…、
カランッ、乾いた音を立てて弓が地面に落ちて、
チリーン、義経さんから貰った五十鈴守が鳴った。
賀茂女「や…」っぱり、匠君が、分からない。
月下光を遮る大きな影に包まれて一つになった影が、ゆっくり二つになって、
池田さんが、私の顔から、手を放した。
能子「…どういうつもり?」
池田「分かっていて聞いているんですか?」
能子「はッ」と息を呑み、言葉を止めた。それは、
継「遅ぇッ」向こうから、ゆっくり歩いて来たから。
能子「その…」場を取り繕うのに「継さんまでエプロン?」襷に、ねじりハチマキ、お祭りでよく見かけるような、粋なお兄さんという感じで「ステキよ」と言ったら、
継「惚れたろ?」とウィンクして見せて、ふっと視線を逸らし、背を向けた。
能子「…」見られた…かも、知れない。
継「早く来いよ」急かして、(クイクイッ)と右手で合図を出し、案内してくれた場所は、
能子「わぁ♪」まるで、京 嵯峨の観月の広沢池のような、
池田「月見堂、ですか」水面に美月の横顔を、目を細めて見つめていた。
能子「継さんって、スタジオプロデューサーみたいね」
演目『清経』の舞台は蝋燭を使っていた。今回は雪洞(ぼんぼり)…優しく灯る光が、月光を邪魔せず、それでいて存在感があって「幻想的…」
継「蔵に仕舞ってあったやつ、組み立てたんだ」サッと特等席に座り「先に飲むなよ」

縁の地

2011-08-15 | 日記
はい。こんにちは。
松郷本家のお墓参りに行って参りました。
本家のまん前は神社さんで、そこに今年の皆様の短冊を奉納して来ました。
パンパン、と。
夫婦円満・恋愛成就で有名な櫛稲田姫の神社ですよ。
水神の巫女で、スサノオの奥方様となった方で、
て、ほら、妖怪好きなら知ってるでしょ?
八つの頭を持つ大きな蛇神に酒をしこたま飲ませて、酔い潰し、首を切り落とし…、
櫛稲田姫「あ、あぶない!」と櫛※を投げ付け、大蛇に致命傷を与え、
怯んだ隙に、スサノオがズババババッと、見事に八岐大蛇を退治して、
その後、二人は結婚したって神話です。
ちなみに本編の酒呑童子さんは、八岐大蛇の息子です。

※髪飾りや櫛は、神かざしといわれ、昔から巫女さんの舞装束にもなっております。
これは、巫女本家本元 元祖のアメノウズメの鉢巻に草花を付けたのが起源です。

さ、それはまた後に出てくるお話です。先に進みましょう。
串田神社をちょい通り過ぎると、古戦場があります。

うぉ…喉が乾いた、と熱中症かどうかは定かではありませんが、
兵士がばったばた倒れる様子を見て、
ふんッと岩に弓を打ちます、
するとどうでしょう、
どばばぁ~と水が湧き出たではありませんか!?
(ありえませんッ)

「みな、飲め(煮沸してからな)」By 義仲

ここは、平家討伐のため倶利伽羅の合戦に向けていざ行かんと、富樫と大暴れしに行く途中で立ち寄った、名水百選に選ばれている湧き水です。
知っていましたか?あの二人、とってもフレンドリーな戦友なんですよ。
知ってる人は、もうすでに、ここで流しそうめんを食べているかもしれませんね。
ちなみに、喫茶店もありました。珈琲なんていいですね。

『弓の清水』です。

義仲様がブチ当てたらしいですが、昔の偉人で、奇人が多いですね。
弘法大師様も似たような事を金剛杖でやり遂げ、やはり、名水百選に選ばれております。
こう考えると、古人は、とんでもない魔法の弓矢やら、ステッキやらを持っていたのでしょう。
「なんて、ファンタスティッキ」なんてね…(面白くないッ)

というわけで、お盆です。
ご先祖様の供養と御霊鎮魂と参りましょう。

種明かし

2011-08-15 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
それを木陰からコッソリ見ていた、弁慶「何やってんだ、アイツら?」と首を傾げていた。
匠が両手でグイッと強引に、賀茂女の顔を鷲づかみ、ベッと下瞼を下げて「異常なし」と。
賀茂女「ちょっとぉッ!」ブンッ!と大きく左腕を振り回して振り払おうとして、
パシッと、その手首を掴んで、匠「シッ…」静かに、と合図を出して脈拍測定、
「心拍数…上がってる?」赤みが差している彼女の顔を覗き込み、体温を、おでこで確認、
賀茂女「また、仕込むつもり?」バチンッ、と匠君の手を払い除けた。
匠「君に“また”は通用しなくなった」
賀茂女「え?」
匠「血清だ」
賀茂女「けっせい…?」
匠「ふ…」と的に向き直り、練習の「邪魔…」シッシッ、と彼女を追い返した。その態度に、
賀茂女「ム…」と来た。今まで、私を”ちゃん”付けで呼んでいたのに“君(きみ)”に呼び方が変わってるし、見えない壁を作られたようで腹が立った。けど、看病してくれたお礼を、と「これ…」右手に持っていた笹の葉に包まれたおにぎりを差し出したら、
匠「いらないッ」早口で、突っ撥ねられた。
そう来るな、と思ったから、賀茂女「ちぇッ」舌打ちして「見破られた…」と言ったら、
匠「…」賀茂女のおにぎりを引ったくり、無言で食べ始めた。
賀茂女「…夕食、全然、食べてなかったでしょ」
匠「毒、仕込み忘れた?」一つ目のおにぎり食べ終え「それとも、ロシアンルーレット?」
二つ目のおにぎりをかじった。どっちも平気だよ、と横目で睨んで、
賀茂女「ファーストキス…だったのに、」睨み返した。
匠「へぇ。海尊とは、まだだったんだ。ふぅ…ん」と、二つ目のおにぎりを食べ終えた。
賀茂女「そんな仲じゃないもんッ」
匠「そ…」包んでいた笹…いわゆるゴミを突っ返し「でも、海尊は、そう思ってないよ」
賀茂女「知らないッ」左の舌瞼をンベッと出して、あっかん「べッ」舌を出したら、
匠「君に仕込んだ、あれ…君影草から作った」左手に矢を持ち、キリッ、番えた。
賀茂女「君影草…?」
匠「知らない?君とは正反対、出しゃばらず、去っていった男の影を見つめ、失恋の傷を癒し、いつか訪れる幸せを慎ましやかに待つ女の姿だよ」
キュー…ン、シュッ…ビシュ、中央を射抜いた。

影を落とす兄弟!?

2011-08-14 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
「すみか…」を見たら、彼女は海尊に染を教えていた。ほっと、耳に入ってない…と思う。
心配で、しばらく、彼女から視線を外さなかった。宝のはずの子は売られ、遊郭で働いていた。当時、12…だって、な。俺には、その親に売られた子が、あんな笑顔を見せられるか、偽りの笑顔なのか、計り知れず…。そんな俺の気を察したか、土岐さんが沈黙を破り、
土岐「明後日、私たちまで呼んで頂き、ありがとうございます」さりげなく、話を逸らした。気の利いた奴で、安心した。義経「その後、無礼講だ」飲める口だろ?と目で聞いたら、
土岐「はは…」と、引きつった笑いを見せた。
義経「…?」飲めないのか…と聞こうとしたら、キリッ「ん!?」
キュー…ン、シュッ…ビシュ、弓矢番え、射抜く音が聞こえた。
斯波「誰だ、こんな夜に?」こっそり、弓道場を覗いたら「おい、例の問題児…」
義経「匠、だろ」
“池田とは、親父が違うンだとよ”
血の繋がりをとことんまで見せられ、家族みたいにわいわい夕食を、ってのは複雑な心境だろうな。夕食をほとんど口にせず、席を立ってしまった。
忠「名 サウスポー?」
義経「あぁ。月山の洗礼で本性、出ちまった」しかも、奴を両利きに育てちまった。左腕に自分の鷹 火鷹、右腕に賀茂女の隼 黒栖を乗せて、巧みに操るアイツに感心してる場合じゃなかった。賀茂女に毒を仕込んだ。賀茂女の腹は治ったが…、今、二人を接近させるのは…、
“賀茂女ちゃんとの修行、とても楽しかったよ”
危険だな。チラッと海尊を見たら、
海尊「ふんッ」荒っぽく、生糸の束を絞って、空気を入れて、
すみか「糸に伝わりますよ」と注意されていた「優しく空気を入れると、きれいに染まるんです」と微笑んだ。まるで紅花のように、花咲く笑顔で、ただ一人だけ、それを見ないように、背を向けて、弓道場の様子を探ってる奴がいた。
義経「…」そんな背中見せンな、心の中で斯波に注意したら、
斯波「おいッ」と小声で俺を呼び、顎で(見ろッ)と弓道場を覗くように指示を出した。
こっそり覗くと、義経「(賀茂女?)」と、忠「(匠ッ!?)」顔を見合わせ、
斯波「(…どういうこった?)」と土岐に聞いたが、土岐「(さぁ…)」知る由もない。
海尊「え゛!?」と青ざめ、すみか「キャッ」頬に手を当てて、頬を紅く染めていた。
弓道場では松明の炎に照らされ、二人が一つになって、黒い影を落していた。