労組書記長(←元)社労士 ビール片手にうろうろと~

労組の仕事している勤務社労士がもしや誰かの役に立ってるんかな~と思いつつ飲んだくれて書いてるっす~(* ̄∀ ̄)ノ■☆

【メモ】固定残業代制の有効性可否

2024-03-05 | 書記長社労士 労務管理

固定残業代(定額残業代)が時間外労働割増賃金、休日労働割増賃金、深夜労働割増賃金に対する有効な弁済と認められない場合
①割増賃金を一切払っていないことになる
②固定残業代部分が割増賃金の計算基礎となる賃金(労基法37条1項、労規則21条)に組み込まれることになるため、1時間当たりの単価が跳ね上がる
③裁判に至れば、未払残業代全額を上限とする付加金の制裁(労基法114条)を受けるリスクが生じる

固定残業代による支払いをめぐり裁判例で検討されてきた割増賃金支払いの有効要件、判断要素
①時間外労働や深夜労働の対価(割増賃金)の趣旨で支払われていることの合意がある⇒「対価要件」
②通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分が判別できる⇒「明確区分性」
③雇用契約書等の記載内容のほか、具体的事案に応じ、使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断すべき

〇高知観光事件【最小判平6・6・13】
 歩合給で雇用されているタクシー運転手に対する時間外および深夜労働の割増賃金につき、歩合給にくみ込んで支払っているという会社側の主張に対し、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外および深夜の割増賃金に当たる部分とを判別できないとして、右割増賃金の支払いが命ぜられた事例。
 割増賃金不払いに対する附加金の請求につき、二年を経過したものを除き認容された事例。
〇テックジャパン事件【最小判平24・3・8】
 基本給を月額で定めた上で月間総労働時間が一定の時間を超える場合に1時間当たり一定額を別途支払うなどの約定のある雇用契約の下において,使用者が,各月の上記一定の時間以内の労働時間中の時間外労働についても,基本給とは別に,労働基準法(平成20年法律第89号による改正前のもの)37条1項の規定する割増賃金の支払義務を負うとされた事例
〇日本ケミカル事件【最小判平30・7・19】
 雇用契約において時間外労働等の対価とされていた定額の手当の支払により労働基準法37条の割増賃金が支払われたということができないとした原審の判断に違法があるとされた事例


基本給や出来高給(歩合給や能率給など)を含め、通常の労働時間の賃金として支払われるべきものを固定残業代などの割増賃金に振り分けて支給することで割増賃金の支払いを抑えることは労基法37条の趣旨に反するといえる。
(労基法37条の趣旨⇒割増賃金を支払わせることによって時間外労働等を抑制し、労働時間に関する同法の規定を遵守させるとともに労働者への補償を行う趣旨)

国際自動車事件二次上告審事件【最小判平29・2・28】
 歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の賃金規則上の定めが公序良俗に反し無効であるとして未払賃金の請求を認容した原審の判断に違法があるとされた事例


対価性の判断⇒当該手当の名称や算定方法だけではなく、労基法37条の趣旨を踏まえ諸手当の位置付け等にも留意して検討しなければならない
⇒使用者の労働者に対する当該手当等に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況など諸般の事情を考慮し、それが労基法37条の趣旨にかなる割増賃金として位置付けられるのかを実質的に検討し、同条の趣旨にかなわない割増賃金なるものは、その対価性を否定する
⇒割増金の額そのままが歩合給①の減額につながるという仕組みが、当該揚高を得るにあたり生じる割増賃金をその経費としてみたうえで、全額をタクシー乗務員に負担させているに等しいと評価


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