労組書記長(←元)社労士 ビール片手にうろうろと~

労組の仕事している勤務社労士がもしや誰かの役に立ってるんかな~と思いつつ飲んだくれて書いてるっす~(* ̄∀ ̄)ノ■☆

【メモ】水町勇一郎教授最終報告「日本労働法の歴史と課題」②課題

2024-03-21 | 書記長社労士 お勉強の記録

【メモ】水町勇一郎教授最終報告「日本労働法の歴史と課題」①歴史 からの続き
【21🏃Run5-12 5.70km 33:21 皇居】 東京大学社会科学研究所を年度末をもって退職をされる、水町勇一郎教授の最終報告が、3月15日、東京大学本郷キャンパス 法文 2 号館 31 番教室にて開催されたので、聴きに行ってきた。(4月から早稲田大学へ)
タイトルは「日本労働法の歴史と課題」。
その内容の【メモ】2回目。


Ⅱ 課題 ⇒工場労働を前提とした集団的保護ではカバーできない ⇒労働法の見直しが必要
1 世界(欧米先進諸国)の課題
〇グローバル競争と格差社会 ⇒低成長と社会的排除
□差別禁止政策(action plan,accountability,disclosure) ⇒罰則的なものではなく、PDCAを回しながら改善でアプローチ
□セーフティネットの整備(personal support service,mutual obligation,basic income) ⇒困った人にお金を出すのではなく ⇒パーソナルサポート(訓練➡就職活動➡働く)
〇経済と社会の連動・複雑化 ⇒デフレスパイラルが転機 ⇒格差是正・最低賃金アップ
□経済政策・社会政策と労働政策の融合(ex. アメリカ:EITC、イギリス:Universal Credit、フランス:RSA,prime d'activité) ⇒給付付税額控除
□市場と連動した労働政策(企業情報公表、優良企業認定、政策上の優遇) ⇒企業の努力を公表➡インセンティブを与える
〇デジタル化と労働法制 ⇒工業化でできた労働法=同じ場所で指揮命令➡ネットワーク(場所・時間が異なる、分散型、フラット化)
□労働法制の基盤の見直し(「労働者」概念、「使用者」概念等) ⇒労働法上の責任 ⇒事業場の概念
□プラットフォーム就業者等の保護政策 ⇒フリーランス⇒労働法の労働者でない場合
□デジタル化(AI・アルゴリズム)への対応(アルゴリズムによる監視・管理、個人情報・プライバシーの浸食、内在する差別からの保護等) ⇒ウェアラブルデバイス(スマートグラス・スマートウォッチなど)で情報がとられる、あるいはプロファイリング ⇒情報を身ぐるみ剥がされる ⇒労働法でどう対処するか? ⇒繋がらない権利

2 日本の課題
〇世界的課題と日本の対応 ⇒共通
□背景と政策の方向性の類似性 ⇒日本は諸外国と比較
□課題と対応の内容、速さ ⇒一周遅れ、二周遅れ
〇日本に固有の課題 ⇒労基法が守られていない! ⇒ほとんどの職場に労働基準法が存在していない
□労働法の実効性確保システム
・労使関係(企業別労働組合の限界と不存在) ⇒労働組合が現場で監視 ⇒しかし日本は呉越同舟(ストが少ない) ⇒フランスより日本は組織率高い、しかしフランスは産業別組織 ⇒日本の99人以下の中小企業の組織率は0.8% ⇒ネットワークの活用で改善できないか ⇒「企業内労組から産業別労組➡自発的展開で横に拡がる・デジタル化➡フリーランスが鍵➡労働協約の地域的拡張適用・労働者代表のあり方」
・行政監督(労働基準監督官等の人員の少なさ) ⇒ILO基準=労働者1万人で1人 ⇒日本は労働者6000万人で3000人 ⇒2万人で1人 ⇒日本には516万事業場 ⇒監督官が毎日1か所回っても(物理的に無理だが)7~8年かかる
・裁判所(裁判所利用率の低さ) ⇒日本では6500件/年の救済、仏で12万件、独で26万件 ⇒メンタリティの課題よりシステムの課題
□分権的社会秩序(企業共同体)を重視した労働法
・日本的雇用システム(正社員中心主義)がもたらした弊害 ⇒「過重負担⇔非正規」 ⇒格差、教育、低賃金、エンゲージメントの低下 ⇒同一同一
・労働政策決定におけるコンセンサス重視がもたらした弊害 ⇒共同体的決定 ⇒抜本改革ができない ⇒欧州なら「労使が反対してもマニュフェストで法制化」「法改正されなくても産業別労使で労協化」 ⇒だから日本と違って欧州は早い
・フィクションとしての労使関係と労働法の空洞化

3 労働法改革の方向性
〇世界的課題に対する機動的・動態的な対応
□山積する中長期的課題
□労働法学(社会法学)の役割と政治の役割 ⇒これまで出来ていない、やって来なかった
〇労働法の基盤(実効性確保システム)の整備
□現場での対等な交渉・調整の基盤となる労使コミュニケーションの場の構築
□働く人の健康や人権を守る行政や裁判所の機能強化 ⇒現場に任せられない
□市場やデジタル技術を生かした法政策の整備・構築
➡多様でスピードの速い社会変化に対応できる重層的な労働法の基盤の整備

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【メモ】水町勇一郎教授最終報告「日本労働法の歴史と課題」①歴史

2024-03-19 | 書記長社労士 お勉強の記録

【19🏃Run4-11 5.63km 34:22 五反田大崎品川】 水町勇一郎教授が東京大学社会科学研究所を年度末をもって退職をされるということで、3月15日、教授の最終報告が、東京大学本郷キャンパス 法文 2 号館 31 番教室にて開催されたので、聴きに行ってきた。(安中繁社労士、情報をありがとう!)
退職教員の最終講義ってのはたくさんあって、この日も各教授の退職講義を案内する大きな看板が何本も立っていたが、水町教授のはとても控えめで、そして水町教授の所属のところでは最終講義ではなく最終報告らしく、いろいろと趣が違う。
広い教室には、開始時間の関係か、開会前は空席の方が多かったが、最後の質疑応答の頃に会場を見回すと、かなり席が埋まっていた。
社会保険労務士や弁護士、運動や国の機関のお仕事などでご一緒した大学の先生方など、知っている方もたくさん参加されていたのも納得であり、驚きであり(せっかくやから皆さんにご挨拶はしたかったが多すぎて出来きれず…)。

 最終報告会は、福島大学の長谷川珠子准教授(行政政策学類 地域政策と法コース)の司会に始まり、東京大学社会科学研究所所長の玄田有史教授が、水町先生の人柄を目いっぱいいじり倒しての開会あいさつ(玄田先生は労政審職業安定分科会で一緒だった)。
水町先生の経歴のご紹介があって、いよいよ、普段着姿(笑)の水町勇一郎教授がご登壇!

 最終報告のタイトルは「日本労働法の歴史と課題」
「日本の労働法および労働関係の歴史を振り返りつつ、西洋諸国との比較を通してその特徴を描き出す。その上で、今日の社会変化のなかで日本の労働法が直面している課題について、西洋諸国の労働法との異同を踏まえながら分析する。」
その内容を①の「歴史」、②の「課題」の2回に分けて【メモ】しておく。 
 

日本労働法の歴史と課題
Ⅰ 歴史
1 労働法生成の歴史 ⇒労働者という統一した概念ができたのは150年前
〇農業を中心とした自給自足社会 ⇒農耕社会はムラ社会(共同体) ⇒雇用関係ないのが基本
〇そのなかでも「雇用に」に類似した形態 ⇒近代でない労働法 ⇒契約関係
□「身分」関係のなかでの「契約」的なもの(雇役、和雇、御恩と奉公、相対など) ⇒「雇役」諸国から成年男子を徴用し、一定の食料・賃金を支給して造都・造宮などの諸事業に使役したもの。「和雇」古代日本において行われた相場による功直(賃金)に基づいて定められた双方合意の雇用形態。奈良時代。石山寺。「御恩と奉公」鎌倉時代は武家と奉公人、江戸時代には士農工商と奉公人。長期的な片務的関係。
□「人身売買」とその禁止・制限(奴婢の売買の禁止、年季奉公の制限とその廃止) ⇒「奴婢」(①召使いの男女。下男と下女。②律令制における賤民。人格を認められず、財産として、売買、譲渡、寄進の対象となった。) ⇒ある意味、労働契約の斡旋 ⇒鎌倉時代に奴婢禁止 ⇒豊臣秀吉の検地・刀狩と人身売買禁止令 ⇒1625年(寛永2)「年季奉公の制限」10年 ⇒1698年(元禄11)には農業生産政策(小農より大農)により制限が外される。

2 戦前の労働関係と労働法 ⇒「近代=自由」を勝ち取った
〇「奉公関係」から「雇傭契約」へ ⇒民法(1898年(明治38))契約自由の原則
〇「期間制限」の意味の転換
□無期契約の意味が長期の人身拘束から解約自由へ=有期契約は人身拘束の制限から解約自由の制限へ ⇒19世紀~産業革命→大工場時代⇒大資本と労働者=契約自由 ⇒労働者が不利 ⇒選挙制度 ⇒近代国家(労働法制・社会保障)

3 戦後の労働法制の確立と展開
〇労働法制の確立と展開 ⇒3つに分ける
□戦後復興・経済成長と労働法制の確立(1945年~) ⇒鉱業法(1905年)・工場法(1911年)➡労働三法(労働基準法・労働組合法・労働関係調整法)+判例法理(解雇権濫用法理・就業規則の合理的変更法理)
□経済調整・社会構造の変化と労働法制の展開(1974年~) ⇒オイルショックが契機 ⇒雇用保険法、男女雇用機会均等法…立法の時代 ⇒日本的雇用システムを内在していく時期
□少子化・デジタル化と労働法制の転換(2013年~) ⇒働き方改革 ⇒日本的雇用システムを見直す ⇒経済政策と一体で
〇日本の労働法の特徴
□西洋諸国との類似性
□日本の特徴
・産業革命(工業化)と近代的労働法生成の遅れ ⇒英➡仏➡独➡米 ⇒鎖国➡明治➡戦後 ⇒共同体的労働関係
・分権的社会秩序(ムラ、イエ、企業共同体)の重視とそれと結びついた労働法
【英米=経済モデル(個人)、仏=政治モデル(国家)、独=社会モデル(労使(産業レベル))、日本=共同体レベル(企業別)
・その理由・要因:近代化の遅れ・不徹底?(共同体的なため)日本の歴史・文化?(共同体的なものが) ⇒過去に向けた問いでもあるが、未来に向けた問いでもある!
「【メモ】水町勇一郎教授最終報告「日本労働法の歴史と課題」②課題」に続く

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【メモ】岡崎教行弁護士「高年齢者雇用にあたっての留意点~名古屋自動車学校(再雇用)事件最高裁判決を踏まえて~」

2024-02-01 | 書記長社労士 お勉強の記録
 1月23日、大崎の駅前にある東京都産業労働局「南部労政会館」で、東京社労士会臨海統括支部が開催した研修会へ。
今回は、「使用者側」労働法務弁護士の岡崎教行弁護士が、「高年齢者雇用にあたっての留意点~名古屋自動車学校(再雇用)事件最高裁判決を踏まえて」について講演してくれた。 ⇒ 岡崎弁護士のブログ記事「東京都社会保険労務士会臨海統括支部で研修をさせていただきました
名古屋自動車事件判決は、地裁・高裁と、最高裁の判断の違いって、どう違うのか凄くわかりにくく、なかなか腹落ちしなかったのだが、今回の講演を聞いて、ようやくわかった気がした。
よく現場から「定年再雇用者の賃金は、定年前賃金の何割くらいならいいのか?」と質問されて、過去判例を用いて説明するもなかなか分かってもらえなかったが、それに対する説明の仕方にも「❕」という答えが見えた気がする。
ということで、自分のメモ。


20240123 臨海統括支部研修会
「高年齢者雇用にあたっての留意点~名古屋自動車学校(再雇用)事件最高裁判決を踏まえて~高年齢者の処遇は2つの視点で」

高年齢雇用にあたって相談対応しているがなかなか難しい。
処遇の問題、雇止めや再雇用しないという問題、悩むところ。
名古屋自動車学校事件について説明し、高年齢者を処遇や雇止めについて話す。

60歳定年再雇用の原告2名が労契法20条に違反する労働条件の相違があるとして、主位的に賃金請求、予備的に不法行為にもとづく損害賠償請求
同一労働同一賃金の問題、正職員との比較の問題
正職員⇒正職員就業規則及び給与規定
定年退職後再雇用職員⇒嘱託規程(定めのない事項は正社員就業規則等を準用、実態に合わない場合、不都合と判断される場合、正社員就業規則等に定めがない場合、その都度定める⇐ダメな規則の典型)

原告らは、従来と同様に教習指導員として勤務、再雇用に当たり主任の役職を退任したことを除いて、定年退職の前後で、その業務の内容及び当該業務に伴う責任程度並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲に相違はなかった。
⇒均等待遇のように書かれているが、均衡待遇の問題では?(なぜ「主任の役職を退任していること」を「除く」?)

労契法20条に関する一般論
「期間の定めがあることにより」
「不合理と認められるもの」⇒それぞれ主張立証責任を負う
定年退職→再雇用「その他の事情」として考慮する。

〇正職員の基本給は勤続年数に応じて増加する年功的性格を有する。⇒ここでなぜか賃金センサスが出てくる?(余計なお世話だ)⇒そして原告らの賃金⇒若年正社員の基本給を下回っている(裁判所はここに怒りを感じたようだ、ますます余計なお世話だ)⇒さらにここでも賃金センサスと比較(55-59歳下回る、60-64歳よりちょっと高い)
原告らが嘱託職員として勤務した期間の賃金総支給額と、定年退職時の労働条件で就労した場合の賃金総支給額と比較⇒原告1は56%くらい、原告2は60%くらい。
〇原告らは退職金の支払いを受けた、高年齢雇用継続基本給付金を受けていた。
〇職員代表との間で再雇用制度に関する協定書を作成(賃金に係る合意はされていない)⇒労働条件についての合意がされていない、交渉結果が制度に反映されていない
⇒❶職務内容・変更範囲に相違がない、❷50%以下に減額、❸職務上経験に劣る若年者よりも下回る、❹同年代の賃金センサスを下回る、❺定年前後で60%程度にとどまる、❻労使自治が反映された結果ではない、❼基本給は一般に労働契約に基づく労働の対象の中核であるとされていて被告において同様⇒ 結果、若年正社員に基本給も下回ることを正当化するには足りない 
⇒労働者の生活保障の観点からも看過しがたい水準に達している(おいおい、観点違くないか?)(労働者の生活補償って最低賃金があるだろ)
皆勤手当・敢闘賞(精励手当)、家族手当、賞与はまぁこんなもん。
名古屋高裁の判断⇒地裁の判断をほぼすべて是認した⇒名古屋高裁は怖い(笑)
⇒最高裁でひっくり返る⇒基本給と賞与は会社敗訴部分を破棄し名古屋高裁に差し戻し、精励手当・家族手当は判断を維持

労契法20条の一般論 書きっぷりは基本給・賞与に関しての労働条件の違いはある程度当然であろう⇒前提として違いがあることが透けて見える

基本給 勤続年数による差異が大きいとまではいえない⇒金属としての性質だけを有するとはいえず職務給の性質をも有する余地がある⇒職能給としての性質を有するものとみる余地もある⇒様々な性質を有する可能性がある⇒基本給を支給することとされた目的を確定することもできない
(実務上、役職手当が同役職で差異がある場合がある⇒「なんで?」って聞くと「頑張ってくれてるから」⇒なんで、それなら基本給で処遇したらいいのに⇒第二基本給?)
嘱託職員の基本給は正社員の基本給とは異なる性質や支給の目的を有するものとみるべき⇒これで会社勝てるかな?(個人的観測)⇒原審はその性質及び支給の目的を「何ら」検討していない。⇒交渉の具体的経緯を勘案していない。⇒宿題を突き返している。⇒賞与も同様の判断

「私見」
基本給ってなかなか難しい⇒基本給も手当と同様に性質・支給目的を認定しそれを踏まえて判断しなければならない⇒これがけっこう難しい⇒基本給はいろんな要素(職務内容・技能・勤務成績・年齢などを考慮?)があるよねってことになる。⇒「なんで、この人の基本給はこの金額になったの?」という説明が今後求められるようになるのだろうか。
定年退職後再雇用は、そもそもの出発点が、国から押し付けられた雇用という観点から、生活保障的な観点から給与を支給することにしたんだとも言えそう。

高年齢雇用にあたっての留意点
高年齢者の処遇の問題
視点は二つ⇒①高年齢者雇用安定法の視点、②パート有期法の視点

①高年齢者雇用安定法の視点 ⇒ 年金などと合わせて、本来支給されたであろう賃金程度(!)
X運輸事件(奈良地判H22.3.1、大阪高判H22.9.11) 54.6%でも適法とした(一番古い判断)
トヨタ自動車ほか事件(名古屋高判H28.9.28)←おかしな判断。

②パート有期法の視点
均等待遇⇒責任下げれないか?役割を下げられないか?⇒そうすると均衡待遇⇒賃金下げられる。
高年齢者の契約更新・不更新の問題
19条1号、2号に該当するかしないか?
⇒「しない」⇒雇止め有効
⇒「する」⇒客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないか
  ⇒認められる⇒雇止め有効
  ⇒認められない⇒雇止め無効

よくある相談例
再雇用(1年契約)の契約期間満了に当たり労働条件を変更して雇用契約の締結を申し入れたい
⇒合意してもらえればいいけど、合意ができないと、その変更の合理性を立証出来なければならない(雇止めになってしまう)

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【メモ】染谷由美社会保険労務士「『治療と仕事の両立』とメンタル不調者の職場復帰などへの配慮や対応について」

2023-12-18 | 書記長社労士 お勉強の記録
 2023年12月11日、うちの社会保障研究集会で、染谷由美特定社会保険労務士(社会保険労務士オフィス・ソメヤ)を講師に招いて「『治療と仕事の両立』とメンタル不調者の職場復帰などへの配慮や対応について」講演をいただいた。
そのときの自分メモをここに残しておく。



 治療と仕事の両立をめぐる現状
両立支援の疾病の種類
がん、脳卒中、心疾患、肝疾患、難病(潰瘍性大腸炎・クローン病など)、糖尿病、その他反復・継続して治療が必要なる疾病

 一生のうち国民の2人に1人が癌に罹患する時代、男性は4人に1人、女性では6人に1人が死亡する確率だが、がんは不治の病の時代ではなくなった。昔はテレビドラマでは不治の病として描かれていたが、死亡する確率は低くなっている。
癌の年齢別罹患率を見ると、若年性では女性の罹患率が高くて、乳がんや子宮癌が多く仕事と治療の両立が求められる。男性では55歳以降罹患率が急上昇。
現在では65歳までの雇用の確保義務、70歳までの就労の努力義務となっているから、その準備が必要となっている。仕事を持ちながら悪性新生物で通院している人は、44万人、データは2019年なので今ではもっと多くなっていると考えられる。
脳血管疾患では約7割の人がほぼ介助が不要で職場復帰している。
心疾患では、患者数は306万人で就労世代が19%、うち93%が復職。
肝疾患、就労世代の16%が異常を認めていて、50代が多い。飲酒や肥満による脂肪性肝疾患で治療を続けている。
治療と仕事の両立を図っていかなくてはならない。
我が国の「がん対策基本法」(2006年施行)、5年毎にがん対策推進基本計画を厚生労働省で策定、第1期、就労を含めた社会的な問題が課題とされた。⇒2016年12月改正法
第8条、癌患者の就労継続は企業の努力義務とされた。
癌罹患後の就業状況、有給休暇などで仕事を継続した人も多いが、離職した人は16.7%いる。
退職理由をみると、仕事を続ける自信がなくなった、会社や同僚などに迷惑を掛けると思った、職場から勧められた、解雇。
確定診断を受けた直後に辞められる人が多い、その後に治療計画が立てられるが、もしかしたら働けるかも知れないのに、その前に辞めている現状。
治療と仕事を両立する上で困難であったこと、「経済的な問題」「働き方の問題」「相談先の問題」「職場の理解と風土に関する問題」

 メンタルヘルスの不調者⇒ストレスや強い悩み、不安⇒誰でも該当する可能性がある。
全事業所で、該当する労働者がいた10.1%、休業した労働者がいた8.8%、退職した労働者がいた4.1%⇒労働者に「強い不安、悩み、ストレスを抱えている」と回答した労働者82.2%⇒内容、仕事の量、仕事の失敗や責任の発生、仕事の質、対人関係(セクハラ・パワハラ含む)⇒私たちの世代は猛烈に残業したが、今の若い人は1分でも残業は嫌。

両立が可能な職場環境とメンヘル対策
 事業者規模が大きいほど取り組んでいるが、規模が小さくなるほど、取組の割合が低い。⇒取り組んでいないから退職者が多い、補填したいが求職者が少ない、という負のサイクルに陥っている事業者も多い。⇒取り組むことで得られるメリット
カミングアウトしやすい風土の醸成、お互い様の意識の醸成による一体感が高まる、従業員満足度の向上・やりがいの創出、エンゲージメントにも効果。
健康経営やリスクマネジメントの視点から今こそ取り組む必要がある。
メンタルヘルス対策と治療の両立の気運の高まり。


治療と仕事の両立にあたり問題
 「経済的な問題」「働き方の問題」「相談先の問題」「理解と風土に関する問題」⇒必要のある問題解決
社会保険関連(傷病手当・障害年金・遺族年金)、辞めた後の社会保険、転職に関すること(今の会社が両立できないので)、会社に伝えるかどうか(退職勧奨されるかも知れない、会社の対応を見ていて)、職場への理解の求め方・伝え方、社内制度の内容や利用(就業規則の内容を説明して欲しい)、解雇や退職勧奨のこと、失業給付などがあって、それらの対応を考える。


育児・介護・家庭の両立との違い
 ①法律では努力義務のみ(配慮)、②お互い様という意識が醸成しにくく職場の理解や協力が得られにくい(自分は病気にならないと思っている人が多い、私傷病は個人の問題であると思っている⇒好きで病気になっているわけではない)、③今後の見通しが読みにくい(個人差がある)、④中長期間の支援が必要

実際の進め方
ステップ① 会社の両立支援の基本方針の策定と従業員への周知
⇒危機管理意識を持って策定してもらいたい⇒「会社に伝えると辞めさせられる」「人事評価に影響するのではないか」⇒「病気になっても辞めなくて良い」「治療しながら働き続けられる会社である」と認識することにより、従業員の満足度向上に繋がる⇒離職の未然防止に効果的⇒定期的な周知も必要

ステップ② 社内制度の整備&運用
社内整備のポイント⇒通院
時間の確保が出来るような制度導入(年休の半日・時間単位、私傷病休職制度、失効年休の積み立て、治療目的の休業・休暇制度(有給でなくてもいいから欠勤とならない制度))⇒利用するタイミングと時期によって流動的となる、随時、状況を確認した上で制度運用してもらいたい、制度を押しつけると従業員が納得できなくて辞めてしまうこともあるので注意が必要。

メンヘル対策の4つのケア【セルフケア】【ラインケア】【事業場内産業保健スタッフ等によるケア】【事業場外資源によるケア】
ストレスチェック、50人以上1年に1回実施が義務化⇒忙しいときに受けている結果とそうでないときの結果ではずいぶん違ってくる⇒定期に年2回以上実施することをお勧め(衛生委員会等で調査審議により労使合意で1年以内に複数回実施することも可能)⇒面接指導の際には個人情報の管理に注意

ステップ③ 社内体制の整備
①相談窓口の設置、②支援者側の役割や支援方法を明確にし連携体制を整える、③管理職研修の実施(報告があったときの対応、こころの健康への影響を与える職場環境等)⇒相談や報告があった際の「初動対応が重要」⇒相談を受ける側の対応スキルを事前に学ぶ機会を作る⇒「相談受けた側がうろたえたり受け止めきれない」と相談者は不安になるから。

ステップ④ 研修会の開催及び両立支援体制の周知
研修内容(治療と仕事の両立)(メンヘル対策)+ワークショップ+両立支援体制+定期的なフォロー
正しい知識を習得⇒他人事から自分事⇒健康管理やメンヘルケアの大切さを知る⇒ヘルスリテラシー向上⇒病気予防・健康診断・癌検診の受診率向上、メンヘル不調予防
円滑な就労支援の実施の鍵 柔軟の業務制度≠円滑な就労支援
職場での理解・協力が得られるかがカギ!⇒「日頃からのコミュニケーション」「上司や同僚の変化に気づいてあげることができる職場」「病気になることは他人事ではなく自分事でもあり、お互い様の気持ちを持てる職場風土」



~治療と仕事の両立~編
 お見舞いの言葉を掛け(大丈夫ですかと問いかけると「大丈夫」としか答えられない、頑張ってくださいも「もう頑張れない」となるから注意)⇒「すぐに辞める必要ない」ということを伝える
⇒具体的な支援を検討するために情報を収集する⇒どこまで聞いていいのか⇒症状・治療の状況、退院後・通院治療中の就業継続の可否、望ましい就業上の措置に関する意見、従業員の仕事に関する想いや希望
◎厚労省ガイドライン「情報収集の方法」(勤務情報を主治医に提供する際の様式例、治療状況や就業継続の可否等について主治医に意見を求める際の様式例、職場復帰の可否等について主治医に意見を求める際の様式例)
⇒収集した内容を基に、具体的な支援策を検討し運用

休業措置・就業上の措置・治療に対する配慮等⇒一方的に紙やメールで伝えるのではなく、労使で十分に話し合い、従業員から納得が得られるように努力
社内制度で対応できないケース⇒制度で対応できない場合は配慮で補う

がん治療時等による休職時の対応ポイント
 休職に入るとき⇒文書での情報提供・家族の連絡先の確認
休職中⇒負担にならない程度の定期的に連絡を取る(メンヘルとは違う)・定期的に社内の情報を提供・休職中にフォローしている上司や同僚に対してもサポート

メンヘル不調に陥りやすいとき
 人事異動の時、新卒入社2~3年目、業務で問題、長時間労働、人間関係のトラブル、大きなライフイベント
気付くポイント⇒勤怠の乱れ、外見の変化、ミスが多くなる、感情の変化が大きくなる、性格⇒一人で抱え込ませないように、早めにお声掛けを行う必要がある⇒ストレスチェック⇒面談に持ち込む

メンヘル不調者の休職時の対応ポイント
 文書での情報提供、主治医から職場復帰の話が出たときには早めに会社に連絡することを伝える、家族の連絡先の確認、一人暮らしの場合は家族との同居を勧める
休職中⇒連絡は必要最低限(メールの最後に「体調が良いときにご返信ください」)、月1回程度社内情報を提供、連絡窓口をする従業員への教育とフォロー、フォローしている上司・同僚にもしっかりとサポート

 みんなに言わなくて良いから、最低限伝えなければいけない人にだけ伝えたら、とアドバイス。
困ったことがあったら相談してもらって、必要な配慮を考える。
あくまでも治療と仕事の両立は従業員の自助努力⇒企業は自助努力支援エンパワーメント⇒危機管理⇒ネガティブな取り組みでは決してなくポジティブに捉えて欲しい⇒病気になっても働き続けられる職場

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【メモ】「年収の壁」にどう取り組むか (株)日本総合研究所 西沢和彦理事

2023-11-22 | 書記長社労士 お勉強の記録
【22 💪4-55 LiFETiCK RateralRaize10kg ShoulderPress32.5kg UpLightRow30kg RearDertoidRaize7kg BallCrunch LegRaizeBall】 厚生年金の「第3号被保険者」および健康保険の「被扶養者」になっているパートやアルバイトの人たちに「そんな壁を乗り越えてもっと働けっ💢」として 、10月20日より「年収の壁・支援強化パッケージ」を実施している。⇒厚労省のページ「ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 他分野の取り組み > 年収の壁・支援強化パッケージ
このブログでもちょろっと紹介したが…⇒「年収の壁・支援強化パッケージ」

 大きなお世話だ、的な気もするが、そんな折りに、連合が「社会保険の適用拡大に関する勉強会」を11月14日に開催。
そのときの(株)日本総合研究所 西沢和彦理事の講演「『年収の壁』にどう取り組むか」についてメモを残しておく。



1.前提としての知識
〇国民皆保険という美しい理念と矛盾。
社会保障として社会保険と福祉
社会保険は拠出原則があり財源は社会保険料⇒権利性があり(保険料を払ったのだから…)、排他的ともいえる(保険料を払わなければ受けられない)
福祉は拠出原則がなく、財源は租税(公費)

〇2階建て、国民年金に括弧して基礎年金…この説明が制度の真の理解を困難にしている。
⇒2階建てではなく3制度と基礎年金給付
基礎年金拠出金 厚生年金19.4兆円、共済組合2.3兆円、国民年金3.2兆円(合計25兆円)⇒これが基礎年金の収入25兆円⇒基礎年金拠出金 単価36,822円

〇第1~第3号の区分は1986年改正で導入
1985年以前、専業主婦は国民年金に任意加入し保険料負担(社会保険の徹底、「皆」は未実現
1986年以降、専業主婦は第3号として基礎年金拠出金として、保険料を負担せずとも基礎年金受給(払わなくてももらえるという福祉的取り扱いを混入させた)⇒社会保険の後退⇒皆年金を優先し福祉の混入

•厚生年金保険料 18.3 %は、厚生年金給付のみならず基礎年金の費用を含む
•国民年金保険料 (月額 16,520 円)は存在するが、 国民年金給付は存在しない
•第1号が国民年金の正真正銘の加入者
•基礎年金 (満額月 66,250 円) は、共通の給付の名称

第3号850万人、うち約6割は就業者、専業主婦の方が少ない
第1号の就業者994万人、うち約7割が被用者とその他の働き方
第2号となるには常用的使用関係が必要⇒被用者適用基準 正社員の労働時間の4分の3⇒被用者保険の適用拡大(現在101人以上)


2.年収の壁とは何か
〇106万と130万の相違、混乱を招く。
106万 被用者保険適用基準の一部(第2号か否か)⇒判定者は本人の勤務先(従業員101人以上)⇒法的根拠はない(8.8万円が厚生年金保険法に記載)、収入の範囲は限定的(厚年法は常用雇用を想定)
130万円は被扶養認定基準(第3号か否か)⇒判定者は配偶者の勤務先⇒法的根拠は厚生省の通知(1977年)⇒検認、収入の範囲は包括的(その時点の収入の年収換算)1993年以降据え置き。
106万円の壁について、辻元清美さんの質問主意書への答弁書R4/12/9 ⇒ 最近、社会保険適用拡大ガイドブックは修正⇒政府の広報のミスリード



130万円で2号になると可処分所得が▲15万円(取り戻すには151万円)、1号になると▲23万円(取り戻すには161万円)⇒就労調整の誘因に
8.8万円(×12≒106万円)の壁⇒3号は2号になれば可処分所得減(124万円で取り戻す)⇒就労調整の誘因に⇒1号は2号になればむしろ可処分所得増。
⇒年収の壁・支援強化パッケージは不公平
⇒壁というより給付増⇒誇大広告(老齢・障害・死亡、そんなに保証は充実しない)

〇一方で、扶養を外れて経済的に失うものは
①企業の家族手当(配偶者に家族手当が支給される従業員は55.1%)、②配偶者の健保組合の付加給付(給付4.3兆円の約2%、一部負担還元金(被扶養者は家族療養費付加金)、出産育児一時金への上乗せ)、③児童手当の所得制限(年収103万円以下の配偶者は扶養家族にカウントされ、その分、所得制限額が緩和される)
※配偶者控除は消失控除となっており、世帯可処分所得が一挙に減少する壁はない⇒妻の収入150万円までフルに控除を使える

3.制度論
〇では、壁を引き下げたら?⇒しかし第2号と第1号の公平性が損なわれる⇒第2号88,000円×18.3%=16,104円(労使折半)≒第1号16520円⇒負担面においてかろうじて公平性が保たれている
〇であれば、壁を引き上げたら?⇒パート主婦の労働供給(時間)を確かに促進⇒他方、優遇策であると批判の多い第3号のメリットは拡大、かつ、第1号となっている被用者の第2号への移行はより困難に
〇ではでは、壁の高さはそのままにして、可処分所得減少分を国が補填すれば?⇒第3号から第2号への移行者のみ補填すれば、第1号(5人未満個人事業所および複数事業所勤務者など)から第2号への移行者と不公平に。

※複数事業所勤務者は厚生年金加入に障壁(2事業所合計で8.8万円を上回っていても不可)⇒事業所ごとに被用者保険適用を判定する現行の仕組みがネック⇒本来、個人に着目し名寄せすべき


〇壁問題の根本的解決には2つの方向
①社会保険という方法の徹底⇒1985年以前の年金制度に戻す(専業主婦は国年に任意加入)⇒未納の増加が予想される⇒皆年金は後退
②皆年金という目的の重視⇒社会保険への福祉の混入を改め、福祉的部分は切り離し、その財源を租税に充てる。⇒諸外国をみれば、福祉的部分は租税、所得比例部分は社会保険料と役割分担⇒年金の理想像を語る時「カナダ」か「スウェーデン」

〇所得代替率-給付水準を表す代表的指標
世界共通の考え方。もっとも、わが国の定義は特殊であり、注意を要する
1.分母は1人分、分子は2人分*
2.分母は手取り(可処分所得)、分子は名目
61.7%=厚生年金・夫9万円+基礎年金・夫6.5万円+基礎年金・妻6.5万円/現役男性の平均的な手取り月収35.7万円
*数値は、2019 年財政検証。モデル夫婦世帯、あるいは、標準世帯と呼ばれる夫がサラリーマン、平均的収入、40 年間勤務。妻が専業主婦

1985年の2つの出来事
4月、年金改正法成立、「婦人の年金権の確立」の名のもとに第3号被保険者導入⇒6月、女子差別撤廃条約締結⇒男女共同参画⇒年金に関しては女性を庇護の対象とした⇒果たして、社会保険を標榜するもとにおいて、保険料負担のない基礎年金受給が権利の確立なのか?

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【メモ】障害年金について学ぶ会 松山純子社労士②「障害年金と就労」

2023-11-16 | 書記長社労士 お勉強の記録

【メモ】障害年金について学ぶ会 松山純子社労士①「社会的治癒」「相当因果関係」の続き】 2023年11月11日、大阪で「障害年金について学ぶ会」リアルセミナーが開催され受講、YORISOU社会保険労務士法人の松山純子社会保険労務士の講演を受けてきたのでメモを残しておく。(純子先生の了解はもらってます)

第2部 「障害年金と就労」
障害年金を通じて「自分の体調に合った働き方の選択肢」を持てるように、そして「障害年金をもらいながら働く」の実現を一緒に考えていく。
両立支援ガイドラインが出ているが、その実現には障害年金の力が必要
① 治療費の不安、②生活費の不安、③社会と繋がらない不安 これを解消しなければならない。
障害年金が出来る社労士はど真ん中。
2か月に1回お金が入る「障害年金」を受給していれば、体調が悪化してきたときに、早めに休む、しっかり休む、そしてまたしっかり働くことが可能になる。

重要⇒病気の主な症状と主な特性を知っていることで、日常生活や就労上の困りごとを聴く。⇒その困りごとを病歴申立書にしっかりと記載。
「松山先生はなぜ私が困っていることがわかるのですか、占い師ですか?」と言われたことがある(笑)
障害特性に合ったヒアリングの留意点と、就労している場合の請求をどう組み立てていくか。

日常生活と就労の状況を聴く
診断書の裏面、⑩の「エ 現症時の就労状況」
就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)、障害者雇用制度、就労移行支援。
障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合でも、就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労。
「キ 福祉サービスの利用状況」
障害者総合支援法による福祉サービスなら、利用状況(サービスの種類や内容、頻度など)をちゃんと書いて「受給者証」を添付する。
「なかぽつ」に就労証明を書いてもらう場合も。
医療機関に「日常生活も就労もたいへんなのです」とちゃんと申立てて、ちゃんと書いてもらう。

疾病性を事例性に置きかえる。
発達障害自閉症スペクトラム(ASD)は感覚過敏。
感覚過敏を日常生活に落とし込む ⇒ ①適切な食事、②身辺の清潔保持、③…。
面談内容を議事録のように作って本人に渡す⇒メモを取らなくても大丈夫ですよと伝えている。
何を確認するためのヒアリングなのか、意識しながらお話を聴いている。
・初診日はいつなのか? ・保険料納付要件は大丈夫か? ・障害年金に該当する状態かどうか? ・請求方法は? ・障害の原因は何か? ・初診日に加入していた年金制度は? ・就労している? ・就労している場合、本当に働けているのか? ・未受診期間は、社会的治癒や再発に該当するか? など
発達障害の場合、社会的治癒は認められることもある。

障害年金は日常生活のたいへんさが重要になる
就労と障害年金の考え方は大きくわけると2つに分類される。
身体機能障害は就労との関係性は問われない⇒就労したからと言って日常生活は向上しない。
長期にわたる安静を必要とする状態(就労との関係性問われる)⇒実際に働いていることで日常生活に支障が出る場合もある。⇒就労することで日常生活が向上していない。
認定基準にも「就労したら該当しないとは書いていない」

リワーク
①医療系のリワーク(病院のデイケア)
②就労系のリワーク(都道府県障害者職業センター・企業独自)
福祉系のリワーク(障害者就労移行支援事業所)
リワークの内容を顧問している社労士と連携していく。
退職した場合 
①再就職に向けて就労移行支援事業所の案内
②失業保険⇒特定理由離職者、就職困難者(手帳がなくても対象となる場合がある)
③生活や状態が不安定な場合⇒ヘルパーなど福祉サービス、訪問看護など

 当日参加されていた「精神科医師からの目線」として発言があったが、とても示唆に富んでいて重要、それもメモしておく。

「障害の年金の診断書の書き方は勉強したことがない、ここに医者と社労士のナレッジギャップがある。
恫喝してくるケースも少なからずある
溝上先生の「ご負担を少しでも軽くできますように」はとても大切、相手の時間を1分でも奪わないということは重要、やることを明確にしておと助かる。
「⑩障害の程度 ウ日常生活状況 2日常生活能力の判定」は、単身で生活する前提を知らない医者も多い。
教育歴、受診歴は、医者の記録に抜けていることが多い。
「⑩のイ左記の状態」については、情報が欲しい。
「ウ」については、適当に書いているとは言わないが、正直、日常生活の状況はあまりわからない。
ましてや「エ現症時の就労状況」を把握している医者は少ない。
情報が欲しいが、冗長な文章は嫌い、A4に収まっていて欲しい。
「疾病性を事例制に置きかえる」は実に重要。


 「障害年金を学ぶ会」その後の懇親会@トリサカナ梅田店(大阪市北区小松原町1−10 梅田パルビル 6F)では、守秘義務的にぎりで、社会保険審査会参与として、障害年金をやってくれている社労士さんに期待することを、2テーブルでそれぞれに、一生懸命語ってしまった。

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【メモ】障害年金について学ぶ会 松山純子社労士①「社会的治癒」「相当因果関係」

2023-11-15 | 書記長社労士 お勉強の記録

 2023年11月11日、大阪で「障害年金について学ぶ会」リアルセミナーが開催され受講、YORISOU社会保険労務士法人の松山純子社会保険労務士の講演を受けてきたのでメモを残しておく。(純子先生の了解はもらってます)

第1部「社会的治癒」「相当因果関係」
障害年金申請の際に提出する上申書を必要に応じて事務所で作っている。
年金機構はけっして落とすために審査しているのではない、実際に申し立てしてみるとしっかり見てくれていると感じている。
しかし、認定医は提出された診断書や病歴・就労状況等報告書を見て2級か3級かも知れないが、提出された診断書の要素を見たときに3級の要素が強ければ3級にせざるを得ない。
それで審査請求の際に追加の資料を出すと審査官には「後出しじゃんけん」とみられる。
だから申請の際に上申書を出しておいて審査官のところで後出しじゃんけんと言われないようしておく。
【参考事例について】
医師が診断書の③「①のため初めて医師の診療を受けた日」の初診日を例えば学生時代(国年)にした場合、これは覆せないので、社会的治癒を主張した。(厚年期間を初診日にしたい)
高校入学⇒高校卒業(留年していない)⇒大学入学⇒大学卒業(留年していない)⇒就職(就職活動し就職している)、この間、メンタルによる不具合はないことを主張したい。


その後、複数の医療機関での受診があったので、受診状況等証明書を取ってみる。
メンタルの治療をしていたのか、メンタルの治療をしていないか、カルテで確認してもらう。
精神科治療をおこなっていないのなら、そのことを書いてもらう。(精神科治療を行っていたら「ごめんなさい、社会的治癒はやめます」となってしまうが…)

社会的治癒を主張し、厚年期間に初診日として請求する。
カルテ開示されても問題ないようにすることが重要、そのために事実確認をしっかり行う。
1%の可能性があればしっかりやる。

保険料納付要件が満たない場合、①初診日が20歳前にないか? ②社会的治癒が主張できないか?(最初の初診日でみると要件満たない場合でも、社会的治癒があれば納付要件を満たす場合がある)、③教えてくれた日が本当に初診日かどうか?を検討する。

平成7年に初診日がある総合失調症の方がいた。
平成7年に納付要件が満たない、20歳前に初診日がない、平成18年が社会的治癒を主張する初診日、受診をしていない期間はないが、年に1~数回、受診はしている(不定期)、平成8年から平成16年まではフルタイム勤務しているので、この間の受診は「予防的維持的治療に過ぎない」と主張した。

社会的治癒は5年以上、認定日から3か月以内の診断書でないと言われているが、やってみるとなんとかなることも多い。
進行性の病気の場合、1年6か月以前の診断書しかなくても、認定日付近の状況は、同等か進行していると主張し、遡及してくれと請求したことがある。

知的障害だと20歳前後の診断書を請求するが、受診していない場合、事後重症での請求となるが、知的障害は状態が変わらないことが通常。
診断書は絶対的な提出書類ではない、障害の状態がわかるものがあればいいので、児童相談所にIQ値のデータを取り寄せて、18歳測定のIQ値と請求日の診断書と変わっていないことを確認し、上申書で主張し認められたケースもある。

相当因果関係 起因する疾病⬅認定基準に書いている。
「「起因する疾病」とは、前の疾病又は負傷がなかったならば後の疾病が起こらなかったであろうというように、前の疾病又は負傷との間に相当因果関係があると認められる場合をいい、負傷は含まれないものである。」
前は疾病・負傷 後は疾病(国年法第30条、厚年法第47条)
相当因果関係があれば、前の疾病・怪我が初診日となる⇒前後を通じて一つの疾病として見る。
後が怪我なら、前の疾病とは相当因果関係はない
事例1)視覚障害が原因で転倒して怪我 「前の視覚障害」、後が怪我なので相当因果関係はなし。
事例2)ネマリン・ミオパチー(先天性)、大人になっても日常生活支障なく仕事をしていたが、リビングで転倒して車いす。ネオパチーによる初診日(国年)ではなく転倒が初診日(厚年)、相当因果関係はなし。

(補足)
受診状況等証明書を作成する際に、医療機関が廃院しているときどうしたらいいか。
医師会に連絡すると、廃院しているカルテをどこが引き受けているか教えてくれる場合がある。
廃院した病院の先生がカルテを自宅に置いているケースもある。
【メモ】障害年金について学ぶ会 松山純子社労士②「障害年金と就労」に続く】

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社労士会後期必須研修「社会保険の果たす役割と勤労者皆保険への道 ~勤労者の『安心』の観点から~」②

2023-09-06 | 書記長社労士 お勉強の記録
 東京社労士会の後期必須研修「社会保険の果たす役割と勤労者皆保険への道~勤労者の『安心』の観点から~」(大妻女子大学の玉木伸介先生)を、eラーニングシステムにて受講。
第211回国会に提出された「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」(令和5年3月14日提出)は継続審査となったが、この法案を踏まえて、企業年金について勤労者の『安心』の観点から学んだ。⇒法律案説明資料


◇企業年金は「金融事業者」
〇3月に国会に提出された金融庁の法案が成立すれば、企業年金(DB、DC)を行う事業主は、「金融事業者」として扱われる。
―「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」(案)では、
第二条 金融サービスの提供等に係る業務を行う者は、次項各号に掲げる業務又はこれに付随し、若しくは関連する業務であって顧客(次項第十四号から第十八号までに掲げる業務又はこれに付随し、若しくは関連する業務を行う場合にあっては加入者、その他政令で定める場合にあっては政令で定める者。以下この項において「顧客等」という。)の保護を確保することが必要と認められるものとして政令で定めるものを行うときは、顧客等の最善の利益勘案しつつ、顧客等に対して誠実かつ公正に、その業務を遂行しなければならない。
<金融サービスの提供等に係る業務を行う者>
 DB、DCの事業主など。

〇企業年金は、従業員の老後の生活の安定のためのもの。その目的のために、税制優遇(企業年金は税制優遇の具体化)

〇企業経営者は、特にDCの場合、「最善の利益」について、よく考え、また、おそらく、従業員とよく話し合う必要がある。
・運用メニューは、従業員に有利なものにも不利なものにもなりうる。
・金融庁の政策の効果もあって、投資信託の運用コストは低下傾向。数年前の運用メニューを放置していると、「企業がちゃんと運営していれば払わなくて済んだ手数料を、従業員が払ってしまう」こととなる。⇒人事部長がより有利な運用メニューに見直して提供していれば…
・「運営管理機関にすべて任せている」は禁句。

<企業年金連合会「企業型確定拠出年金継続教育実践ハンドブック」(2021)p5>
・企業型DC制度において、加入者等は、事業主が提示した範囲で運用商品の選択を行い、その運用結果を受け入れなければなりません。運用の直接の責任は加入者等が負うものの、その前提においては事業主の責任も大きく、企業型DC制度は会社の運営する制度であることに事業主は留意すべきです。
・例えば、制度運営が不適切なまま放置され、提示される運用商品ラインナップが不適当(同じ運用対象、同じ運用方針を採っていながら、他の投資信託と比べて運用成績や手数料、解約時の条件等が著しく劣る運用商品のみ加入者等の選択肢として提供し続けた場合など)であったり、提供されるサービスが不足していたりしたことにより、加入者等の選択に制約が生じた場合、加入者等の老後資産形成に支障が生じ、事業主もその責任を問われる可能性があることを事業主は十分に留意しておく必要があります。

⇒DBは確定した給付をすればよい(積立不足は補うことが出来る)⇒しかしDCは補うことが出来ない⇒場合によったら訴訟になるかも⇒改正法「誠実かつ公正に」を裁判官はどう判断するか?

◇従業員に提供すべき「満足」
〇従業員の「満足」は、「高齢期における所得の確保」に十分によく資する企業年金であることから生ずるのではないか。

〇概念的に難しいのはDC。従業員の金融・運用に関する知識や姿勢は千差万別。したがって、「満足」の在り方も一様でない。

〇多くの従業員は情報弱者であり、教育による解決は部分的。⇒特に若い人
・教育しても、「人間の性」とでも言うべき「近視眼的」(遠い将来は小さく見える)、「過度にrisk-avert(回避的)/loving(上がり下がりがたまらん!)、「判断を回避」(判断を託す)などの傾向を除去することは困難。⇒老後資金の形成は難しい。

〇多くの従業員に「安心」と「満足」を与えるには、つみたてNISAの適用対象となる金融商品を金融庁が限定しているように、何らかの「干渉」を行わざるを得ないのではないか。
・金融資本市場は情報強者が情報弱者を捕食する弱肉強食のジャングル。従業員に対しては、管理された「自然公園」を提供すべきではないか。

〇DCの事業主は、従業員の「最善の利益を勘案しつつ、従業員に対して誠実かつ公正に」金融事業を遂行せねばならない。
⇒企業内で、DBは財務部、DCは人事部が担当していることが多い⇒人事部は金融の素人?

〇労使の「対話」の中で、「最善の利益」の具体像を煮詰めることを通じ、労使の間で共有された目的(その達成が従業員の「満足」に至るもの)を定め、金融商品の消費生活協同組合のような金融事業主体を目指すことが、一つの方向ではないか。
・DCは営利を目的としない点で、生活協同組合と類似。
<消費生活協同組合法>
(最大奉仕の原則)
第九条 組合は、その行う事業によつて、その組合員及び会員(以下「組合員」と総称する。)に最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を行つてはならない。

⇒最善の利益とは⇒社会保険は安全網(セーフティネット)
⇒民間生命保険会社では、年金保険で就寝の保険は出せない⇒長生きリスクを取れない⇒だから不利な商品が多い
⇒民間生命保険会社の医療保険では、公的医療保険制度を説明したうえで自社の商品を売らなければならない

◇「満足」の向こうにあるもの
〇従業員の「満足」と「安心」は表裏一体。
・誰でも老いるのであるから、老後の不安は全員に共通。
・従業員の間で「日常の家計管理をきちんとやり、会社の用意した制度の中でコツコツと運用していけば大丈夫らしい」という意識が生ずれば、大きな成果。

〇「満足」と「安心」の提供は、人的資本形成の一環でもあるのではないか。
⇒「人的資本形成」このことを忘れてしまうとろくなことがない⇒健康経営はコストがかかるが、しかしリターンがある

⇒勤労者皆保険・皆年金は定着している
⇒安い労働力はなくなるという意識が経営者に拡がっている⇒これからは「若者」は貴重品⇒頭の中を切り替えないと必ず潰れる⇒間口を広げないとダメ

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社労士会後期必須研修「社会保険の果たす役割と勤労者皆保険への道 ~勤労者の『安心』の観点から~」①

2023-08-31 | 書記長社労士 お勉強の記録
 東京社労士会の後期必須研修「社会保険の果たす役割と勤労者皆保険への道~勤労者の『安心』の観点から~」(大妻女子大学の玉木伸介先生)を、eラーニングシステムにて受講。
政府の進める勤労者皆保険制度がどのような考えのもと、議論が進められているのかについて、2022年12月16日に、全世代型社会保障構築会議でまとめられた報告書(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/zensedai_hosyo/pdf/20221216houkokusyo.pdf)を踏まえて、学んだ。


Ⅱ. 全世代型社会保障の基本的考え方
1. 目指すべき社会の将来方向
そこで、まず、「全世代型社会保障」の構築を通じて目指すべき社会の将来方向として、次の3点をあげる。
◆「少子化・人口減少」の流れを変える
◆これからも続く「超高齢社会」に備える
◆「地域の支え合い」を強める

◆「少子化・人口減少」の流れを変える
保育の受け皿整備や幼児教育・保育の無償化など様々な対策を講じてきたが、いまだに少子化の流れを変えるには至っていない。
経済活動における供給(生産)及び需要(消費)の縮小、社会保障機能の低下をもたらし、さらには、多くの地域社会を消滅の危機に導くなど、経済社会を「縮小スパイラル」に突入させる
、最も緊急を要する取組は、「未来への投資」として、子育て・若者世代への支援を急速かつ強力に整備すること少子化の背景には、経済社会の発展によって子育てに関わる直接的な費用
(学費など)や就業機会損失(母親の就労の中断など)などの機会費用が増加する一方で、就業構造や就労環境の変化によって子育て・若者世代の雇用・所得が不安定なもの(非正規雇用の増加)となっていることなどから、結婚、妊娠・出産、子育てを選択することに不安を感じ、それをためらう国民が増えていることがある。
子育て費用を社会全体で分かち合い、こどもを生み育てたいと希望する全ての人が、安心して子育てができる環境を整備することこそ何よりも求められている。
⇦小中の義務教育費用は無料⇦財政的措置⇦小学校には待機児童がいない⇦子供がいるいないにかかわらず全国民で支えている
〇90年代に多くの社会・家族の在り方の変化(女性の社会進出と高学歴化、晩婚化、非婚化など)が起きたにもかかわらず、社会の諸制度はそれ以前の「専業主婦が子育て」というモデルのまま変わらなかった。⇒「子どもは母親の下で育てるべき」などと、保育の充実に消極的な意見すらあった。
〇企業は、既存の正規雇用従業員を守ることに注力し、新卒の若者の経済生活は不安定化。
〇「子育ては親の責任」という意識からの脱却に時間(「社会全体で分かち合う」という認識の形成に遅れ)。
⇒介護においてもおなじことがあった。「高齢者は嫁に世話されるのが幸せ」「ヘルパーなどという他人が家に入ってきたら高齢者は嫌がる」という意識があった(介護負担の「社会科」の妨げ)。⇒80年代までは、寿命が80代までだったから認知症になる人が少なかったし、専業主婦が多かった。

◆これからも続く「超高齢社会」に備える
・働き方に中立的な社会保障制度を構築し、労働力を確保する
第一に、超高齢社会にあって、経済社会の支え手となる労働力を確保する必要がある。
雇用や働き方に対して歪みをもたらすことのない「中立的」な社会保障制度の構築
子育て支援や健康寿命延伸、介護サービスに係る社会保障の充実は、女性や高齢者の就労を促進
・ 社会保障を皆で支える仕組みを構築し、ニーズの変化に的確に対応する
第二に、社会保障給付を皆で支え合う仕組みを整備
負担能力に応じて、全ての世代で、公平に支え合う仕組みを早急に強化

⇒全ての世代=高齢者⇒厚生年金の加入は70歳まで、基幹農家の平均年齢は68歳
〇我が国の(平成の)労働供給の過剰感の源泉は、
①高度成長~バブル期に、企業は高い経済成長が続くと誤認して、正規雇用を抱え込んだこと。
②女性の社会進出(就業率の上昇)や60代以降の就業が進展したこと。(このことで労働力の母集団が縮んでいることに気付けない)
③90年代にベビーブーマージュニアが労働力市場に参入、ベビーブーマーと同ジュニアの両方が職を求めてひしめいたこと。
〇労働力に限りがあることに、多くの企業は気付いていない。⇒飲食店のバイト時給上昇に慌てている。⇒採用面接で「入社意欲の強い人を採用」という誤り(企業価値の向上に「役に立つから採用する」が真)⇒人をattract出来る企業とそうでない企業の差が明確に(うちの経営者の言っていることがおかしいと思ったらすぐに辞めていく)⇒生産性の低い企業はどんどん淘汰されていく。平成の30年間の常識は完全に覆っている。
〇社会保障制度が「壁」を作るなどして国民の働く意欲を削いではいけない。⇒「3号から2号になると将来の給付増」「8.8万円には残業代は含まれない」⇒情報不足で壁になる⇒解消しなければならない
〇「支え手」は減るが、特にベビーブーマーが後期高齢者でいる間、何としても、支えねばならない。そのためには、「すべての世代で公平に支える」(余裕のある高齢者は支える側に回る)ことが必要になる。

2. 全世代型社会保障の基本理念
◆「将来世代」の安心を保障する
「全世代型社会保障」とは、全ての世代にとって安心できる社会保障
負担を将来世代へ先送りせず
社会保障を含む経済社会の「支え手」を増やす
◆能力に応じて、全世代が支え合う
世代を超えた全ての人々が連帯し
世代間対立に陥ることなく
「全世代型社会保障」の要諦は、「社会保障を支えるのは若い世代であり、高齢者は支えられる世代である」という固定観念を払しょくし、「全世代で社会保障を支え、また社会保障は全世代を支える」ということ

〇「少子高齢化で、若い人たちばかりが負担を負う、私たちの犠牲の上で高齢者は幸せ」⇒ある制度のある局面にいるということに気付いていない⇒自分たちも高齢者になる
〇「支給開始年齢の引き上げ(将来の新規裁定者が負担を負う)」よりも「マクロ経済スライド(全世代で負担を負う」の方が公平
◆個人の幸福とともに、社会全体を幸福にする
個人と社会を共に豊かにするという観点からは、消費の中心的な担い手である「中間層」を厚くし、「成長と分配の好循環」の実現にも寄与するという社会保障の意義を再認識すべき
市場による働きによって生じた所得分配の歪みに対して、社会保障は、より必要な人たちにより多くの所得を再分配
◆制度を支える人材やサービス提供体制を重視する
介護、保育をはじめ各分野において、人材不足の傾向が顕著

〇社会保障の持続可能性向上と「各世代」の「安心」はなぜ結びつくのか。
⇒誰もが高齢者になり、いつかは「支える側」から「支えられる側」に回る。「支えられる側」に回った時に「支えてもらえる」という安心感が必要⇒「自分隊が高齢者になった時に年金はもらえるのか?」という疑問
⇒「世代間の対立」は、世代会計によって「すでに高齢者になっている世代は得をするが、今の若い人は損をする」という謬論によって、情緒的にあおられた。⇒年金がいくらもらえるかは寿命次第⇒損得ではない⇒平均寿命で計算するのは間違い⇒年金は「長生きリスク」保険⇒民間の保険とは違う
⇒「全世代型」とは、世代によって「支える」「支えられる」の立場が固定的ではなく、支える人が支える、ということ。
〇「中間層」の持つ意味は?
中間層を欠くケース:年収10億が一人と年収250万が400人(20億円、401人)
中間層が厚いケーズ:年収500万の人が400人(20億円、400人)
⇒消費需要はどちらが多いか(景気はどちらがよいか)。⇒年収250万円は住民税を払うか払わないかギリギリの人、たんぱく質の摂取が足りていない世帯⇒中間層が厚いと肉や卵を食べる人が増える、おしゃれにお金を使う人が増える…
⇒子女の教育水準はどちらが高くなるか。
⇒将来の我が国はどちらが豊かになるか。
〇「中間層」が十分な厚みを持って存在しない限り、我が国経済の健全な発展はない、という考え方が政権の根底にある。
⇒安倍政権の「何よりデフレの脱却、そのためには金融緩和」という立場とは、与える印象が異なる。
⇒社会保障と並んで、国民の資産形成への力の注ぎ方が目立つ。

Ⅲ. 各分野における改革の方向性
2. 働き方に中立的な社会保障制度等の構築
◆短時間労働者への被用者保険の適用に関する企業規模要件の撤廃「早急に実現を図るべき」

⇒飲食店のように「規模の利益」があまり働かない事業において「企業規模要件」は意味をなさない。
⇒非適用の分野があるために、日本経済の一角において「低コストの労働」が、労働者の犠牲のもと、政策的に生み出されてしまう。
⇒人手不足と労働コストの上昇は、今後数十年、継続し得る。事業主負担に耐えられない事業は持続可能でない。
◆個人事業所の非適用業種の解消
常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種 「解消を早急に図るべき」
5人未満を使用する個人事業所 「適用を図る道筋を検討すべきである。」
◆週労働時間 20 時間未満の短時間労働者への適用拡大
「具体的な方策について、実務面での課題や国民年金制度との整合性等を踏まえつつ、着実に検討を進めるべき」
マルチワーカー 「実務的な課題の解決を図ったうえで、被用者保険の適用に向けた具体的な検討を進めるべき」
◆フリーランス・ギグワーカー
「労働者」に該当する方々 「「被用者性」も認められ、適用除外の対象となる場合を除いて被用者保険が適用される旨を明確化した上で、その適用が確実なものとなるよう、必要な対応を早急に講ずるべき」
「労働者性」が認められないフリーランス・ギグワーカー 「実態や諸外国の例なども参考としつつ、引き続き、検討を深めるべき」


「もう一つの方向としての『資産形成』」については続く⇒

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【メモ 12月8日 私鉄総連社会保障研究集会】「介護離職防止 ~職場と本人・家族の心構え~」吉岡規子社会保険労務士(アイ・スマイル社会保険労務士法人)

2022-12-16 | 書記長社労士 お勉強の記録

 12月8日、うちの社会保障研究集会で、吉岡規子特定社会保険労務士(アイ・スマイル社会保険労務士法人代表)に「介護離職防止 ~職場と本人・家族の心構え~」について講演を賜った。
社会保険労務連合会の会報(月刊誌)に寄稿されていた文章を読んで、ぜひお話を聴きたい、うちの仲間達にも聴いてもらいたい、と熱望していて、今回の講演を快諾いただき実現した。
そのときの講演内容をメモとして残しておく。

◎本日の研修の目指すところ
介護を理由として離職する人たちが増えると…
社員 経済的心配 休業したら収入がないし、収入がないと自分の老後も心配
会社 戦力ダウン 人を育てるのに時間もかかるし、そもそも労働力人口減少で採用もたいへん
双方にとって良いことはない!離職防止するしかない!

 日本の女性は世界で一番の長寿(平成元年87.45歳)、男性は1~4番(81.41歳)
健康寿命と平均寿命の差、男性8~9年、女性12年
2010年⇒2025年 738万人=神奈川県の人口と同等程度減る。
2025年⇒2060年 3392万人=東京と大阪を合わせたくらいの人数が居なくなる

◎2025年問題(西暦2025年以降、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、我が国が超高齢化社会になることを指す)
団塊世代が75歳 47~49年生まれ
団塊ジュニア世代1970年代生まれ 45~55歳

 団塊ジュニアの特徴
〇兄弟姉妹の人数が少ない
〇独身者の割合が高い(特に男性)⇒ご自身が介護しなければならない
〇30歳前後での結婚が多く出産も連動(育児と介護のダブルケア)
〇共働きの家庭が多い

◎加速する高齢化率&少子化
高齢化率7%=高齢化社会 1970年に達成、65歳以上の人数733万人、出生数193.4万人
14%=高齢社会 1994年に達成、2362万人、出生数は123.8万人
21年=超高齢社会 2007年に達成 2746.4万人で109万人
直近の2022年9月、高齢化率は29.1%で3640万人で81万人…
我が国は世界で最も高い高齢化率であり、一方で出生数がどんどん減っている。

◎医療介護機能の再編(将来像) 施設から地域へ、医療から介護へ
 日経ビジネス2014/9/22号「隠れ介護1300万人の激震 エース社員が突然消える」
私鉄総連の2021年全組合生活アンケートによると、男女とも40歳以上は1~3割、要介護状態の家族がる。
87,236名×14.4%=12,561名、介護しているかどうかまではアンケートでは出ていないが介護の必要な家族は居る。


 介護を機に離職した理由を平成28年度版高齢社会白書で見ると、「仕事と「手助け・介護」の両立が難しい職場だったため、男性62.1%、女性62.7%(複数回答)。
また、離職時の就業継続の意向を聞いたところ、男女ともに5割以上が「続けたかった」(男性56.0%、女性55.7%)と回答している。
一方で、離職後の変化を聞くと⇒非常に負担が増した、負担が増した、の合計が半数程度、両立できないから専念したら逆に負担が増えた⇒一番大きいのが経済面。
育児は自分たちが通ってきたからなんとなくわかる、しかし介護は未体験で分からない。

 介護者の性別割合も徐々に男性が増えている⇒会社の中にも介護をしている人は居るが、ただ休んでいないだけ。
介護が必要となった理由、以前は脳血管疾患が一位だったが最近は認知症が一番
原因は①ある日突然⇒(例)骨折などを起因して、②時間をかけて進行するもの とがある。
 介護に係る年数と費用
一時的な費用=平均74万円、月々の費用=平均8.3万円 介護期間=平均61.1か月
平均を取ったらそうかも知れないが、多様化している(介護される方の考え方によって違う)、介護期間も多様である

◎課題
1) 世界第1位の高齢化率に対して危機感がない ⇒正常化バイアス
2) 不安なのに準備をしていない
3) 家族の話し合いができていない
 家族の協力が得られない
 親も今の日本を理解していない
4) 介護のプロの存在を知らない
5) 会社が支援制度を周知していない
6) 職場で両立者の事例がない、少ない、共有されていない
7) 上司の理解がない=職場の雰囲気がよくない

◎介護離職防止⇒本人・家族と職場が取り組まなければならないこと
仕事介護の両立はチームワーク(1人で抱え込まないでチームワークで)
・家族・親族・近隣住民⇒介護(役割分担・見守り・助け合い)
・介護のプロ(介護事業者・医療機関・民間事業者)⇒ケアプラン作成、介護・医療、生活支援サービス
・企業など⇒制度づくり、職場風土つくり
・行政⇒制度設計・運営、相談、情報提供、サービスの提供

 どこまで知っていますか?親のこと⇒一方でどこまで伝えてますか?自分のことを子に。

◎介護に関する意思決定者は誰?
自分の人生を意思決定する⇒非介護者本人
幸福で満たされた状態
ありたい自分でいる
家族の合意が欠かせない
介護するのは誰?お金の問題はどうするの?オトナ親子の話し合いが必要です。
とある銀行で親子で参加してもらうセミナーをおこなった、お昼ギリギリで終わる午前中(帰りに食事をしに行く必要がある時間)
父と娘、母と娘、母と息子の組み合わせで参加、しかし父と息子の組合わせはいなかった⇒男同士は難しい?⇒そうであったら第三者が入る必要もある。⇒しかし男同士でもできる

◎職場の取り組み 
1.そなえる=情報収集・整理

①自社の年齢別社員数
②介護に関する両立支援制度の確認⇒育児介護休業法(介護休業、短時間勤務、介護休暇、時間外労働の制限
③介護に関する現状、(潜在)意識調査
 現在(主または従)介護していますか?
 介護に不安を感じますか
 介護状態になった場合の働き方は? ⇒両立を希望する、退職し介護に専念
 社内の支援制度について? 理解しているは、おそらく制度の内容は知らないけど制度があるってのを知っている程度
④ 人事担当者、または相談窓口が基礎知識を得ている(少子高齢化の現状や介護保険などの介護周辺の知識)

2.事態発生に備えて
① 経営者層・管理者層の研修
② 相談窓口の周知(社内、社会、地域包括支援センターなど)
③ 労働者への研修 介護の基礎セミナー、快適スキルセミナー(仕事介護生活の両立)、地域包括ケアサービス活用セミナーの利用の仕方、介護マネープランセミナー、老人ホームの選び方セミナーなどなど
④ 社内制度の利用の両立事例の共有
⑤ 新しい働き方の挑戦・検証 テレワークなど

 介護研修講師を務めてわかったこと
〇業務中に行うことで会社の方針が明確に表れる
〇上級管理職層は必須研修で初動を間違わな
場を用意すれば、介護者は話し出す 日常では積極的にカミングアウトはしないが、実は多くの体験者、体験者がアドバイスをくれます
〇継続は力なり 10年前に必要ない労働者も10年ご参加します
〇家庭の話をしない男性には情報が集まりません
〇男性の悩みは、介護と「家事」

 職場の対応の流れ
制度づくり + 職場風土づくり = 両立環境の実現

3.両立者の応援
①支援制度の利用 法改正などの見直しや、両立者に合わせた新制度検討 ⇒ 先進企業の事例から、自社で「できること」を探す
お互い様意識の醸成 明日は我が身!
③介護者(または予備軍)の仲間を増やす 両立事例の公表で、孤立を防ぎ、情報共有で「早め」の対応


ワーク
「仕事と育児の両立」と、「仕事と介護の両立」と、何が同じで何が違う?
〇時間的予測が難しい
〇時間的経過と共に重くなる
〇40歳代後半から50歳代 上位管理者に就いているケースが多い
〇非介護者はケースが多様
〇遠距離の可能性もある コスト、時間的経済的肉体的精神的負担が大きい
〇当事者間関係者の多様化、複雑化

 両立支援の難易度=介護の両立支援>育児の両立支援>年次有給休暇
年次有給休暇が取れていない職場風土なら、育児、さらに介護は難しい。
まずは年次有給休暇(連続休暇)などからチャレンジ!

◎まとめ
〇オトナ親子は、互いの価値観が同じとは限らないので、第三者を介してでも、早めに話し合う機会を持つ ⇒ そのためにはどうしたらいいのか
〇「仕事と育児の両立」が受け入れられない職場は「仕事と介護の両立」支援は難しい ⇒ 「気持ちがダウンする」それをどうケアするか ⇒産後パパ育休でTRYしてみよう。
〇「制度づくり」「職場風土づくり」の両輪が必要!⇒皆さんがどう動いてくれるか期待
〇天災より確実にやってくる大介護時代!2025年まであと2年、スピードアップ!⇒労働者の皆さんに伝えてください。
今日からの活動が皆さんの会社と労働者を守ってくれる!



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【松山純子社労士の講演をメモ】11月30日 「~心の病気がある人のお金や就労、年金の話~障害年金セミナー」を受講

2022-12-09 | 書記長社労士 お勉強の記録

 11月30日に「~心の病気がある人のお金や就労、年金の話~障害年金セミナー」をオンライン受講した。
講師は、社会保険労務士の藤内秀樹さん、社会保険労務士・FPの久保田あきみさん、社会保険労務士の松山純子さん。

 松山純子社労士のお話をメモ。(松山純子さんに内容を見ていただいて、ブログ記事として公開する了解をいただいております)

 社労士開業前に勤務していた職場で、障害が重くなり仕事が出来なくなった同僚が、「退職はしたくない、退職をしたら社会との繋がりがなくなってしまう」と言っていたのを聞いたときに、「社会と繋がるとか繋がらないとか、ということを考えたことがなかった」ことに気付いた。
社会とのつながりが存在価値につながる。
ここに障害年金がつながるのではないか。
健康を害していても、障害があってもどうして皆は無理して働くのか?
生活費や治療費が必要だからという理由は多いのだろうが、一方で社会とのつながりが必要だという理由もある。
ここに障害年金があれば、選択肢が増えるのではないか。
自分の体調にあった働き方という選択肢、休職することで体調を整えるという選択肢。
それが障害年金ではないか。
障害年金の根底は、社会とのつながりを見出せる、選択肢を増やせるということではないか。
だから、今日は障害年金と働くについて話す。

〇障害年金の3要件。
① 初診日を確定する。
② 保険料納付要件を満たしている。
③ 障害年金に該当する状態か。

〇押さえておく3つ。
① 障害手帳と障害年金は別(障害手帳3級、障害年金2級の人は多い(圧倒的に多い))
② 障害年金は日常生活の大変さが大きな軸となる、そこで考えておく
③ 障害年金は、原則、病名は問わない
例)ナルコレプシーのみで障害年金2級が出た、偏頭痛でも出た


 ”メンタルヘルス不調者”の半数以上は退職(全国健康保険協会管掌健康保険現金給付受給者状況調査報告(令和2年度))
傷病手当金 調査対象件数130,538件
〇精神及び行動の障害が32.72%で最も多い。
〇次いで新生物(17.72%)
メンタルヘルス不調者 約42,700人 うち 約23,600人が退職している。(55.42%)
がん罹患者 約23,100人 うち 約2,600人は退職している。(11.43%)


 現役世代は圧倒的にメンタルヘルス不調が多い、高齢者はがん、メンタル疾患をしっかり押さえておくことが重要。
メンタルヘルス不調者は復職が難しい⇒治療との両立で復職を目指せる⇒福祉サービスの就労からスタートしてみる。

 障害年金を通じて知ったこと
「その行動には理由があるのかもしれない。」
「目の前の人を知ることの大切さ」 

 この行動…どう感じますか…
ある高層ビルのオフィスの一階にエレベーターが止まっています。朝の出社時間で、エレベーターはほぼ満員です。そして、扉が閉まる直前に、もう1人、男の人が乗ってきました。すると「ビーーー!」と重量オーバーのブザーが鳴り響きました。
こういうときは、最後に乗った人が降りるのがマナーですが、その男性はブザーが鳴り続けているにも関わらず、まったく知らん顔。
まわりの人たちは、「朝で急いでいるのに、なんて自分勝手な人だ!」とイライラ爆発寸前です。


 聴覚障害の男性、重量オーバーのブザーが聞こえていなかった。⇒障害者雇用がうまくいくのかな。

 自閉症スペクトラム⇒昔はアスペルガー症候群 困りごと
〇上司にはコミュニケーションが悪いと指摘された。顧客とトラブルになるとコミュニケーションが不足だとよく言われた。コミュニケーションが何だかわからず具体的に言ってもらえなく退職までずっとコミュニケーションとは何かわからなかった。
〇コミュニケーションが苦手で自分の頭や心の中にあることをどう言葉に表現して伝えたらよいか分からなかった。自分では一生懸命やっていると思っているが、どうしてか上手くできず、怒られてしまう。
〇実務の優先順位がつけられない。あいまいな指示を出すと仕事ができない。ケアレスミスが多いなどで、周囲からたびたび注意を受ける。自分でも直そうとするものの、仕事ができない理由をうまく説明できず、どうやったら改善できるのか分からなかった
〇自分ではまったくそんな気がないのに、上から目線の物言いが多いと言われ、誤解されることがある。
〇ファイルを整理するとき指先が痛いので手袋をしたら、職場の上長から事務作業なので手袋をはずすように言われた。

 周囲の関わり方
〇目の前の人を知る
〇「心理的安全性」が大切
〇本人が悪い(努力不足)ではなくて、病気がさせたこと
〇特性を生かせると、企業の大きな強みとなる
・伝統工芸の承継×障害のある方の融合「中村ローソク」
・校正作業 など
〇「仮面ライダーになりたい!」


 何を年金機構に伝えたのか⇒日常生活の大変さと就労における大変さ。
ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群・広汎性発達障害)とADHD(注意欠如多動性障害)
週に5日働いていたとしても、その周囲でどんなことが起こっているのか、どんなことで困っているのか、それをしっかり伝える。

ー認定基準ー
 就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。
したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。


ー精神の障害に係る等級判定ガイドライン 就労状況ー

 働き出すと年金止まる⇒就労していたら出ないではない⇒「就労していて日常の大変さ、就労することの大変さ」を診断書に盛り込んでもらう、病歴・就労状況等申立書にもしっかり書き込んでおく⇒就労したら止まるものでは、けっして、ない。
止まるのは二つ⇒①所得制限により止まる(20歳前障害)、②就労した=日常生活が向上したと判断された場合⇒しかし、直ちに日常生活が向上したとは捉えない。⇒仕事の内容をしっかりと病歴・就労状況等申立書にシンプルに書き込んでおく。

 障害年金で押さえること 2つ
〇日常生活
■診断書裏面
2 日常生活能力の判定 <判断にあたっては単身で生活をするとしたら>
(1)適切な食事
(2)身辺の清潔保持
(3)金銭管理と買い物
(4)通院と服薬
(5)他人との意思伝達及び対人関係
(6)身辺の安全保持及び危機対応
(7)社会性

〇就労状況
①一般企業、特例子会社、A型施設(就職先)
②1日何時間、1週何日勤務しているか
③内部支援があるか
④外部支援があるか
・定着支援(就労支援施設、ナカポツなど)
・ジョブコーチ(障害者職業センター、東京都など)


 日常生活と就労状況の二つだけ書き込んでおく。
単身で生活するとしたら
(1)バランスのいい食事⇒食事は食べているということではなく、配膳を含めて適量をバランスよく摂れているか。
ASD 感覚過敏によりあんこ、こんにゃく、きのこなどの食感が苦手で食べられない、過集中になるとは食事が後回しになりできていない、気に入った食材を飽きるまで食べ続けてしまう、飽きると途端に食べなくなるという極端さがある、触覚の過敏さから同じ惣菜でも購入する店によって食べられるもの食べられないものがある。
ADHD 適切な量や調味料の量がわからない、火加減がわからない、ごみが散らかっている、掃除ができない、
(2)お風呂・着替え・整理整頓⇒病名の特性から日常生活に当てはめていく⇒主治医に伝える
ASD チクチク、タグが気にある⇒就労に落とすと制服の素材などによって着れない⇒会社はわがままと思う⇒だから辞めざるをえない
ADHD 部屋が散らかる、どこに何があるか把握できない、物が見つからない、分類をしようとしても仕分けに迷ってしまう、物がなくなってしまう⇒病歴に書く、診断書に盛り込んでもらう⇒就労していても認められる可能性が生まれる
(3)買い物 
うつ病⇒おっくうだから行かない⇒行けたら日常生活が向上。
双極性障害⇒躁の時に買い過ぎてしまう。
自閉症スペクトラム⇒買い物には行けるがスーパーの中で困りごとが起きる(音がうるさい、光に感覚過敏、こだわりが強すぎる(メーカーや成分))。
総合失調症⇒買い物に行っても人の視線が怖い、悪口を言っているように思ってしまい行けない。
(4)就労、一般企業、特例子会社、A型⇒特例子会社ですよ、総合支援法だ、社会保険に入っていても受給者証がある、なかぽつ(※)さん、支援があればその支援。
それらを伝える。

 みんなにお伝えしたいなぁと思うこと
〇どんな人だって社会とつながれる⇒周囲の方々にそういう想いで接してあげてください

うちの息子は仮面ライダーになりたいって言うんです⇒仮面ライダーの中には人が入っているのよ⇒ひきこもりになってしまった子⇒僕も仮面ライダーになれるかもしれない⇒今、仮面ライダーやっている
〇努力は夢中に勝てない
好きなことをぜひ!みつけて、それを大切にしてください
心がわくわくする、ずっと続けられていられる~など
 ⇒働けるよ
〇社会って思ったより悪くないよ~
社会支援センターがあるよ、なかぽつがあるよ、伴走してくれる場所があるよ
心理的安定性(安全性)(安心性)があれば、就労しにくかったとしても働ける

※なかぽつ=正式名称は「障害者就業・生活支援センター」。「就業」と「生活」の中に「・」があるので、「ぽつ」と読んで「なかぽつ」とよく呼ばれる。地域によっては「しゅうぽつ」とも呼ばれている。

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東京労働局助成金事務センター新宿分室を、労働政策審議会職業安定分科会の委員で視察してきた。

2022-01-18 | 書記長社労士 お勉強の記録

 労働政策審議会職業安定分科会の関係で、本日、東京労働局助成金事務センターの、雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金をあつかっている助成金4係・5係のある、新宿分室(小田急第一生命ビル)に視察に行ってきた。
事業者の多い東京だけあって、2番目の大阪に比較しても2倍以上の支給申請を取り扱っている。(支給申請件数では全国の約2割、支給額では約3割を東京が占めている)
ここでは、255名の体制(職員72名、相談員134名、賃金職員4名、派遣45名)となっている。


 当初は人員も少なく、また処理のノウハウも確立できておらず、現在の場所に移転するまでは、処理に時間が掛かっていたが、今では人員も増強し、処理のノウハウも改善できてきたが、今でも地域特例・業況特例が出来たときのように、制度変更があった場合には、不備申請が増えてしまうこともあって、大幅に支給ジムが滞ることがあるという状況。
現在は安定した処理が行えているが、今後の制度改正に対応すべく処理体制の構築が必要であるとのことだった。
この表で見ると、青い棒グラフと赤い棒グラフの関係をみるとそのことがよくわかるし、処理残件数の青い折れ線グラフを見ると、現場ではどんな状況になっていたのかが想像に難くない。
実際、殺伐として大混乱していて問い合わせの電話などが鳴り響いている現場を想像していたのだが、静かに淡々と処理されている状況で、そしてとてもシステマチックに作業されていたのに驚いた(お一人当たりの処理件数を聞いたが、それは想像以上にたいへんな数字だったが)。


 これまで迅速支給のための業務体制を取ってきたことで、不正受給調査に割ける労力が限定されてきたが、不正受給が疑われる案件も散見されており、調査体制の整備が急務となっている。
昨日もこんなニュースがあったし(https://news.yahoo.co.jp/articles/0c1199ee07a04fbd7d2dfdf98280f74c6a719944)、厚生労働省も昨年12月に「雇用調整助成金等の不正受給への対応を強化します」(リーフレット「それは、不正受給ではありませんか?)としているが、したがって、ここの東京労働局でも少しずつ(可能な限り)不正調査の人員を増員しているとのことであり、迅速支給と適性支給のバランスをどう確立していくかが課題とのこと。
また、不正調査に至る端緒としては従業員からの情報提供が多いとのこと。


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久しぶりのリアルセミナー受講「働きたくなる、働き方へ。過重労働解消のためのセミナー」

2021-12-20 | 書記長社労士 お勉強の記録

 まだ感染症が拡大する前、昨年2月末以来、久しぶりに、リアルでの会場セミナーに参加。
やっぱ、この方が熱が伝わってくるし、自分の集中力も高い。
やっぱリアルが良いわぁ。
受講したのは「令和3年度厚生労働省委託事業『働きたくなる、働き方へ。過重労働解消のためのセミナー』」、講師はレイ法律事務所 佐藤大和代表弁護士。
というわけで、自分のためのメモ。

人権デューデリジェンス(人権DD) 企業活動に伴う人権侵害のリスク管理(人権に関するリスクの全体像を国際人権基準に従って捉え、適切にリスクを把握・特定し、予防・軽減し、実際に人権侵害が起きてしまった際には是正・救済するために包括的な対応を行うこと)⇒社内だけではなくサプライチェーンの人権問題も対象⇒人権リスクのビジネスへの影響⇒人権に関するリスク25項目、6種類の施策(人権への影響評価教育・研修の実施・社内環境制度の整備・サプライチェーンの管理モニタリングの実施・外部への情報公開⇒過重労働解消


過重労働とは ⇒ ブラック企業
①労働者に対して極端な長時間労働やノルマを課す⇒常態化する
②賃金不払残業やハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い⇒違法労働
③このような状況下で労働者に対し
過度の選別を行う⇒社員の使い捨て状態


4p 過重労働の現状と企業経営に与える影響⇒負の連鎖
業種と業種と各種疾患との関係性との関連性⇒脳心⇒運輸業郵便業(精神疾患 両方入っている(T_T))
労務管理は各従業員の性格を押さえる必要がある⇒電通事件判決
リスク 脳心⇒50代が多い、精神⇒40代をピークに20代・30代⇒健康障害と労働時間の関係

過重労働に関わる裁判例①
アクサ生命保険時間 R020610 東京地裁 具体的な発症はなかった、30~50時間
 心身の不調を来す可能性があるような労働に従事させた⇒損害賠償請求が認められた
⇒使用者には事実関係を調査し、不適切な場合には改善指導を行うなどの措置を講ずべき義務が課せられている。

過重労働解消対策
長時間にわたる時間外労働の削減⇒感情労働・頭脳労働等に対する対策も不可欠⇒企業の意識改革(内圧・外圧)⇒過重労働解消が企業価値を高めるという視点が大事

過重労働に関わる裁判例②
サン・チャレンジ事件 東京地裁H261104 飲食店店長の自殺
⇒取締役としての任務懈怠 飲食店運営会社の安全配慮義務違反、上司の不法行為責任

過重労働に関わる裁判例③
株式会社まつり他事件 東京地裁 R30428 善管注意義務を怠った⇒役員報酬を得てない名目的な代表者であっても損害賠償責任を負う(就任自体が有効であったら)


過重労働と経済法
発注者・親事業者⇒しわ寄せ⇒受注者・下請事業者⇒過重労働 ⇒ 独占禁止法・下請法
【フリーランスのためのガイドライン】フリーランス保護の法律も検討されている

独禁法 優越的地位の濫用 ex)スマップの三人
下請法 下請⇒資本金の規模と取引内容で定義

過重労働防止対策
○全ての労働者の労働時間の状況の把握を義務付け(20190401)

過重労働に関わる裁判例④
池一菜果園ほか事件 高知地裁R20228 量的だけでなく質的にも過重労働になっていないか

○年次有給休暇の取得の義務化
○労働時間等設定改善法改正 勤務間インターバル制度導入の努力義務化(20190401)
○産業医との連携
○時間外労働の上限規制(2019労働基準法改正) 

過重労働に関わる裁判例⑤
ダイレックス事件(長崎地裁 R30226) 無効な変形労働時間制

事業主に求められる措置⇒義務なのか努力義務なのか⇒義務の場合は罰則付きになる
労安法によるストレスチェック制度⇒集団分析⇒過重労働解消に繋げていく
 23pの大切なポイント 特に②

ハラスメント
セクハラ(対価型・環境型)、パワハラ、マタハラ、アルハラ、SOGIハラ(ソジハラ⇒性自認)、モラハラ、エアハラ、スモークハラ、セカンドハラスメント、エイジハラスメント、スメルハラスメント
労働施策総合推進法 パワハラ防止対策義務化(2020年6月 中小企業は2022年4月)
パワハラが起きたらすぐに調査し適切な対応⇒最近、加害側からの相談が増えている

パワハラ ①優越的な関係の基づき、②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、③身体的もしくは精神的に苦痛を与えること 3つの要件を満たすものはハラスメント

26p パワハラ6類型 身体的な攻撃、精神的な攻撃、プライバシーの侵害、過大な要求、過小な要求と評価、人間関係からの切り離し(最近ではライングループに入れないという事例)


効果的なハラスメント解消対策
最新のハラスメントに関する知識⇒ハラスメントを起きる原因を解消すること⇒ハラスメント・社員ストレス等の対策、アンガーマネジメント、コミュニケーション
⇒レッドカード的ハラスメント(1回でも損害賠償責任、刑事と民事)とイエローカード的ハラスメント


 ハラスメント加害者(予備軍)タイプ
指導・信念タイプ、能力限界タイプ、被害連鎖タイプ、ムチタイプ、感情タイプ、部下との相性タイプ、セクハラ復讐タイプ、精神疾患タイプ、部下による虚偽申告タイプ(上司を憎んでいる場合⇒えん罪事件)、部下や同僚からのパワハラタイプ、私生活注意兼いじめ型タイプ

不合理な待遇差の禁止

どのように過重労働を解消するのか?
経営者・管理者・労務担当者の意識改革
過重労働対策推進計画
各部門の役割と連携⇒産業医
労働時間に対する基準
衛生委員会などの活用
医師による面案指導制度
ストレスチェック制度
各ハラスメント対策⇒グレーゾーンばかりを知りたがるのは要注意

過重労働解消の好事例⇒女性の活躍推進、健康経営、SDGsの推進、DX
⇒長時間労働の是正(残業するのが当たり前、残業している人はがんばっているという考え方の払拭←重要かつ難しい)、従業員の休みの改善、職場の雰囲気改善、育児と両立しやすい職場作り、ITの活用、職員間の交流会の実施、定期的な意見交換会を実施、人事評価制度や賃金制度の改善、取引先の改善、高齢者・女性などの採用促進

在籍型出向支援(コロナ禍)


テレワーク・在宅勤務
厚労省のガイドライン⇒就業規則整備・労働条件の明示⇒テレワークを使用者が許可する場所の設定⇒労働時間制度の検討(通常、変形労働、フレックスタイム)⇒勤怠管理(自己申告と実態調査)⇒在宅勤務を拒否する社員への対応(M社事件 大阪高裁H231206)


 リモハラ・テレハラ…パワハラの6類型と同じ
テレワークによるメンタル疾患⇒会話や対面機会が減少、疎外間を覚える、周りからの評価がわかりにくい⇒対面の機会を増やす・定期的にミーティング



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出来高払いの割増賃金 中島ゼミで「トールエクスプレスジャパン事件」について学ぶ

2021-09-13 | 書記長社労士 お勉強の記録
【13 💪部屋1-41 DBenchPress22.5kg DFly17.5kg WidePushUp SitUp Crunch】 先日(2021年8月27日)、労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会の第2回ハイヤー・タクシー作業部会で、第1回の時の使用者側委員の発言について、以下の通り、事務局に質問をした。

「タクシーは、みなし残業で賃率を労使で協定している」

 タクシーは「みなし」で時間外労働、深夜労働の割増手当を支給していいのか?
歩合給賃金であっても、以下の判例もあり、「通常の労働時間の賃金に当たる部分と労働基準法37条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である」と認識しているがいかがか?

高知県観光事件 最高裁平成6年6月13日第二小法廷判決では、
タクシー乗務員の歩合給について,当該歩合給が時間外及び深夜の労働を行った場合においても増額されるものでもなく,通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないものであったことを理由として,当該歩合給が労働基準法37条所定の割増賃金として支払われたものとは認められないと判断

国際自動車事件 最高裁判所令和2年3月30日第一小法廷判決では、
歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の定めがある賃金規則に基づいてされた残業手当等の支払により労働基準法37条の定める割増賃金が支払われたとはいえないと判断


 そのことはさておき、歩合給(出来高払い)の割増賃金については、2021年2月19日の中島ゼミ(中島光孝弁護士を囲んでの社労士有志による判例勉強回)で 「オンラインになったおかげで参加出来るようになった「中島ゼミ」、今回は国際自動車(第二次上告審)事件「割増賃金相当額を控除する賃金規定の有効性」について学んだ。」)で、深掘りの学習をした。
その時の自分の感想としては、「なんで高知県観光事件【最小判平成6・6・13】でけりが付いている歩合給の時間外労働の問題が、こんなにも長引いてしまったのか、それが疑問だったが、今回のゼミで、以下の通り、すっきり理解出来た。」ということだった。


 が、しかし、今回の中島ゼミ(2021年8月27日)で学んだ「トールエクスプレスジャパン事件大阪高裁判決」では、「本件賃金規則においては、能率手当を含む基準内賃金が通常の労働時間に当たる部分、時間外手当A、B及びCが労基法37条の定める割増賃金であり、当該割増賃金は他の賃金と明確に区別して支給されていると認めることができる」として、対価性を検討する前に、きわめて形式的な判断で「判別可能性」を肯定した。

 この判決の特徴は、国際自動車第2次最判が基準とした、時間外労働を抑制し、労働者への補償を行うという労基法37条の趣旨に従って、対価性及び判別可能性を判断していないこと。
労基法37条の趣旨は、判断の基準として形式的に述べられているだけで、実際の判断の中では顧みられておらず、実際の判断は労基法27条や労働基準規則に明確に違反していなければ、雇用契約と労使合意で自由に賃金規則を制定することができると考えていることだ。
強行法規である労基法37条よりも雇用契約や労使合意を上位に置いているとしか思えない契約自由の原則の一面的な強調が本判決を支える思想であると感じる。

 この裁判における清水響裁判長は、かつて国際自動車事件第2次訴訟一審において労働者敗訴の判決を書いた裁判官で、「契約自由の原則と労使合意を労基法37条の上に置き、労基法27条などの明文の規定に反しない限り、どのような賃金規則を作ることも自由である」ということを前提に判決した。
この判決は控訴審で維持されたが、上告審である国際自動車第2次最高裁判決で明確に否定され、破棄差戻されたのだ。
しかしながら、そのことを反省もせずに、またぞろ、こんな判決をしたということだ。
この裁判官の思想なのかも知れないが、「労働時間規制」よりも労働の効率化を優先する規制する制度としては、労働基準法では2種類の裁量労働制が法定されている。
そこを、法の番人である裁判官が、ごっちゃにされたら、たまらんわ。

 以下は、先日の中島ゼミで学習した部分の抜粋。 

第3 二審判決の問題点
1 国際自動車(第1 事件)第二次上告審判決・最一小判令2.3.30(労判1220 号5 頁)(以下「令和2年判決」とする)との関係

(1)令和2年判決の,当該手当が,時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているかどうかの判断。
⇒通常の労働時間の賃金に当たる部分と労基法37 条の定める割増賃金に当たる部分の判別をすることができるというためには,当該手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていることを要するところ,当該労働契約に係る契約書等の記載内容のほか諸般の事情を考慮して判断すべきである。
⇒その判断に際しては,当該手当の名称や算定方法だけでなく,労基法37 条の趣旨を踏まえ,当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置付け等にも留意して検討しなければならない。
⇒トールエクスプレスジャパン事件大阪高裁判決はこの点について同じ判断をしている。

(2)令和2年判決の事案における「歩合給(1)」及び残業手当とトールエクスプレスジャパン事件大阪高裁判決の事案における「能率手当」と残業手当は,以下の算式で算出される。

■令和2年判決
歩合給(1)=対象額A-{割増金(深夜手当,残業手当および公出手当の合計)+交通費}
対象額A=(所定内税抜揚高-所定内基礎控除額)× 0.53
+(公出税抜揚高-公出基礎控除額)× 0.62
残業手当=①+②
①{(基本給+服務手当)÷(出勤日数罰15.5 時間)}× 1.25 ×残業時間
②(対象額A÷総労働時間)× 0.25 ×残業時間

■本判決
能率手当=賃金対象額-時間外手当A
賃金対象額=配達重量部分等の欠く計算対象要素を所定の計算をしたうえで合算し支店係数を乗じたものに,その他の計算対象要素を加算した
時間外手当A=(能率手当を除く基準内賃金/年間平均所定時間)×(1.25 ×時間外労働時間+ 0.25 ×深夜労働時間+ 1.35 ×法定休日労働時間)

ア 対象額Aは,割増賃金(残業手当)の算出の基礎とされている。

イ 賃金対象額は,割増賃金(時間外手当A)の算出の基礎とされていない。

ウ 本判決(トールエクスプレスジャパン事件大阪高裁判決)は,上記違いを令和2年判決と異なり,時間外手手当Aは時間外労働の対価として支払われていると判断した。

(3)労基法37 条の趣旨について
ア 令和2 年判決は,労基法37 条の趣旨は「時間外労働の抑制,労働時間に関する規定の遵守,労働者への補償」であると判示した。

イ 令和2 年判決において,割増金の額がそのまま歩合給(1)の減額につながるという仕組みにおける「割増金」は,出来高払制賃金において,「当該揚高を得るに当たり生ずる割増賃金をその経費とみた上で,その全額をタクシー乗務員に負担させているに等しいもの」と見ることができるとした。

ウ 令和2 年判決において,上記仕組みは労基法37 条の趣旨(時間外労働の抑制等)に沿っているといえないとした。

エ 令和2 年判決において,歩合給(1)が0 円となる場合は,すべてが割増賃金となるという結果について「割増金の額が大きくなり歩合給(1)が0 円となる場合には,出来高払制の賃金部分について,割増金のみが支払われることとなるところ,この場合における割増金を時間外労働等に対する対価とみるとすれば,出来高払制の賃金部分につき通常の労働時間の賃金に当たる部分はなく,全てが割増賃金であることとなるが,これは,法定の労働時間を超えた労働に対する割増分として支払われるという労基法37 条の定める割増賃金の本質から逸脱したものである。」と判断した。

オ 本判決(トールエクスプレスジャパン事件大阪高裁判決)は,労基法37 条の趣旨に言及していない。

カ 本判決において,能率手当が0 円となる場合は,すべてが時間外労働Aとなるが,時間外手当Aが賃金対象額を超えるまでは,能率手当+時間外手当A=賃金対象額であるから,使用者の負担は増大することなく,したがって,時間外労働の抑制効果はない。

2 本判決の特徴はなにか
労基法37 条の趣旨による規制よりも,労働の効率化を優先する思想に基づくもの。


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日弁連が開催した「『テレワーク』という働き方に関するシンポジウム」を受講(視聴?)

2021-04-28 | 書記長社労士 お勉強の記録

 4月23日に、日本弁護士連合会 労働法制シンポジウム「『テレワーク』という働き方に関するシンポジウム」が、パネルディスカッション方式で、zoomウェビナーによって開催されて、自分も受講(視聴?)。
交通の安全と労働を考える市民会議―「ライドシェア」問題を考える―でもお世話になっておる菅俊治弁護士が司会で、使用者側弁護士は、末啓一郎弁護士と大浦綾子弁護士、労働者側弁護士は、新村響子弁護士と竹村和也弁護士。
連合からも、冨田珠代総合政策推進局総合局長が、そして経団連からも参加があって、現場の事例などを紹介し、事前に定められた論点について、使用者側、労働者側の弁護士がコメントをし、議論が展開されていく。

 「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」が今年3月25日に改訂された。
テレワークってなかなか普及しないだろうなって、高を括っていたら、COVID-19で、一気に普及し(人とのつながりが重要だと思い込んでいて絶対にテレワークなど出来ないと思い込んでいた自分の職場でも1回目の緊急事態宣言の時には導入した)、一方で、ガイドラインで書かれていた以上に、メリットもあるし、現場では様々な課題・弊害・トラブルも顕在化した。
オフィスコスト・通勤コストの削減、通勤時間の削減や時間場所を選ばず勤務可能となって生産性の向上、イノベーションの向上などがメリットで、一方で、かえって長時間勤務になったり、サポートが受けられなかったり孤独感などで、メンタルヘルスケアが課題となったり、業務の割り振りや目標設定や評価制度に支障が出たり、通勤手当などこれまでの支給根拠に齟齬が出て、逆に新たな手当の支給の検討が必要になったり。
また、その業務やその人がテレワークに適しているのか、その人は自立的に仕事が出来るのかどうか、これらの判断がけっこう難しいということもわかってきた。

 自分のzoomのver.が古くて、最新ヴァージョンをインストールしないとログイン出来なくて、それが手こずってしまい、冒頭15分ほどを聞き逃したが、しかし一つ一つの論点で、労使でここまで考え方や解釈が違うのかと、ほんと驚くと共に興味深かった。
自分として、特に聞きたかったのは、「実労働時間の把握(長時間労働になりがちだという連合総研の調査結果もある)と事業場外みなしの適否」について、「安全配慮と労働災害(その延長線上に過重労働の脳心臓疾患)」について、「設備・費用負担のルールの定め方と留意点」などだったが、対応に関する考え方の軸は掴めた気がする。

第1 テレワークを議論する意義について
1. 現場の状況や相談の状況、この問題を議論する意義について教えてください。

第2 テレワークの対象・根拠
2. いかなる場合に会社がテレワークを命じることができるのでしょうか。
a) テレワークを命ずる旨の就業規則があれば足りるのでしょうか。個別同意は必要でしょうか。
b) 上記は感染拡大期と平時とで考え方や結論に違いは生じますか。
<使用者側弁護士コメント>
① コロナの感染拡大に伴う緊急事態宣言発令時は、緊急事態下における臨時的な措置として、テレワークを命じることができる旨の規定の有無を問わず、命じられる。
② 平常時には、配転と同様に命じられるとする見解と、私生活上の場所での労務提供を命じる内容であることから通常の配転命令よりも限定的に考えるべきとする見解あり。
③ 使用者によるテレワーク対象者選定の使用者の裁量に対しては、均等均衡待遇規制、男女差別禁止や不当労働行為禁止に反してはならない等の制約あり。
<労働側弁護士コメント>
① 就労場所という労働条件の変更となること、就労場所が労働者の私的領域となりプライバシー保護の要請が高いことから個別合意が必要となる。
② 就業規則に使用者がテレワークを命じることのできる規程があったとしても、当該定めは公序良俗に反する(もしくは労契法7条の合理性が否定される)。
③ 基本的に感染拡大期、平時で結論は変わらない。

3. いかなる場合に労働者がテレワークを求めることができるのでしょうか。
a) その企業にテレワークの制度が存在しない場合でも、テレワークを請求できますか。
b) テレワーク制度が存在する場合で、使用者が対象者、可能日を自由に制限・選択できるのでしょうか。その場合の留意点・判断基準はありますか。
<参考設例> 非正規社員にはPC貸出を認めていないので,という理由で正社員のみのテレワーク勤務とすることについて問題はないですか(均衡均等待遇との関係)
<使用者側弁護士コメント>
① 就労請求権自体がないことに鑑み、テレワーク請求権もない。
② 個々の事案においては、安全配慮義務履行や、均等均衡待遇規制、男女差別禁止、不当労働行為禁止の観点から、テレワークを認めないことが違法となる余地はあるが、その場合も、テレワーク請求権は発生しない(ただし、労働委員会により在宅勤務をさせることを命ずる救済命令がなされるケースはあり得る)。
<労働側弁護士コメント>
① 現行法上、使用者にテレワークを義務づけるものはない。もっとも、テレワークは労使双方にメリットのあるものであり、積極的に労使合意によって実現していくべき。
② テレワークを希望する労働者が出社できない(しない)場合において、当該労働者に不利益処分を課すことができるかは別途検討が必要。解雇の場合は労契法16条・17条、懲戒処分の場合は労契法15条に則して判断される。その際、コロナ禍のような緊急時において、労働者がテレワークを希望して出社できない(しない)事情が当然に考慮される。
③ 正規労働者にテレワークを認め、非正規労働者に認めない場合、それがパート有期法8条・9条、派遣法30条の3の不合理な待遇の相違にあたらないかが検討されることになるが、テレワーク可能な業務に就いているにもかかわらず非正規労働者にテレワークに就かせないことは不合理となると考えられる。

第3 労働時間管理と労務管理
4. 時間外・休日・深夜労働が増えがちであるという指摘もあります。長時間労働やそれによる健康障害を抑制するためにどのような工夫をしていますか。

5. テレワークを行わせる場合、実労働時間の把握するためには、どのような方法がふさわしいと考えますか。
<使用者側弁護士コメント>
① 新ガイドラインは、「適正把握ガイドライン」の内容と同等であり、テレワークゆえに、労基法違反(賃金不払・上限規制違反)から免責される範囲が広くなるといった解釈はしがたい内容である。
② 使用者としては、通常勤務と比較して労働時間の把握をしにくいテレワークにおいて、把握せざる時間外等労働が発生することによる労基法違反のリスクを回避するためには、時間外・深夜・休日労働を原則禁止とする方針を選ぶこともあるであろう。
<労働側弁護士コメント>
① 客観的方法によって労働時間を記録しなければならない。テレワークにおいて労働時間の客観的記録が困難となる事情はなく、自己申告とする理由はない。むしろ、テレワークは私生活等と近接し、長時間労働となりやすく、労働時間の客観的把握が必要である。
② 具体的には、PC上の勤怠管理ツールが考えられる。また、実際の労働時間と解離していないかを確認するために、PCのログ記録等との突合も行うべきである。

6. 「中抜け」の労働時間管理については,どうしたらよいでしょうか。始業・終業時刻の自由度を高める取り扱いについてはどう考えますか。
<使用者側弁護士コメント>
① 理論的には、「中抜け時間」は、実労働時間からは除外するべきだが、事業所勤務にても勤務時間中に認められている極めて短時間の業務からの離脱についてまで「中抜け時間」とするべきではない。この仕分けについて、合理的基準が必要。
<労働側弁護士コメント>
① ここでいう「中抜け時間」とは、あくまでも私生活のために相当程度の業務中断が行われたような場面 に限定されている(トイレ、短時間の喫煙、お茶のみ等は事業場における就労でも問題にされることはなく、ここでの問題にはならない)。

7. 労働者に対する勤務時間帯中のモニタリングについてはどのように考えますか。過度な監視や私生活への干渉への心配や相談はありませんか。
<使用者側弁護士コメント>
① 業務内容との関連で合理性・相当性がある場合には認められるが、私的生活に対する過度の立ち入りとならないよう配慮が必要である。
② また、当該労働者が従事する業務内容に応じて個別的な検討が必要である。
<労働側弁護士コメント>
① 様々なモニタリングがあり、それぞれの適法性を検討する必要がある。
② 事業場で就労する労働者への継続した監視などは基本的に行われておらず、なぜテレワークにだけモニタリングが必要なのかを考える必要がある。
③ 労働者の私的空間を就労場所としていることからすれば、プライバシーへの配慮は必要である。また、継続したモニタリングによる精神的負荷も念頭に置かなければならない。

8. テレワークに事業場外みなし労働時間制を適用することについてどう考えますか。
<使用者側弁護士コメント>
① 新ガイドラインは、在宅勤務における事業場外みなし制度適用の条件を緩和していた旧ガイドラインを踏襲した上、同制度適用を推奨する書きぶりとなっている。
② 個別事案においては、新ガイドライン案の要件を満たすかという検討ではなく、労基法38条の2に規定する労働時間把握の困難性があるという要件を満たすかを検討すべき。
③ 事業場外みなしを適用する場合にも、安全衛生の観点からの時間把握は必要。
<労働側弁護士コメント>
① 情報通信技術が発達している現代において、在宅労働者の「労働時間が算定し難い」ということは 不可能である(労働時間の把握は技術的に容易である)。
② 働かせ方(即応義務を課しているか否かなど)によって、左右されるものではない。この点でガイドラインや通達の考えは誤っている。
③ 私的空間と近接することによる長時間労働等のリスクからすれば、事業場外みなし制度を適用することは危険。

第4 設備・費用負担
9. テレワークにおける費用負担に関する実情を教えてください。
a) 例えば,PC その他の情報通信設備の購入費用、机・椅子の購入費用や自宅の電気料金の増加分はどう考えるべきですか。在宅勤務手当や通勤費の実費払いなどはどのような扱いがなされていますか。
b) 賃金として扱って源泉を行うべきか問題になる事例はありますか。
<使用者側弁護士コメント>
① 就業規則に規定することで、従業員負担とすることができる(ただし、就業規則の不利益変更の問題あり)
② 出勤日の減少に応じて通勤手当を減額できるかは、各社の規定内容による(交通費填補の趣旨である明記されていれば、減額可能)
<労働側弁護士コメント>
① 業務遂行に必要な費用であるし、出社して就労する労働者との均衡も考えると使用者で負担すべきである 。
② テレワーク実施に労働者の個別合意が必要とする見解によれば、使用者が諸費用を負担しないテレワークについて、労働者がそれを拒否すれば、使用者はテレワークを実現できないことになる。

第5 安全衛生関係
10. 作業環境整備その他の安全衛生の確保について,どのような問題がありますか。
<使用者側弁護士コメント>
① 使用者としては、新ガイドライン案別紙のチェックリストにより、作業環境を確認した上でテレワークを許可するとしておくことがよかろう。
② ただし、プライベート空間の状況についての開示を求めることについては、プライバシーとのバランスで限界あり。
<労働側弁護士コメント>
① テレワーク特有の問題に則した安全衛生上の対応が必要となる。衛生委員会等を活用した細やかな対応が求められる。
② 安全衛生の問題に限らず、テレワークの運用においては様々な問題が生じうる。常にフォローアップが必要であるが、それには労働組合の関与等も重要となる。

第6 人事評価
11. 人事評価が難しいという声はありますか。どのように工夫していますか。



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