和歌山県新宮市相賀
桑の木の滝は、「日本の滝100選」に選ばれている滝である。
熊野川の支流である高田川の、そのまた支流の桑の木谷に懸かっている。
紀伊半島は全国的にみても滝の多い地域で、地形図を見れば、凄絶とも言えるような険しい谷が随所に見られ、その深い山々に無数の滝が内包されている。
しかも落差100mを超える巨瀑、技術のある登山者のみが見られる秘瀑、知名度の高い名瀑と、それぞれ枚挙に暇が無いほどであるから、100選の選定は難しい地域であったと思われる。
そんな中で、落差20mほどの桑の木の滝も選ばれたのは、やはりその優美な姿からであろう。
幅広の整った形と、繊細な水の表情が魅力的で、とても好きな滝である。
100選に選ばれるくらいであるから、ネット上に画像は溢れている。その中には、素晴らしい表情の桑の木の滝を捉えた写真も多いので、ここに今さら掲載するのもどうかと思うが、滝のみでなく、周辺も含めて紹介すれば、それなりに面白いのではなかろうか。
滝の紹介サイトは、恐らく神社紹介サイトより多いと思うのだけど、その殆どが滝のみの紹介である。神社でいえば、本殿のみを紹介されている気分なのだ。
私としては、滝以外の流れも見たいし、周辺の風景も見たい。そうやって、トータルで周辺を見ていくと、滝の魅力は更に高まると思うのだが。
桑の木谷に入るには、まず高田川の橋を渡る。
上流には集落もあるが、美しい流れだ。
桑の木谷に入ると、辺りは一気に苔生して様相が一変する。
根元だけでなく、幹の中ほどにも苔を纏った木々が多く、さすがは温暖多雨な南紀だと感心させられる。
地形図を見ても判るように、桑の木谷はこの辺りでは珍しく穏やかな地形だ。
こういう木々の間を縫うような穏やかな流れは、私には、滝と並ぶくらい魅力的に映る。
流れの右手にある丸い草の塊、実は苔や羊歯が岩を覆っているものである。こんなのが幾つもあって、南紀は凄いなぁ、と再び感心してしまう。
ちょっと辺りの雰囲気が変わって石垣が現れる。
谷沿いにある相賀八幡神社の石垣である。
流れのそば、岩壁の立つ境内、狭いながらも素敵な環境で、本来ならここをメインに紹介すべきかも知れないが、岩壁からの落石により、本殿は木端微塵の状態である。
昨年の早春に訪れた時にも同じ状態であったし、立ち入り禁止のままであるから、落石の危険は去っていないのだろう。
それなりに訪れる人は多いのだが、ずっと苔生した道が続く。
やがて小さな吊橋が現れる。
思いの外よく揺れる。
少しだけ道が険しくなると、すぐ桑の木の滝に到着。
滝前に立ち籠める水煙に光が射す。
滝の左手前に咲く小さな花はイワタバコで、夏の渓谷を代表するような花だ。
水の描くラインは、優美で品のあるもの。
下部は左右非対称で、表情に変化を与える。
イワタバコ。
花期はやや過ぎていて、萎れたものが多く、色もちょっと薄くなっていた。本来はもう少し濃い紫色。
星型の花で夏の渓谷を彩る姿は印象深い。
さて、来た道を戻り、高田川沿いに少し上流に行くことにする。
高田トンネルを抜けた先の高田川。飛び込みたくなるような場所だ。
流れの右手の木々は、神社の杜である。
そしてこちらがその神社。高倉神社というらしい。
本殿。
素人目には貴重さが判らないが、周りの樹叢は新宮市の天然記念物。
また、ヒメボタルの多い場所らしい。
以前、ここから近い南紀勝浦でヒメボタルを見たことがあるが、ゲンジボタルを幻想的とするなら、ヒメボタルは神秘的、という印象を持った。
2万5千分1地形図 新宮
撮影日時 080910 9時40分~12時10分
駐車場 なし 高田川を渡る橋の近くに、少し道路が広くなっている場所がある。
地図
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私の滝めぐりや写真を始めるきっかけになったお気に入りの場所です。視点の違いというかhiro1jzさんの感性の素晴らしさを感じながらゆっくりと見せて頂きました。私はなかなか納得のゆく写真が撮れないのでどちらかというと単発写真の記事が多いのですが、時間の経過を感じられる作品を見せられると自分が行った時の感覚がはっきりと甦ります。よい刺激を頂きました。っていうか、ひょっこり行って見たくなりましたよ!
溜息というか
神聖とか神性とか
言葉は無力というか
言葉は要らないというか
やっぱり溜息です
こちらこそおおきにです。
私にも、きっかけの滝みたいなものが京都にあります。
桑の木の滝と違って、今見たらホントに小さな滝なんですが、
子供の頃にその滝と出会ってから滝好きになりました。
感性というか、あまりに多くの人が紹介されている滝なので、
ちょっと周りも載せて見映え良くしとこか、
みたいな苦肉の策です(笑
ひょっこり行ける距離にお住まいなのが羨ましすぎます。
桑の木へひょっこりということは、
鼻白も飛雪も布引も那智へもひょっこり・・・。
ああ・・・なんか涎が出そうです(笑
>幽黙さん
ここはホントに多くの方が素晴らしい写真を紹介されているので、
出来ればそれらの画像を見ないで頂けるとありがたいです(笑
あ、でも実物は見て頂きたいなぁ。
とても素敵なところです。
播磨からは、ちょっと遠すぎますが・・・。
水の美しさが、いやはやなんとも。
溜息でますね。こんな場所でボーっとすると幸福
なんでしょうね。
悔しいです。悪友が一人で遠野に遊びに行きました
。こっちは雨のなか売り出し。。。地団駄ふんで
仕事してましたよ。
月読さんて学校と幼稚園に挟まれているんですか
。せめて一つなら、いいんですけどね。
甲斐の式内社の松尾神社は隣が学校ですが、なか
なかの神社だったんですけどね。
天神社は直に見てみたいですよね。
が、撮影中、カップルがやってて居心地が悪かったです。
負けずに撮影に専念したら、向こうが根負けして帰っていきました。
申し訳ないことをしたかも知れません(笑
私も昨日の雨で、南山城は延期しました。
今度の連休は舞鶴の予定でしたが、南山城に先に行きたいので、
舞鶴は来月になりそうです。
学校に挟まれている関係上、月読には日曜に行きたかったんですけどねぇ。
兵庫丹波の兵主神社なんかも、すぐ隣が高校ですが、
雰囲気の良いところです。
いちおうグーグルの航空写真で月読の状況も確認しているんですが、
アングルによっては背景に学校が写りそうな・・・。
あ、前回、書き忘れていましたが、南山城のお気に入り神社、
伊賀街道沿いじゃないくて、もう少し南です。
次の南山城行きで撮り直しますんで、納得いけば掲載します。
悪想念送りますよ。たいがい勝てます。勝てないの
は、おばさんの集団と女子高生の集団ですね。
この滝も素晴らしいんですが、小さいつり橋が風情
あるなぁ。どの写真も素晴らしいです。
足つけたりしてボーっとしたい感じですよ。
お~来月に延期ですか!すでに目を付けた神社とか
あるんですか?元伊勢もあるし気合いれる場所で
すよね。天気とかタイミングあうといいですね。
南山城は、かな~り奈良に隣接するような場所で
すね。社殿とかは奈良に近いような場所な気がし
ますね。これは楽しみです。
奈良と京都の境の奈良も面白そうですよね。
月読さんは来年行きますよ。hiro1jzさんと、どっ
ちが早いかな?
「カップルがやってて」ってなんだ?
「カップルがやってきて」の間違いです。
誤解なきよう・・・(恥
まあ私が行くところは、
基本的に邪魔になるような人が滅多にいませんし、
もし高校生なんていたら怪しまれるのがオチなんで逃げますね(笑
奈良、和歌山は吊橋の多いところでして、
山間部を走っていると、あちこちで見かけます。
ここ以外でも滝に行ったのですが、
そちらでも素敵な吊橋があったので、
また紹介すると思います。
舞鶴周辺は、地図と航空写真で幾つかピックアップしてます。
精度の高い航空写真は、まだ一部地域しか提供されていないのですが、
ある程度の杜の豊かさ、駐車場所などが検討できるので便利です。
私が気に入った場所は、南山城にしては地味な社殿です。
他のホームページや地図から、
ある程度、参道の長さが窺えたので行ったのですが、
その参道に一目ぼれしました。
次で納得できる写真が撮れなくても、
たぶん撮れるまで何度でも行くつもりです。
しょう。。。する馬鹿もいるのかな?
つり橋もいいんですよね。味があるから素敵です。
それに、この水質たまりませんね。
滝シリーズもナイス・アイデアですね。
舞鶴は索敵終了してるんですね。期待大です。
なんか軍港の印象しかないんですよね。式内社が
数社あるいがいは知らないんですよ。
日本海は遠いです。盆暮れ・GWいがいは行けな
い場所です。hiro1jzさんの掲載みて、行く気力
わかせますよ。
へ~南山城は自分は知らない神社の予感です。
電車でみるかぎり殺風景なんですが、そんな場所
にも素晴らしい社が隠されているんですね。
ワクワクです。
京都だったかな?謀反を伝える歌を歌った少女を
祭る神社が良さそうなんですよね。奈良かな?
いや、美しい場所だからこそいるかも・・・。
滝というか、渓谷の風景、みたいなものは、
かなり撮りたいし、行きたい場所も沢山あるんですよね。
でも、美しい渓谷を追求していくと、
どっちかというと登山の領域に近づくので、
このブログで紹介するのもどうかと・・・。
いやまあ、紹介するつもりですけどね(笑
舞鶴は、基本的に未知なる場所狙いなので、
外す可能性大です。
あ、そういえば今日、亀岡の式内松尾神社に行ってきました。
ズドンときました。かなり好みの世界でした。
想像していたよりずっと奥深くて、とても雰囲気の良いところです。
光線状態が納得いかなかったので、紅葉の頃にまた行きます。
いちおう紹介されてるサイトが二つくらいあるんですけどね、
皆さん参道に興味が無いのか、参道については何も触れられてないんですよ。
謀反を伝える歌を歌った少女?
それは何という名前の神社ですか?
風景に、そういうイメージを喚起させるものがあればぜひ見てみたいです。